グランダム・ジャパン タイトル
レース名 実施日 競馬場 距離 地区
桜花賞 3/27(木) 浦和 1,600m 南関東
若草賞 4/3(木) 名古屋 1,400m 北陸・東海・近畿
ル・プランタン賞 4/20(日) 佐賀 1,800m 九州
東京プリンセス賞 4/24(木) 大井 1,800m 南関東
留守杯日高賞 4/28(月) 水沢 1,600m 東北
東海クイーンカップ 5/1(木) 名古屋 1,600m 北陸・東海・近畿
のじぎく賞 5/15(木) 園田 1,700m 北陸・東海・近畿
関東オークス JpnⅡ 6/11(水) 川崎 2,100m 南関東
地方競馬では、牝馬競走の振興と牝馬の入厩促進を図るため、昨年に引き続き、世代別牝馬重賞シリーズ「GRANDAME-JAPAN(グランダム・ジャパン)」を実施します(創設2010年)。

全国各地で行われる牝馬重賞を世代別に体系づけ、競走成績によりポイントを付与。2歳、3歳、古馬の世代別ポイント獲得上位馬に対し、協賛各団体から(社)日本軽種馬協会を通じボーナス賞金が授与されます。地方競馬の優れた牝馬の活躍の舞台を広げるとともに、交流を促進して魅力ある牝馬競走の実施を目指します。

強敵相手の経験で力をつける
思い描いた展開に持ち込み快勝

 ル・プランタン賞は、グランダム・ジャパン3歳シーズンとして行われるようになった2010年から4年連続で他地区(笠松、兵庫)所属馬が優勝。さらに、その勝ち馬たちはいずれもグランダム・ジャパンで総合優勝を果たしている。ローテーションや遠征などの条件から、シリーズのカギを握るレースとなっているのかもしれない。今年も5頭の遠征馬がこのレースに狙いを定めて参戦してきた。その中でも、シリーズ2戦目の若草賞3着など、重賞実績のある兵庫のユノエスケープが単勝1.8倍と断然の支持を集めていた。
 しかし今年主役となったのは、高知のクロスオーバーと別府真衣騎手だった。このコンビはといえば、3月8日にJRA阪神競馬場で行われたチューリップ賞GⅢに参戦し、ハイレベルの中央馬相手に臆することなく、積極果敢に見せ場を作ったそのレースぶりは記憶に新しい(この時の勝ち馬は、JRA桜花賞を制したハープスター)。今回はその時以来のコンビとなり、日曜日開催で盛り上がる佐賀競馬場のファンを大いに沸かせることになった。
 スタートが切られると、地元勢ではもっとも人気を集めたタケノペガサスが先手を主張し、クロスオーバーはその外2番手にぴたりとつけた。この2頭がレースを引っ張り、1番人気のユノエスケープはいつものように後方待機。2周目の向正面半ばを過ぎ、好位を追走していたフリオグレイスー、カーネルキッスらが前との差を詰め始めると、ここでクロスオーバーは先頭に踊り出た。後方の馬たちも一斉に追い出しを開始。しかし、クロスオーバーはそのまま後続を寄せつけず、直線を力強く先頭で駆け抜けた。2馬身差の2着には佐賀のカーネルキッス、先行したタケノペガサスが最後まで粘って3着。注目を集めていたユノエスケープは直線で伸びきれず5着に終わった。
 これで重賞2勝目を手にしたクロスオーバーは、初タイトルも佐賀の花吹雪賞だった。この時は逃げ切り勝ちを決めたのだが、実は向正面で内側のゲートに物見をし、いったんレースをやめてしまったという経緯があった。この日も返し馬の際に少し物見をしたということで、今回は2番手でレースを進めようという陣営の作戦が成功した。
 別府真衣騎手からはレース後こんな話が聞かれた。「レース前は緊張していましたが、馬に跨った瞬間フワッと緊張が解けたんです。馬から伝わってくる何かで、私自信がリラックスして乗ることができました。一戦ごとに強くなっていることを感じるし、精神的にもかなり成長しているんでしょうね」。前述のように、クロスオーバーはこれまでJRAへの挑戦や、前走では古馬相手の牝馬交流重賞・マリーンカップJpnⅢに参戦するなど積極的な遠征が目立つ。別府真司調教師と別府真衣騎手は、「この経験が間違いなく力になっています!」と口を揃える。
 クロスオーバーの次走は、5月6日に園田競馬場で行われる兵庫チャンピオンシップJpnⅡ。牡馬相手の交流重賞ということで、決して楽な戦いではないだろうが、「女の子だけど良い根性がついてきましたし、掲示板を目標にがんばります!」と、別府調教師の明るく豪快な笑顔からは期待の大きさが感じとれた。
別府真衣騎手
3月になでしこチャレンジカップで来た時は惨敗でしたが、今日は馬の頑張りのおかげで良い姿を見せることができてよかったです。本当に思った通りのレース運びができました。先頭に立った時は、後ろに強い馬がいたのでどれだけ来るか気になりましたが、自分も手応えが残っていたのでやれるかもと思いました。
別府真司調教師
高知の馬場と違って佐賀は砂が浅いので走りやすいんでしょう。前走のマリーンカップでは、古馬相手や初の左周りであれだけ走るのだから成長していますよ。若い頃より馬体の後ろが大きくなってきてバネがついてきましたね。サウスヴィグラス産駒ですから、距離はもう少し短い方が合うと思います。


 さて、グランダム・ジャパン3歳シーズンは3戦目を終えたが、現段階では中心的存在がいない状況だ。第4戦の東京プリンセス賞から、第5戦の留守杯日高賞も中3日と間隔が短いため、遠征や距離などを考慮したレース選択もカギを握る。まだどの馬にもチャンスがあるといえるだろう。

取材・文:秋田奈津子
写真:桂伸也(いちかんぽ)