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ダートグレード競走を中心としたレースハイライトや、シリーズ競走等の特集、各種連載など盛りだくさんの情報をお届けします。

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スーパースプリントシリーズ2020

競走距離1000メートル以下のレースのみで構成されるシリーズ競走。超短距離戦で能力を発揮する異才の発掘と、各地方競馬場で実施可能な最短距離を極力活かすためのワンターン(コーナー通過が3~4コーナーのみ)のスプリント戦によるシリーズとして2011年に創設されました。10年目を迎える今年も、昨年同様トライアルを6戦行い、全国各地のスプリンターがファイナルの習志野きらっとスプリントで覇を競います。

なお、地方競馬全国協会では、トライアル優勝馬がファイナルでも優勝した場合の馬主褒賞金を競走振興事業の一環として拠出いたします。

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レース名 実施日 競馬場 距離 地区
早池峰スーパースプリント 5月24日(日) 盛岡 1,000m 東北
川崎スパーキングスプリント 6月9日(火) 川崎 900m 南関東
佐賀がばいダッシュ 6月21日(日) 佐賀 900m 九州
園田FCスプリント 6月25日(木) 園田 820m 近畿・四国
グランシャリオ門別スプリント 7月2日(木) 門別 1,000m 北海道
日本海スプリント 7月7日(火) 金沢 900m 北陸・東海
ファイナル
習志野きらっとスプリント
7月22日(水) 船橋 1,000m 全国
  • 第6回
  • グランシャリオ門別スプリント

7.2 (木) 門別 1000m

好ダッシュから逃げ切る
 期待の3歳馬が重賞初制覇

昨年もこのレースの取材を担当したが、冒頭に“蝦夷梅雨”のことを書いた。今年は6月まで雨が少なかったが、この1週間の日高地方は雨に祟られた。能力検査が行われた月曜が不良馬場。その後、降ったり止んだりの気候で、重と不良を繰り返す状況だった。このレースは不思議と、雨に見舞われることが多い。

昨年は不良馬場で、メイショウアイアンが58秒6のレコード勝ちを収めた。火曜からレースを観ていると、開催を通して通常より2秒は時計が速く、コースレコードが更新される可能性は十分考えられる馬場だった。高速決着を想定すると、若い世代や斤量の軽い馬を狙いたくなる。しかし、重賞に格上げされた過去5年、勝ち馬は6歳以上の馬しかいない。3歳馬の挑戦は、2018年ダモンデ(7着)の1頭のみ。特別だった時に、パフォーマンス(2011年)が3歳馬で勝利を収めているので、サンプルが増えれば斤量の恩恵を考えた時に、3歳馬が優位に立つ可能性は高くなる。

アザワクは、昨年のエーデルワイス賞JpnⅢで2着に健闘。当然、今季の活躍も期待された。しかし、今季初戦でまさかの5着敗退。当時は、北海道スプリントカップJpnⅢの参戦も検討されていたが、「あの敗戦で、ローテーションを考え直さざるを得ませんでした」と角川秀樹調教師。坂路で好時計は連発するものの、思うように馬体重が回復しなかったことも、個人的にはパフォーマンスを落としている要因に感じた。

1カ月半の間隔を取った今回は、馬体重が8キロ増え、ようやく460キロ以上の馬体に戻った。

「このレースに照準を合わせ、確実に上昇カーブを描いていたので、強いアザワクを見せられる自信はありました」(角川調教師)と話す通り、抜群のダッシュ力を見せ、スンナリと先手を奪った。11秒8-11秒2=23秒0は、2017年と並ぶ最速ラップだが、アザワクは勝負どころの3ハロン目でも11秒2を刻み、ペースを緩めなかった。

「馬場を意識し、後続を引き離そうと考えたので、敢えてペースは落としませんでした」と、小野楓馬騎手は振り返る。斤量が軽い時は、積極的なレースが功を奏すことが多い。昨年のリリーカップでは、プリモジョーカーで自身の重賞初制覇を飾ったのも逃げ切り勝ちだった。小野騎手の積極性は、見る者を魅了する。最後の2ハロンも全く脚が上がらず、11秒8-12秒4でフィニッシュ。昨年のメイショウアイアンの勝ち時計を0秒2上回る、58秒4のレコード勝ちとなった。

「船橋(習志野きらっとスプリント)はゼロではありませんが、ここを目標にしていたこともあり、オーナーと相談して決めることではありますが、ローテーション的にはクラスターカップが良いかなと思っています。レースで外に張る面を見せる時があるので、左回りはかえって適性はあると感じています」と角川調教師。いずれにせよ、次走は全国レベルの快速自慢に立ち向かう可能性が高い。

思った以上の高速決着となった中、10歳馬のメイショウアイアンが2着に追い込んできたことは高く評価したい。さらに、JRAオープンから移籍し、これまで良い所がなかったオールドベイリーが、距離短縮で巻き返した。過去5年、シーズン序盤にJRAからホッカイドウ競馬へ移籍してきた馬が3着以内に絡むケースを続けていた。今年は、ニットウスバルとオールドベイリーが該当していたが、この記録は継続された。

  • 取材・文
  • 古谷剛彦
  • 写真
  • 浅野一行(いちかんぽ)

Comment

小野楓馬 騎手

他馬よりスピードが違うと信じて、ハナへ行くことを決めていました。コーナーのラップを落とさず、後続を離すことができたのも良かったと思います。馬場や斤量など、アザワクの力を最大限に発揮できる条件が揃った中で、レコード勝ちを収めることができ、とても嬉しいです。

角川秀樹 調教師

このレースに向けて調整し、状態は上がっていましたが、ようやく本来の強さを見せることができました。この後はオーナーと相談して決めますが、間隔を開けた方が良いタイプなので、地方の馬場でも時計勝負に持ち込めるクラスターカップを視野に入れようと思っています。