dirt
2014年9月11日(木) 浦和競馬場 1400m

早め進出から直線先頭で押し切る
ダート転向が奏功し重賞初制覇

 全国的に不安定な天候となり、北海道では大雨特別警報が発表された。浦和競馬場も昼頃から激しい雨が叩きつけ、重馬場スタートだったが一気に水が浮くほどの不良馬場へ。オーバルスプリントJpnⅢが実施される時間帯には雨もすっかり上がり、青空が見えるほどだったが、びちゃびちゃの馬場は変わらない。
 昨年の覇者セイントメモリーを筆頭に、南関東の有力馬が勢ぞろいし期待も高まっていたが、中央勢の牙城は崩せず。優勝したのは戸崎圭太騎手に乗替っての出走だった4番人気キョウエイアシュラで、2着にはエーシンビートロン、3着がアドマイヤサガスと中央馬が上位を独占する結果となった。
 レースは、最内枠を引いたナイキマドリードが揉まれるのを嫌い出ムチを入れてハナを主張すると、エーシンビートロンは持ったままの楽な手応えで並びかけ、ネオザウイナーやセイントメモリーもつけていった。
 向正面に入ると、先行勢を見る形で進めていたアドマイヤサガスがスーッと交わして先頭に立ち、すかさずキョウエイアシュラもポジションを上げていく。この馬の持ち味でもある長くいい脚を存分に生かし、直線で先頭に躍り出ると、そのまま押し切る完勝。最後に再び脚を伸ばして2着に入ったエーシンビートロンに2馬身差をつけた。「手応えも十分だったし、遊び遊びだったので余裕を持って走ってくれました」と戸崎騎手。着差以上の強さだったようだ。1400メートルの勝ちタイムは1分26秒2(不良)。
 今年7歳のキョウエイアシュラにとって記念すべき重賞初勝利。2、3歳時は芝のマイル以下の重賞で好走していたが、4走前からダート路線へスイッチしての快挙。今年3月に厩舎を開業したばかりの森田直行調教師に初勝利をプレゼントしたことでも知られるが、初めての重賞タイトルもプレゼントすることになった。

戸崎圭太騎手
初めて騎乗しましたが、返し馬から素直で上手にフットワークをこなしてくれるし、いい馬だと思いました。ある程度前に行く馬たちがいたので後ろから進めることは想定内でしたが、ペースは考えていたよりも速かったので、先生に『長くいい脚を使える馬』と言われていたので、早めに上がっていきました。
田中亮調教助手
調教もうまくいったし具合いはよかったです。雨馬場で前が止まらないかとも思ったんですが、早めにつかまえてくれました。この馬は移籍馬ですが、2歳時からコンスタントに使ってきてタフなところが強みだと思います。厩舎の重賞初勝利は本当にうれしいです。これからも先生を盛り立てていきたいですね。



 キョウエイアシュラの今後については未定だそうだが、初めての地方競馬場で結果を出し、再びダートグレードへの挑戦も考えられるだろう。この路線でどんな存在感を示していくのか楽しみだ。
 一方、南関東勢にとっては残念な結果に終わり、地方勢の最先着は4着のトーセンアレスだった。後方から進めていき、最後も一番の上がり(38秒2)で大外から追い込んできたのだが……。「今日は馬場に泣いたね。馬はよく走ってくれたと思う」とコンビを組んだ張田京騎手。
 管理する浦和の小久保智厩舎は、2年前から南関東のリーディングに君臨し、今年もトップを独走中。重賞レースに縁遠い時期もあったのだが、昨年末から今年に入っての活躍は目覚ましいものがある。悲願だったダートグレードレースの勝利は叶わなかったが、その瞬間がいつになるのか、今後も追い続けたい。

取材・文:高橋華代子
写真:国分智(いちかんぽ)