未来優駿2016特集
 毎年秋に行われる各地の2歳主要競走(計7レース)を短期集中施行するシリーズ(2008年創設)。2016年は10月5日から、11月1日まで、未来を期待される優駿たちの戦いが繰り広げられます。

 3歳馬によるダービーウイーク同様、各地の主要競走が短期間で楽しめる贅沢感や、先々への期待感を醸成できることが、このシリーズ最大の魅力。また、11月以降のダートグレード競走(11/1・門別競馬場・北海道2歳優駿、11/23・園田競馬場・兵庫ジュニアグランプリ、 12/14・川崎競馬場・全日本2歳優駿)への期待感を高めることも期待されます。


2016年未来優駿の総括はこちらです
※下の“タブ”をクリックするとご覧になりたいレースの記事に切り替わります。

豊富な調教量でパワーアップ
マークした人気馬を競り落とす

 今年の岩手競馬の2歳戦は5月21日にスタートしたが、ここまでの3重賞は1番人気がいずれも馬券対象から外れる波乱模様。芝では今季最初の新馬戦とジュニアグランプリを勝ったダズンフラワーがJRA挑戦を目標としているが、ダートでは一般戦でもなかなか連勝馬が現れず、勝ったり負けたりの繰り返し。ロールボヌール、メジャーリーガーと人気馬が順当に勝ったここ2年と違い、勝った馬が“岩手2歳ダート路線のリーダー”になるという様相で若駒賞を迎えた。
 そういう背景もあってか、単勝1番人気に推されたのは出走10頭中、一番デビューの遅かったベンテンコゾウ。8月27日の新馬戦は、今年の水沢850メートルデビュー馬の中で一番時計の50秒5。盛岡ダート1400メートルへ距離が延びたフューチャーステップ競走(JRA認定)も1分27秒7で楽勝した。キャリア2戦もメンバー中最少だったが、追い切り時計はすでに古馬オープン並みに速いタイムが出ていることから、“スター候補”の期待がかけられていた。ビギナーズカップを勝って5戦2勝のサンエイリシャールが2番人気。芝の重賞を2、4着するなど5戦1勝のリュウノチーノが3番人気となってレースはスタート。
 門別でJRA認定競走を含む2勝し、転入当初話題になったニードアフレンドが、今回も前半3ハロン36秒台で先行。離れた2番手にベンテンコゾウがつけ、その後方は一団となったが、その中でサンエイリシャールが「ベンテンコゾウの後ろか内をとりたかった」(山本聡哉騎手)と、まさにピタリと追走策。直線に向いて先頭に立ったベンテンコゾウの背後から、外へ持ち出したサンエイリシャールがキッチリと伸びきって、ゴールでは1馬身半差抜け出した。「思っていた位置でレースができた。ハナ差などの僅差になれば、あれが大きいから」と会心の表情を見せた山本聡哉騎手。重賞連勝でサンエイリシャールが2歳世代の先頭に立つ瞬間だった。
 「距離が延びてから良くなる」と早くから期待をかけていた瀬戸幸一調教師も笑顔。「攻め馬もやれるだけやって、それで耐えられなかったら仕方ないと思って乗り込んだ」というくらい、豊富な乗り込み量も勝因のひとつだろう。冒頭の通り、今年の岩手2歳世代は抜けた存在がおらず、またそれだけにレベル面がどうかという懸念もあるだけに、北海道からの遠征が予想される南部駒賞(地方全国交流)の結果は重要になる。そこも好戦できるようなら「川崎(全日本2歳優駿JpnⅠ)も視野に入れている」と明かしてくれた。
山本聡哉騎手
思い通りのレースができたのでうれしいです。ベンテンコゾウの後ろか内をとれればと思っていました。距離が延びた方が良いタイプで、マイルが合います。今日のようなレースができれば盛岡でも問題ないですね。デキが良かったですから、自信を持ってレースに臨めました。
瀬戸幸一調教師
想像以上のレースができました。走るごとに力をつけている印象です。輸送競馬でマイナス7キロは許容範囲、攻め馬をやれるだけやって臨めました。どのようなレースもできるので、(遠征馬が来る)南部駒賞も楽しみです。


取材・文:深田桂一
写真:佐藤到(いちかんぽ)