前年の女王相手に連勝
優勝に近づく価値ある勝利

　グランダム・ジャパン古馬シーズンは、秋桜賞が終われば残すレースは最終戦のレディスプレリュードのみ。JRA勢も加わる最終戦で大きいポイントを獲得することは難しいだけに、ここでひとつでも上位の着順を得ておくことは、優勝を狙う陣営にとっては重要なことといえる。
　今年の出走メンバーのなかで、優勝あるいは3位以内を狙えるのは、エーシンクールディとロッソトウショウ。その注目を集める2頭がパドックに登場してきたときの単勝オッズは、エーシンクールディが1.3倍でロッソトウショウが4倍弱という数字だった。ロッソトウショウは前走の兵庫サマークイーン賞を勝利したが、それはエーシンクールディがスタートで後手を踏んだという要因もあってのこと。そのエーシンクールディは、その後に出走した笠松のくろゆり賞で、2着に2秒差をつける圧勝を飾っていた。それでも2頭の単勝オッズがある程度接近していたのは、ロッソトウショウの前走内容がファンに高く評価されているということなのだろう。
　パドックに目を転じると、エーシンクールディは後駆に銭型を浮かび上がらせていて、馬体のボリューム感も相変わらず。ロッソトウショウは腰を振る独特の歩様ながら、2人曳きで大きな動きをみせていた。
　さて展開はどうなるか。ゲートが開くと、エーシンクールディが今回は互角以上のスタートを切っていた。
　しかし、その斜めうしろをピッタリとマークする馬がいた。ミヤジメーテルである。前2走でエーシンクールディと同じレースに出走して、ともに内容的には不完全燃焼だっただけに、鞍上の大畑雅章騎手も行くしかないという気持ちだったのだろう。
　その2頭の差は、スタートから1周したところでも2馬身以上になることはなかった。エーシンクールディはいつもならば後続を引き離していくはず。大丈夫なのかと案じているうちに、最終コーナーを回っていた。
　苦しい展開ながらもやはり底力を発揮していくエーシンクールディに、しぶとく食い下がるミヤジメーテル。その2頭に3コーナー手前から徐々に近づいてきたのがロッソトウショウ。194メートルの直線でじわりじわりと並びかけ、残り20メートル付近で逆転勝利。2着にはエーシンクールディがなんとか粘り、ミヤジメーテルは同馬からアタマ差の3着となった。
　「（金沢に移籍する前に）蹄骨を折って、1年以上休養していたんですよね。それでも徐々に状態が上がってきて、だんだんと差して勝てるようになりました」と、佐藤茂調教師は同馬の成長ぶりを評価する。小回りの名古屋競馬場への対応については、「ジョッキーに“上山競馬場をイメージして乗れ”と言いました（笑）」と、アドバイスを送ったそうだ。調教師も騎手も上山デビューで、金沢に移籍した苦労人。そのコンビで勝ち進んでいくのは、何よりもうれしいことだろう。
　「中央時代は先行することも多かったんですけれど、佐藤調教師が差せるタイプに育ててくれましたね。次のレースも楽しみです」とは、ロッソトウショウのふるさと、トウショウ牧場の志村吉男場長。1位のポイントを携えて目指す次の舞台は、グランダム・ジャパン古馬シーズン最終決戦の地、大井競馬場だ。