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連載第34回 1999年 浦和記念

『人馬ともに歓喜のダートグレード初勝利』
1999年浦和記念 インテリパワー

Movie(映像ファイルサイズ:18.9MB)
 REWIND90は、1990年代の名馬、名勝負を動画とともに紹介するコーナーである。90年代は日本の競馬にとって大きな変化が起こった時代だ。特に96年のいわゆる交流元年以降、中央・地方のダート交流競走(翌97年より格付けが行われダートグレード競走となる)は80年代後半から90年代中盤にかけての「第2次競馬ブーム」に続き、競馬産業の更なる発展の原動力となることが期待された。
 しかし、蓋を開けてみればホクトベガ、ライブリマウント等が圧倒的な強さを見せつけ、大方のレースで中央勢が上位を占めるレースが続くこととなる。
 その後、アブクマポーロ、メイセイオペラが現れ、帝王賞など主要競走に勝ち「馬場貸し」などと揶揄された状況を覆し、特にメイセイオペラは99年のフェブラリーSを制し、地方馬として初の中央GⅠ優勝を成し遂げた。
 「アブクマ・メイセイに続け」とばかりに、交流による地方競馬の強化、反撃が期待されていたのがちょうどこの頃である。
 インテリパワーはホッカイドウ競馬でデビュー。初戦を取消した後、旭川で初勝利。8月31日には中央札幌の3歳500万下に勝っている。
 GⅢの北海道3歳優駿3着の後、川崎の全日本3歳優駿ではアグネスワールドの2着となり、中央へ移籍。4歳時は中央競馬で走り10戦したが、ダート変更となった共同通信杯でエルコンドルパサーの4着となったのが最高だった。その年の暮れを最後に川崎競馬へ移籍する。
 初戦の京葉盃では後にアジュディミツオーの母となるオリミツキネン等を下し、以降5連勝でオープン入り。報知オールスターC2着の後、サンタアニタTで重賞初勝利。東京盃、グランドチャンピオン2000をいずれも4着し、浦和記念に臨んだ。
 1番人気に推されたのは左回り巧者の快速馬アローセプテンバー、続いて前年にユニコーンS、スーパーダートダービーの4歳2冠を制したウイングアロー、3番人気は浦和記念2・1着のタイキシャーロック。インテリパワーは5番人気だった。
 ゲートが開いて4番人気の中央馬キングデールが躓いて出遅れて、アローセプテンバーが想定外のハナに立つ。タイキシャーロック、インテリパワーと続き、縦長となった隊列の4番手にウイングアロー。
 向正面でペースが上がり、3コーナーでタイキシャーロックが脱落、アローセプテンバーも手応えが怪しい中、インテリパワーと仕掛けてウイングアローが迫る。4コーナーを回って直線でインテリパワーが抜け出し、外からウイングアローが迫る。ジリジリと伸びるインテリに対し、ウイングアローが剛脚で追うも、インテリパワーが半馬身凌いで、鞍上の張田京騎手、管理する秋山重美調教師とともにダートグレード競走初勝利となった。 「自分のペースを守ることだけを考えた」と張田騎手。アローセプテンバーのペースに付き合わず、かつ後ろのウイングアローを封じる好騎乗であった。秋山調教師は何度もガッツポーズをし、誰かれかまわず握手していた姿が印象に残っている。
 明け2000年の川崎記念を制しついにGⅠ馬となったが、その年のNARグランプリでは、最優秀5歳以上馬に選出されたものの、年度代表馬の座はGⅡ東京盃、GⅢTCK女王盃とダートグレード競走を2勝したベラミロードに敗れているように、必ずしも最上位の評価をされていたわけではなかった。
 しかしながら、99~00年当時はアブクマ、メイセイの突出したスターホース以外にも、インテリパワーやオリオンザサンクスなどGⅠで中央勢に対抗できる実力馬がまだまだ各地に存在していた。
 インテリパワーはその後船橋、笠松と移籍し脚元に不安を抱えつつも2003年までGⅠ川崎記念を筆頭に、GⅡ浦和記念、ダイオライト記念など重賞7勝を挙げ引退し、広島県で種牡馬となった。
 ほぼプライベート種牡馬のため、初年度の種付けは1頭だけで、その馬は2009年にエイワンガールの名でデビューしたが、わずか1戦で引退している。
文●小山内完友(日刊競馬)
写真●いちかんぽ
競走成績
第20回浦和記念 平成11年(1999年)12月15日
  サラブレッド系4歳以上 1着賞金4500万円 浦和 2,000m 晴・良
着順
枠番
馬番
馬名
所属
性齢
重量
騎手
タイム・着差
人気
1 3 3 インテリパワー 川崎 牡5 55 張田京 2:05:1 5
2 5 5 ウイングアロー JRA 牡5 55 菊澤隆仁 2:05:2 2
3 8 9 アローセプテンバー 船橋 牡5 55 左海誠二 2:05:4 1
4 6 6 エビスヤマト 新潟 牡5 55 小嶋耕輝 2:06:5 8
5 8 8 タイキシャーロック JRA 牡8 56 田中勝春 2:07:0 3
6 7 7 モンスター 川崎 牡5 55 石崎隆之 2:08:2 7
7 1 1 キングデール JRA 牡4 54 大塚栄三郎 2:08:6 4
8 2 2 セイエイツートップ 笠松 牡6 56 安藤勝己 2:09:6 6
9 4 4 エフテーサッチ 浦和 牝7 54 森下博 2:09:9 9
払戻金 単勝2120円 複勝300円・110円・110円 枠連複2670円 馬連複2560円 枠連単6590円 馬連単8630円
ワイド740円・470円・180円