信じた直線の脚でゴール前差し切る
北海道の重賞実績馬が実力を示す

　2歳馬たちの夢舞台、『未来優駿』。川崎の鎌倉記念を皮切りに、金沢の兼六園ジュニアカップまで、約1カ月に渡り全国を舞台に全7レースが行われる。
　南関東でもこの鎌倉記念から2歳重賞がスタート。地方全国交流になってからは10回目だが、今年は北海道からの遠征馬に軍配。井上幹太騎手が手綱を取った単勝2番人気のストーンリバー（北海道・堂山芳則厩舎）が優勝した。
　ストーンリバーはJRA認定フレッシュチャレンジで6着に敗れているが、それ以降は連対を外さずに高いレベルで走っている。ブリーダーズゴールドジュニアカップは8番人気で優勝。2歳王国ホッカイドウ競馬の重賞ウイナーとして、ここでも地力の高さを見せつけた。
　レースは、紅一点ながら単勝1番人気のゴーフューチャーが逃げる展開となり、マルボルクシチー、サイバーエレキングが続き、ストーンリバーはスタートダッシュがつかずに中団外目から先団へ。
　「環境が変わったし左回りというのもあったのか、ちょっと遊ぶところがありました。前走は道中引っ掛かりましたが、今回は逆にフワフワして息が入ってくれたと思います。かなり外を回る形になりましたが肩ムチを入れたら反応はしてくれていました」（井上騎手）。
　ゴーフューチャーが軽快に進めていき、3～4コーナーではストーンリバーの手綱がかなり動くシーンも見られたが、「この馬は直線を向いてからの脚が持ち味なので信じて乗りました」（井上騎手）。最後までしっかり脚を伸ばし、ゴーフューチャーを力でねじ伏せたところがゴールだった。
　ストーンリバーは、チークピーシーズをつけ、舌をしばり、かなり気性の難しそうな印象だ。それでいながら、北海道からの長距離輸送や初コース、道中も決してスムーズとは言えない中でも、こうしてしっかり結果を出したところは、この馬を褒めるべきだろう。
　井上騎手は11月27日から南関東で期間限定騎乗を予定しているが、それを前に『井上幹太』という名前を印象付ける結果にもなった。
　なお、3着のティーケーグラスは道中最後方から進めて向正面から進出し、最後は自慢の末脚が炸裂。担当の道添健一厩務員は今年77歳で、川崎競馬の最年長厩務員。キャリアもこの道62年という大ベテランだ。過去には川崎時代のコトノアサブキ（のちに1980、82年に道営記念を制すなどホッカイドウ競馬で活躍、種牡馬になった）を手掛けたそうだが、今回は久しぶりの重賞の舞台だった。
　その年齢でも担当馬3頭の世話をし（南関東の厩務員が手掛ける平均頭数）、元気に仕事を続けている稀有な存在。「子供の頃から健康だったし、仕事は休んだことがないよ。負けてもクヨクヨしないで、すぐ次に向けていく。好きなことをしているしストレスもない」（道添厩務員）。
　ティーケーグラスは、この後も重賞路線を歩んでいくことになるだろう。この道62年の大ベテランが作り出す作品からも目が離せない。