浅野靖典の全国馬美味(ウマウマ)行脚」地方競馬にまつわる「ウマいもの」を毎月ご紹介!
“鉄人”佐々木竹見の見解」佐々木竹見元騎手がダートグレード各競走を“鉄人”の目線で鋭く解説!
高橋華代子の(続)気になるあの馬は…」引退後や転厩した名馬の近況を愛あふれる文章でご紹介!
REWIND 90's」当時の写真や映像を交えて90年代の名勝負を振り返ります!

サマーチャンピオン~日本テレビ盃(第73回)

サマーチャンピオンJpnⅢ

 水が浮くほどの馬場では、やはり前に行った馬が圧倒的に有利です。エーシンビートロンはわりと楽にハナに立ちましたが、追いかける2番手の争いが激しくなりました。スピードもありますが、この馬場で、終始マイペースで走れたことで、最後は余裕がありました。
 ピッチシフターの大畑騎手はうまく乗りました。スタート後は2番手の争いには加わらずに控えて外目を通って、コース取りもよかったと思います。4コーナーではうまく馬群をさばいて抜け出してきました。小柄な牝馬ですし、道悪はまったく苦にしないようです。
 タガノジンガロは、外枠だったこともあり、ピッチシフターと同じような位置取りで、終始外を回ってきました。最後はよく伸びています。
 ガンジスは外枠から2番手で競り合う形になりました。こういう馬場になるとどうしてもスタート直後のペースが速くなります。スタート後に勢いをつけたぶん、前半は掛かっているようなところがありました。2着に踏ん張りきれなかったのは、そのぶんがあったかもしれません。この馬には道悪もよくなかったと思います。

オーバルスプリントJpnⅢ

 このレースは、アドマイヤサガスの岩田騎手が向正面で早めに仕掛けて一気に先頭に立ったのがポイントになりました。勝ったキョウエイアシュラは、それを見て追いかける形で進出しました。エーシンビートロン、アドマイヤサガスという目標を前に見てという展開になりましたから、戸崎騎手はレースがしやすかったと思います。
 エーシンビートロンは、内枠のナイキマドリードが何が何でもという感じでハナに行きましたから、2番手になりました。それでもナイキマドリードが早めに後退したので、ハナに行ったのと同じです。向正面で、楽に先行しているところでアドマイヤサガスに一気に行かれてしまいました。手綱を抑えているときに、後ろからあれだけ急に来られたのでは、さすがにすぐには反応できません。行かれてしまったのは仕方ないと思います。そこで無理をしなかったぶん、ゴール前でも脚色は鈍らずに、2着を確保できたと思います。
 アドマイヤサガスは、浦和の短い直線を考えて向正面で仕掛けて行ったのはいいと思いますが、それにしても少しタイミングが早すぎました。それでもキョウエイアシュラがついてこなければ、先頭に立ったところで息を入れられたと思いますが、先頭に立ってからも突かれる形になり、むしろこの馬には厳しい展開になってしまいました。仕掛けが早かったいえばそうですが、どこかで行かないとエーシンビートロンに逃げ切られてしまいます。レースは相手がいることですから、仕方なかった面もあります。
 トーセンアレスは、いつもどおり後方からでしたが、最後はよく伸びています。
 セイントメモリーは、スタート後に気合をつけて行きましたが、前には行けませんでした。前走(サンタアニタトロフィー)ほどの調子にはなかったのかもしれません。

日本テレビ盃JpnⅡ

 クリソライトは、1年2カ月ぶりの勝利です。一時期落ち込んでいましたが、ようやくジャパンダートダービーを勝ったときの力が戻ってきたようです。楽に2番手につけて、直線で追い出されたら、あっという間でした。本来の調子に戻れば、このメンバーでは力が違いました。1800メートルの良馬場で1分50秒1は、かなりの好タイムです。まだ4歳ですから、JBC(クラシック)で、あらためて一線級と対戦して、どこまでやれるか楽しみです。
 グラッツィアは、内枠に入ったので行くと決めていたのでしょう。ただ気合をつけて行ったら、向正面までずっと掛かっていました。クリソライトとの追い比べでは、さすがに最後は脚色が一杯でしたが、相手次第ではダートグレードを勝てる力はあります。
 トーセンアレスはオーバルスプリントに続いての4着。2着争いの4頭は差がなかったですから、よく走っていると思います。
 グレープブランデーも2着争いには加わりましたが、フェブラリーステークスを勝ったことを思えば、なかなか調子が戻ってきません。



佐々木竹見(ささきたけみ)
元川崎競馬所属騎手。地方競馬通算7,151勝という世界歴代6位(当時)の勝ち鞍を挙げ、2001年7月8日に騎手を引退。
引退後も2012年3月までNAR地方競馬全国協会参与として後進の指導にあたる等、地方競馬の発展に大きな役割を果たし続けている。