笠松から4頭、名古屋から2頭、地元金沢は2頭という8頭立てだが、ワンターンのこの舞台を狙ってというメンバーが揃った。このレース連覇のかかるエイシンテキサスは、一昨年は園田FCスプリントを制しており、3年連続でスーパースプリントシリーズの勝利を狙っての出走。大井から岩手に移籍して早池峰スーパースプリントで2着と好走したミラクルダマスクは、今度は笠松に移籍してここに参戦。そして地元のトライアルを逃げ切って臨むフェリシアルチアが1番人気に支持された。
梅雨の大雨は九州地方に甚大な被害をもたらし、この日は北陸地方にも警報が出されていた。朝まで強く降っていたらしい雨もレースがはじまるころには小康状態となったが、当然のことながら水の浮く不良馬場。それでも今の金沢コースは内側の砂が深いようで、この日もラチ沿い3頭分ほどを開けてレースが展開されていた。ワンターンの超短距離戦では、それが少なからず明暗を分けることにもなったようだ。
スタートはきれいに揃って出たが、その後のダッシュが速かったのがフェリシアルチア。エイシンテキサス、チェゴがぴたりと外につけ、雁行状態で3~4コーナーを回った。
一方、僅差2番人気のミラクルダマスクはスタート後のダッシュがつかず、先行勢から取り残される形となった。ある程度距離のあるレースなら、そこから外に持ち出してということもできるが、ワンターンの900メートル戦ではそうもいかない。吉原寛人騎手は腹を決め、ラチ沿いぴったりを回って差を詰めてきた。
4コーナーを回ってエイシンテキサスが失速すると直線は3頭の勝負。ミラクルダマスクがコーナーワークで先頭のフェリシアルチアに並びかけたものの、スタートダッシュでのロスと、内の砂が重いところを通ったぶん、直線半ばで劣勢に。一旦は振り切られたかに思えたチェゴがもう一度フェリシアルチアに迫ったが、それもクビ差まで。フェリシアルチアが、一昨年のこのレースで記録されたコースレコードをコンマ1秒更新しての勝利となった。
勝ったフェリシアルチアの鞍上は、その一昨年の第1回もジッテで制していた藤田弘治騎手。「第1回の時は3~4コーナーで溜めることができたんですが、今日は息の入るところがなくてちょっと心配しました」と。冒頭でも触れたとおり、回を重ねることで、この超短距離でこそというメンバーが集まり、より厳しいレースになった。
フェリシアルチアは昨年春に中央から再転入。3歳時も合わせて、これで金沢では10戦6勝となったが、その勝ち星はすべて1400メートル以下。管理する金田一昌調教師は「中央で1000メートルを勝っていたので、戻ってきてこの短距離路線でと思っていたので、うまく事が運びました」と、狙っていた舞台で会心の初タイトルとなった。
惜しかったのは、クビ差まで追い詰めたチェゴ。藤原幹生騎手はこのレース第1回でもハドウホウに騎乗して3/4馬身差で2着だった。チェゴは、1000メートル以下は一度船橋で経験しただけだったが、5勝を挙げている門別・船橋の1200メートル戦はワンターン。管理する井上孝彦調教師は、こういう距離のレースがあれば積極的に使いたいとのことだった。
Comment
藤田弘治 騎手
ほかの馬のスピードはわからなかったですけど、900メートルはスタート命なので、ハナに立てたときは「よっしゃ」と思いました。あとは馬を信用して頑張るだけでした。スプリントの適性はめちゃくちゃ高いです。機会があれば他場でも勝負したいです。
金田一昌 調教師
この距離に賭けていました。ポンとスタートを出たら、3コーナーではあまり動かないで、外から来る馬はあまり気にするなと言っておきました。この馬の力が一枚上でした。馬の状態はいいので、習志野(きらっとスプリント)は、相手が強いですけど挑戦はしてみたいです。