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第16回 2013年1月10日(木) 担々麺(川崎競馬場)

川崎競馬場
「らーめん坊」 担々麺(800円)

 今年の冬は大雪や極寒のニュースが例年より多い気がするが、関東地方もけっこうな寒さ。毎年恒例となった正月開催の川崎競馬場に向かおうと電車に乗っていると、新宿駅近くの車窓から見えた大型の気温表示装置の文字は「6度」。人がたくさんいて、デパートや飲食店ビルが立ち並んでいる新宿でその気温ということは、風が吹き抜ける競馬場はさらに寒いんだろうなあ、と思いながら競馬場に到着してみれば、やっぱりとても寒かった……。
 それでも負けずにパドックに行くと、道路側のほうなら陽があたっている。でも、この時期の午後2時半ともなれば夕陽の時間。その弱々しい太陽光線では冷え切った体を暖めるまでには至らなかった。
 もうダメだ。ここは一丁、内面から体を暖めよう。ということで思い浮かんだのが「らーめん坊」の担々麺。辛いものを食べればきっと体がほてってくるはずだ。
 さっそく2号スタンド1階にあるお店の扉を開けると、こんな時間なのに8割ほどの着席率。その状況に驚きながら、食券カウンターで「担々麺」とお姉さんに告げると、
「辛いですけど、大丈夫ですか?」
 と、問い返された。でも、ここでたじろぐわけにはいかぬ。大丈夫ですと答えて、カウンター席でしばし待つ。
ラーメン坊
多彩なメニューが揃っている

 全国的に競馬場内の食堂の多くには店内に場内テレビが設置されているものだが、このお店はテレビなし。レースが始まっても実況の声が遠くからかすかに聞こえるだけだ。
担々麺
「2着のところが聞き取れなかった……」と思っていたところに担々麺がやってきた。
 さすがに見た目から辛さが伝わってきたが、それでも辛いだけが取り柄です、という色ではなさそうだ。まずはスープの水面に広がる赤い部分をすくって飲んでみると、ラー油以外の味のほうが多い。そして赤い色の層の下はほとんど透明のきれいなスープ。食券を買うときに脅された(?)けれど、辛さに悶絶することもなく食べ進められた。それでも徐々に額から汗がにじみ出てくることに。おお、これなら目論見どおりじゃないですか。そんな状況になっても、カウンターの上にはティッシュペーパーが置いてあるから安心だ。
 顔をふきながら食べている間にも、お客さんが次々に入れ替わっていた。緊張感を保ちながら、しかし本格的な料理で胃袋を満たす、その雰囲気はまさに戦場の食堂。その空気には、厨房の奥でひたすら中華鍋を振っている店主の心意気が反映されているようにも思えた。

文・写真●浅野靖典

浅野靖典(あさのやすのり)
競馬キャスター・ライターとして活動中。「クリック!地方競馬」キャスターを務めているほか、JRAブリーズアップセール、八戸、九州の各競走馬市場にて司会進行を担当。ライターとしては、
・競馬総合チャンネル(netkeiba.com)
・POGの達人
・JRAホームページ
・週刊プレイボーイ
・WEBハロン
などに寄稿している。


※ 本文で紹介している逸品については、取材時点のものです。 その後、値段改定やメニューが変わっている場合もございます。