浅野靖典の全国馬美味(ウマウマ)行脚」地方競馬にまつわる「ウマいもの」を毎月ご紹介!
“鉄人”佐々木竹見の見解」佐々木竹見元騎手がダートグレード各競走を“鉄人”の目線で鋭く解説!
高橋華代子の(続)気になるあの馬は…」引退後や転厩した名馬の近況を愛あふれる文章でご紹介!
REWIND 90's」当時の写真や映像を交えて90年代の名勝負を振り返ります!

連載第36回 1997年 全日本サラブレッドカップ

『恐るべし!ワカオライデン軍団』
1997年全日本サラブレッドカップ トミケンライデン

Movie(映像ファイルサイズ:13.5MB)
 笠松の荒川友司調教師が57歳の若さで亡くなられたのが2001年の8月27日。昨年十三回忌である。NARグランプリ最優秀調教師賞5回、同優秀調教師賞5回。地方競馬通算1384勝、中央競馬はライデンリーダーの報知杯4歳牝馬特別の1勝)。「荒川マジック」と呼ばれたように、地方・中央交流で地方劣勢と目されたなか、数々の勝利を挙げ盛り上げた。まさに名伯楽であった。
 荒川調教師といえばワカオライデンだ。ワカオライデン自身は脚部不安もあり、85年の朝日チャレンジカップで1位入線のニシノライデンが斜行で失格し、繰り上がりで初重賞勝ちを収めた程度の戦績で、笠松(一時金沢に移籍)転入後荒川調教師の下、白山大賞典(金沢の桑野厩舎在籍時)、東海菊花賞、名古屋大賞典など重賞6勝を挙げた後、骨折により引退、故郷の吉田牧場で種牡馬になった。
 初年度産駒23頭の約半数を管理馬として引き受け、その初年度産駒からサブリナチェリー、ライデンスキーなどの活躍馬が出た。3年目の産駒からご存知ライデンリーダーが現れ、荒川友司調教師の名が中央ファンに知られるきっかけとなった。
 ワカオライデンの種付け数は初年度の37頭から、ピークとなる93年には93頭にまで増えた。その年の産駒、つまり94年生まれの74頭の中から名古屋優駿(GⅢ)勝ち馬シンプウライデンが現れ、そしてその年の11月にはトミケンライデンが現れる。
 3年ぶりにダートグレードGⅢとして復活した全日本サラブレッドカップ。1400mに距離が短縮され装いも新たに再スタートが切られた。注目のJRA勢はフジノマッケンオー1頭ではあったが、3歳時にはスプリングS2着、皐月賞3着、ダービー4着。勝ち馬はいずれもナリタブライアンである。ダートでも根岸Sで初重賞勝ち。ダートグレード競走でもクラスターC2着、さきたま杯1着。当然のように単勝は圧倒的1番人気であった。
 ゲートが開いてハナをきったのはイースタンヤング。3番人気のフジノハイメリットと2番人気のトミケンライデンが続き、直後にフジノマッケンオー。
 3コーナーを過ぎペースが上がると、手応え良くトミケンライデンが伸び、4コーナーで逃げるイースタンヤングを捉えて交わし、直線で抜け出す。注目のフジノマッケンオーは手応え悪く伸びない。前走の東京盃からプラス18キロの太めと、笠松の深いダートで結果5着と敗れた。
 独走態勢のトミケンライデンに、ゴール間際テイオーライデンと、連れてアメージングレイスが猛追。なんとかアタマ差振り切ったところがゴールだった。
 「最後はスタミナ切れだった」と安藤光彰騎手。夏の間、シンプウライデンとともに北海道の牧場で坂路調教を積んだ成果が出た。笠松に坂路がなければ、スタッフを連れて行ってそこで調教すればいい。それが「荒川マジック」の秘密の一端である。
 さらに、このレースの1~3着はいずれもワカオライデン産駒で、荒川友司厩舎。恐るべし!荒川マジックとワカオライデン軍団である。
 名古屋優駿のシンプウライデンや、全日本サラブレッドCのトミケンライデン等の活躍もあり、父ワカオライデンはこの年の地方競馬リーディングサイヤーに輝いている。
 その後トミケンライデンは98年アンタレスS3着など好走するものの、ダートグレード競走には勝てなかった。荒川調教師が亡くなり厩舎が解散した後は船橋の川島正行厩舎、さらに北海道の原孝明厩舎へ移籍後、2001年いっぱいで引退。山梨県で個人所有の馬場馬術の乗馬として、現在も活躍中である。競技会で「ミルキーウェイ」という名の出場馬がいたら応援して欲しい。
文●小山内完友(日刊競馬)
競走成績
第8回全日本サラブレッドカップ 平成9年(1997年)11月24日
  サラブレッド系 1着賞金3000万円 笠松 1,400m 晴・重
着順
枠番
馬番
馬名
性齢
重量
騎手
タイム・着差
人気
1 7 7 トミケンライデン 牡4 54 安藤光彰 1:28.2 2
2 5 5 テイオーライデン 牡7 55 次井武史 アタマ 9
3 8 10 アメージングレイス 牝7 55 吉田稔 21/2 4
4 1 1 ポスターフェイス 牡9 55 青木達彦 アタマ 7
5 8 9 フジノマッケンオー 牡 7 55 吉田豊 11/2 1
6 6 6 キタイセタテヤマ 牡6 56 川原正一 11/2 5
7 4 4 イースタンヤング 牡7 55 東川公則 21/2 8
8 3 3 フジノハイメリット 牡5 56 安藤勝己 1/2 3
9 7 8 カシノラシアン 牡6 56 濱口楠彦 4 10
10 2 2 フジノヤマザクラ 牝5 54 佐藤祐樹 2 6
払戻金 単勝280円 複勝150円・920円・250円
      枠連複8090円 枠連単8960円 馬連複5630円 馬連単8700円