午前中、一時的にザっと雨が降ったものの、良馬場で迎えた園田FCスプリント。10回目を迎えるスーパースプリントシリーズの一戦で、過去9回中8回で高知勢が3着以内に入り、優勝も3回(2018年は同着)と相性の良さを見せる。今年は高知からの遠征馬は2頭。園田デビューで里帰り出走となるケンキャクハーバーと、JRA6勝で高知移籍2戦目を迎えるダノングッドだ。対する地元勢は昨年覇者のタガノカピートが直前に回避を表明。昨年2着のエイシンエンジョイや、前走820メートル戦でタガノカピートに3/4馬身差まで迫ったスリングショット、高知時代に800メートルレコードを樹立したコンドルヒデオなどが集まった。
単勝1番人気はエイシンエンジョイで1.8倍。ダノングッドが2.6倍で続き、スリングショット7.9倍までが単勝10倍以下となった。
好ダッシュを見せたのはエイシンエンジョイ。「いつも以上に出ました」(下原理騎手)とハナに立ち、コンドルヒデオやスリングショットはその後ろの集団に続いた。
ダノングッドは馬群から少し離れた後方3番手。必死に追われながら3コーナーを回り、直線に入ってもまだ後方5~6番手。差し馬も上位に食い込みやすいレースとはいえ、超短距離戦としては絶望的かと思われるような位置だった。ところが、わずか213メートルの直線での追い込みがすごかった。エイシンエンジョイが完全に抜け出して後続を5馬身ほど離していたところに一歩ずつ詰め寄り、ゴールの瞬間はついに馬体をピッタリ並べた。
これにはエイシンエンジョイの下原騎手も「勝ったかどうか分かりませんでした」という。今年の兵庫ダービーを彷彿させる内外離れての接戦は、クビ差でエイシンエンジョイが勝利を掴み、昨年2着の雪辱を果たした。
ダノングッドは2着に敗れたものの、地方の深い砂、しかも良馬場において破格の末脚を見せた。これには別府真司調教師も悔しさを滲ませながらも「すごい脚でした」と話した。吉原寛人騎手も「道中は思っていた通りでしたが、勝負どころで大外に切り替えてからがいい反応でした。いまの園田の馬場でこれだけの脚を使って本当によくがんばってくれました」と、馬場や距離、展開など決して有利とは言えない状況での2着を称えた。
3馬身半差の3着も後方から追い込んだコウエイタケルで、「出遅れてしまいましたが、道中は内でうまく立ち回れ、いつもより直線でのハミの取り方が良かったです」と鴨宮祥行騎手。クビ差4着にコンドルヒデオ、さらにクビ差でマコトパパヴェロだった。
エイシンエンジョイは昨春、兵庫に移籍し、これが重賞4勝目。豊富なスピードと直線での粘りを生かし、1400メートル以下で強さを見せる。ゴール後に「馬を止める力がなくなるくらい追いました」(下原騎手)と、そのまま馬場を1周してゴール方向から帰ってきた。その際、「ビジョンに僕が映っていたので、勝ったかなと思いました」とのこと。人馬とも全力で駆け抜けた820メートルだった。
Comment
下原理 騎手
楽に逃げられてチャンスだと思いました。一息で走る馬なので、気を抜かせないように注意しました。ダノングッドが差してくるだろうと最後まで一生懸命追っていましたが、レース中には気づきませんでした。無観客競馬が解除されれば、またファンのみなさんも園田競馬場に来てください。
橋本忠明 調教師
ゲートに付き添っていてゴールの瞬間はどちらが勝ったか分かりませんでしたが、スタートを決めた時点で「よしっ!」と思っていました。馬がすごく充実してきて、今年はここまで予定通り順調に使えているのも強みのひとつ。距離は1400メートルまでかなとは思いますが、今後はオーナーと相談して決めます。