新型コロナウイルスによる緊急事態宣言の全面解除も間近となったが、それでも出口が見えない無観客競馬。岩手競馬では引き続き感染拡大防止のため、厩舎や競馬場内での取材にも規制がかかっている。
5月下旬というのに盛岡は朝晩まだ肌寒くストーブをつけている状況だが、この日は6日ぶりに最高気温が20度を超えてきた。普段のレースは記者室から観戦、仕事をしている。今回の早池峰スーパースプリントは、この原稿を書くことからも間近で馬を見たくて、ちょっと離れた位置(20メートル)からパドックを誰もいない状態で見る。競馬専門紙の仕事を始めてちょうど30年、開催中のパドックにただ一人とは経験があるわけもない。
注目を集めたのは南関東から3年半ぶりに岩手に戻り、水沢850メートルのスプリント特別で後続に7馬身差をつけて圧勝したコンサートドーレが単勝1.7倍の1番人気。転入初戦が2年ぶりの短距離戦となった水沢1300メートルのスプリント特別を難なく突破したタイセイブラストが4.3倍の2番人気。2019年度の岩手競馬・最優秀短距離馬ラブバレットは南関東から戻った前走はタイセイブラストの4着(5頭立て)ということで4.5倍の3番人気と人気を落としていた。離れて9.7倍の4番人気には名古屋から戻ってきたエイシンテキサスで、芝1000メートルで行われた昨年のOROターフスプリントは名古屋所属で鞍上に川崎・山林堂信彦騎手で制した古豪。
460キロ台の牝馬ミラクルダマスクはB1級からの格上挑戦もパドックでは数字以上に体を大きく見せて良く映り、外枠ながらポンと鋭いダッシュ力を見せて先手を奪った。
1番枠を引いたエイシンテキサスは岩本怜騎手の手が激しく動くも2番手と砂をかぶって持ち味は半減で、歩様の硬さもあり使われきた疲れが感じられて直線は失速。
コンサートドーレは前走とは違い今回のパドックでは馬っ気を出していたが、レースではスタートはまずまずでも加速が良く3コーナーでは2番手へ。「ゲートの中ではちょっと心配するくらいおとなしい馬なのですがスタートは速い。今日もスタートしてすぐ2番手は獲れるなと思っていました」と山本政聡騎手。直線は坂を登ってのラスト100メートルでグイグイと脚を伸ばすと、逃げたミラクルダマスクをとらえ1馬身1/4差つけての勝利。12.2-11.1-11.3-11.1-12.5と綺麗なラップを刻んでの勝ちタイム58秒2は、昨年このレースを制覇したサインズストームのレコードを0秒2更新。着差以上の強さだった。
2着となったミラクルダマスクの村上忍騎手は「B1級で勝ってきたとはいえオープンでどうなのかなと思っていたが、スピードはここでも通用するね。最後ちょっと差されちゃったのが残念だけど、この馬の良さは見せることができたんじゃないかな」
さらに2馬身半差で3着ラブバレットの山本聡哉騎手は「前回よりは体調がアップしていて、走りもいくらか良くなっていたと思います。良い時であればもっと動けるのですが最後は少し止まり気味。現時点では精一杯の走りができたのではないでしょうか」。実力馬の復活が待たれるところ。
板垣調教師は、「今後はスーパースプリントシリーズへの遠征も含めて、オーナーサイドと相談して決めたいと思っています」とのことだった。
Comment
山本政聡 騎手
一度どこかで溜めることができれば前回のような脚を使ってくれるとも思っていましたが、前の馬の手応えが良すぎて、直線に向いたあたりでは並べるかな?と心配もしました。でも直線でハミを取ってくれたらもう大丈夫だなと。そういうところが能力の高さなのかなと感じますね。
板垣吉則 調教師
直線に入ったときに逃げていた馬(ミラクルダマスク)の手応えが良かったのでどうなのかな?と思ったのですが、手前を替えてからスッと伸びてくれましたね。そうですね、やはり1200メートル以下であれば今回のように良い競馬をしてくれるのでは。