各地で行われる2歳馬による重賞競走のレースハイライトをピックアップしてお届け。

2歳牝馬重賞の第一弾「フルールカップ（門別）」は、
サウスヴィグラス産駒のピンクドッグウッドが完勝！

　一昨年に新設され、今年で第3回を迎えた「フルールカップ（門別1000ｍ）」。ホッカイドウ競馬では「栄冠賞」「ブリーダーズゴールドジュニアカップ」につづく3つ目の2歳重賞となるが、牝馬限定戦としてはこれが初。いよいよ秋の2歳牝馬ダートグレード「エーデルワイス賞（JpnⅢ）」へ向け、主役の座を懸けた戦いが始まっていくことになる。

　この日の門別競馬場はダブル重賞が組まれており、1つ前の11R「ブリーダーズゴールドカップ（JpnⅢ）」のスタートが切られて競馬場を大歓声が包み込む中、パドックに姿を現したフルールカップの出走馬10頭。栄冠賞で重賞を経験した馬も4頭含まれる中、1番人気（2.1倍）の支持を受けたのは、ここが2戦目となるオヤジノハナミチ（牝、田中淳司厩舎、父パイロ）だった。3週前のデビュー戦(門別1000ｍ）で、後続に2秒3の差をつける大差勝ち。タイムの出やすい重馬場だったとはいえ、59秒8の好時計で他馬を置き去りにしたインパクトは絶大で、その圧倒的なスピードを繰り出して初重賞も軽々とクリアする新ヒロインの誕生に期待が高まった。

　2番人気（3.6倍）は前走、JRAの2歳重賞「函館2歳ステークス（函館・芝1200ｍ）」に挑戦したピンクドッグウッド（牝、田中淳司厩舎、父サウスヴィグラス）。芝のレースでは本来の走りができなかったものの、デビュー2戦目の「ウィナーズチャレンジ1（門別1200ｍ）」で、のちの栄冠賞馬バンドオンザランを破ったスピードは秀逸。得意のダートに戻り、さらに牝馬同士となるここは負けられない一戦となる。

　差のない3番人気（3.9倍）に、ここが4戦目となるアップトゥユー（牝、角川秀樹厩舎、父サウスヴィグラス）。前走の「栄冠賞（門別1200ｍ）」では牝馬最先着となる5着に入り、ピンクドッグウッドにも先着。昨年のタイニーダンサーやモダンウーマンと同じグランド牧場の生産所有馬で、近親にラブミーチャンやイッシンドウタイなどの活躍馬がいる血統背景も魅力的だ。

　早い時期から頭角を現して重賞戦線で揉まれてきたピンクドッグウッドとアップトゥユーに、鮮烈なデビューを果たしたばかりのオヤジノハナミチ。“3強”ムードが漂ったものの、まだまだ不確定要素の多い2歳夏の牝馬重賞。他の7頭にも、ヒロイン候補に名のりを挙げるチャンスは十分にありそうだ。

　アムールブリエによるブリーダーズゴールドカップ連覇達成の余韻が残る中、向う正面に組まれた1000ｍスタート地点に若駒10頭が集まってゲートイン。スタートが切られ、真っ先に飛び出したのは井上幹太騎手鞍上のハタノオヌール（牝、安田武広厩舎、父サウスヴィグラス）だったが、オヤジノハナミチも岩橋勇二騎手に気合をつけられて内から競りかけていく。2頭が並んでレースを引っ張る形となり、その直後にシェアハッピー（牝、小野望厩舎、父ハイアーゲーム）、テセラプルーニア（牝、林和弘厩舎、父シニスターミニスター）、ピンクドッグウッドらがつける展開。前半の3ハロンを33秒8というハイペースで通過し、あっという間に4コーナーをまわって最後の直線へ。ここでオヤジノハナミチが失速し、単独先頭に立ったハタノオヌール。その外から、吉原寛人騎手にゴーサインを出されたピンクドッグウッドが襲いかかってきた。必死に抵抗するハタノオヌールを振り落とし、はじけるような脚で突き抜けたピンクドッグウッド。最後に後方からラブミーファルコン（牝、角川秀樹厩舎、父スマートファルコン）が鋭い脚で伸びてきたが、粘るハタノオヌールを交わすのが精一杯。2馬身先にピンクドッグウッドがゴール板を駆け抜け、初重賞のタイトルを完勝といえる内容で手中にした。

　ピンクドッグウッドはグランド牧場の生産馬で、昨年の北海道サマーセールにて400万円（税別）で取り引きされたサウスヴィグラス産駒。近親に一昨年のJBCレディスクラシック、昨年のチャンピオンズカップなどを制した女傑サンビスタがいる良血馬だ。振り返れば一昨年、第1回のフルールカップが行われる直前のブリーダーズゴールドカップを制したのがサンビスタ。門別の夏を華やかに彩る「シュエット・ジュマン・フェスティバル（素敵な牝馬の祭り）」の歴史は今のところ、グランド牧場とこの牝系を中心に刻まれてきていると言っても過言ではない。
　このあと、9月1日の「リリーカップ（門別1200ｍ）」、9月21日の「フローラルカップ（門別1600ｍ）」、そして10月13日の大一番「エーデルワイス賞（門別1200ｍ）」とつづいていくホッカイドウ競馬の2歳牝馬路線。まだまだこれから新星も出てくるだろうが、その中心で輝く星の名がはっきりと見えた2歳牝馬重賞の第一弾「フルールカップ」だった。