各地で行われる2歳馬による重賞競走のレースハイライトをピックアップしてお届け。

第10回 ブリーダーズゴールドジュニアカップ

8/4(木) 門別 1600m  ストーンリバー

節目の第10回ブリーダーズゴールドジュニアカップは、
ホワイトマズル産駒の伏兵馬ストーンリバーが優勝!

 2007年に創設され、今年で第10回の節目となった「ブリーダーズゴールドジュニアカップ(門別)」。1着賞金500万円が設定された夏の2歳王者決定戦には、ここを目標に定めた素質馬たちが毎年出走してくる。昨年、門別競馬場に新設された内回り1600mにコース変更され、内回りコースにナイター照明が整備された今年も、昨年と同じく夕方(17:10発走)の6Rに組まれて実施された。

 今年の出走メンバーで最も注目を集めたのは、デビューから2連勝で「ウィナーズチャレンジ2(1700m)」を制し、JRA2歳重賞「函館2歳ステークス(芝1200m)」の権利を獲得しながら同レースをパスし、ここ一本に絞って出走してきたエニークラップス(牡、廣森久雄厩舎、父カジノドライヴ)。昨年優勝のストレートアップ、3年前の覇者ポップレーベル、4年前の覇者カイカヨソウらと同じく社台グループの生産馬で、まさに狙いすましたエントリーと捉えることができる。昨年のストレートアップと同じカジノドライヴ産駒というのも、人気に拍車をかける要因となったのだろう。単勝2.4倍の支持を集めた。

 そのエニークラップスとの力関係が基準となったのか、2番人気には「ウィナーズチャレンジ2」で逃げ粘って3着だったリシュリュー(牡、角川秀樹厩舎、父トビーズコーナー)が4.9倍で推された。こちらもキャリア2戦と底を見せていない1頭で、新種牡馬トビーズコーナーの初重賞制覇にも期待が高まった。

 3番人気は、「栄冠賞(1200m)」で2着に追い込んだヒガシウィルウィン(牡、角川秀樹厩舎、父サウスヴィグラス)で5.7倍。以下、「ウィナーズチャレンジ2」の2着馬ミルグラシアス(牡、堂山芳則厩舎、父クロフネ)が6.5倍の4番人気、「栄冠賞」の3着馬スーパーステション(牡、角川秀樹厩舎、父カネヒキリ)が7.8倍の5番人気でつづき、上位5頭が10倍を切るオッズ。まだ成長途上の2歳夏に行われる重賞ということもあり、どの馬が勝っても不思議ではないムードが漂った。

 カゲカツ(牡、林和弘厩舎、父ロードアルティマ)の出走取り消しで9頭立てとなった当レースは、ゲート内で1番人気エニークラップスが立ち上がる仕草を見せるなど、波乱を予感させるような雰囲気の中でスタート。最内から出たリシュリューがハナに立ってペースを握り、直後をイーグルパス(牡、田中淳司厩舎、父サマーバード)、ストーンリバー(牡、堂山芳則厩舎、父ホワイトマズル)らが外から追いかける展開。2~3馬身離れてエニークラップス、スーパーステション、タイセイプロスパー(牡、田中淳司厩舎、父プリサイスエンド)らが並んで追走したが、3~4コーナーでは早くもエニークラップスの手応えが怪しくなり、代わってミルグラシアスが外からまくってポジションを上げてきた。直線に入って先頭に立ったストーンリバーにミルグラシアスが並びかけ、大外をまわってヒガシウィルウィンも鋭い脚で差を詰めてくる。残り100mあたりからは3頭の激しい叩き合いとなったが、一歩先に抜け出していたストーンリバーが最後までしぶとく粘り切り、先頭でゴール板を駆け抜けた。半馬身差まで迫ったヒガシウィルウィンは栄冠賞につづいて悔しい2着、そのクビ差でミルグラシアスが3着に入り、4着タイセイプロスパー以下とは8馬身の差が開く結果となった。

 優勝したストーンリバーは、単勝オッズ24.8倍の8番人気馬。5月31日にデビューし、2戦目の「未勝利(1500m)」を9馬身差の圧勝で初勝利。そして2週前に行われた「アタックチャレンジ(1600m)」をアタマ差で制し、この大一番へと駒を進めてきた。今回の勝利を含めた3勝はすべて内回りコースで挙げたもので、そのレースセンスの良さと器用さが存分に活かされた勝利だったといえるだろう。管理する堂山芳則調教師は、2010年のモエレフウウンジ以来、2度目の「ブリーダーズゴールドジュニアカップ」優勝となった。

 一方、ストーンリバーを勝利に導いた井上幹太騎手は、デビュー4年目にして嬉しい重賞初勝利。この日の1Rで通算100勝を達成したばかりで、注目が集まる中で新たな一歩となる101勝目を初重賞で決めるあたり、いきなり3勝を挙げる派手なデビューを飾った彼らしいパフォーマンスだったのではなかろうか。人馬ともに、今後のさらなる飛躍を期待したい。
井上幹太騎手
積極的に前につけて、思い切った乗り方をしようと考えていました。3~4コーナーでも手応えが良かったので、もしかしたら勝てるかもと思ったのですが、直線はがむしゃらに追っていたのでよく覚えていません。この重賞勝利をきっかけに、JRAのレースにも挑戦できるような騎手になっていきたいです。
堂山芳則調教師

文:浜近英史(うまレター)
写真:小久保巌義