今年のプリンセスカップ出走馬は、ここまでにグランダム・ジャパン2歳シーズンを走ってきた馬が2頭しかいなかったが、その中の1頭ラジアントエンティは園田プリンセスカップとラブミーチャン記念を連勝。プリンセスカップを勝てば、最終戦を前にしてシーズン優勝を決められるという状況にあった。ラジアントエンティは単勝1.3倍の1番人気となり、地元で北海道交流の知床賞を勝っているゴールデンヒーラーが3.8倍の2番人気で対抗するという構図になった。
先行争いが激しくなりやすい、小回り1400メートルコース。ラジアントエンティに、デビュー戦から全レースを逃げているトンデコパと、外からコンバットマジックが迫り先行集団を形成。1番枠のラジアントエンティは1コーナーで枠差を利して主導権を握るかと思われたがその瞬間に減速、2コーナーで競走を中止してしまった。
向正面ではトンデコパ先頭、2番手にゴールデンヒーラーという展開に変わり、徐々に後続を離していく。「スピードで押してくる北海道勢に対応できるか」と佐藤祐司調教師は戦前に懸念していたが、ゴールデンヒーラーは最後の直線で楽に抜け出し。後続からは唯一ルビーブランケットが鋭く脚を伸ばしたが、クビ差及ばなかった。
岩手競馬で行われる2歳の交流重賞は4つあるが、2017年から19年に行われた10レース(2レースは開催取り止め)は北海道所属馬がすべて優勝。岩手とのレベル、層の厚さの違いを見せつけていた。それが今年は風向きが変わり、芝のジュニアグランプリをマツリダスティール、知床賞はゴールデンヒーラーがそれぞれ遠征馬を抑えて優勝。久々に岩手の2歳馬が五分に戦えるところを見せている。プリンセスカップもサプライズハッピー以来5年ぶりに岩手所属馬が優勝したことで、急速にレベルが戻っていることを証明したと言えるだろう。
ゴールデンヒーラーはデビューから新馬、一般戦と連勝。陣営は早くから能力の高さを感じ取っており、その時点で“エーデルワイス賞JpnⅢ挑戦”というプランもあった。連敗したため話は立ち消えになっていたが、知床賞では北海道からの遠征馬に完勝。改めてプリンセスカップから大舞台へのステップを目論んでいた。この日の結果を踏まえて、佐藤祐司調教師は「大井(東京2歳優駿牝馬)へ申し込みます」と即決。「南関東にも北海道から移籍している馬がいるわけですから、それなりに戦えるはずです」と期待をこめた。
そして、佐藤厩舎はファイントリックも3着。「3コーナーあたりで上がっていく(菅原)辰徳(騎手)の位置も確認していました。小柄な分ハンデもあるでしょうが、使いながらどんどん良くなってきました」と佐藤調教師。こちらは同厩舎で長く活躍を続けるエンパイアペガサスの半妹で、なかなかのレース巧者。ゴールデンヒーラーと同部門ではあるが、今後の動向が気になる存在となるだろう。
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山本聡哉 騎手
ペースは速くなると思っていたので、揉まれることも想定していましたが、アクシデントがあって結果として2番手に。できるだけ逃げ馬を残したかったが、早めに抜け出してしまったので最後は苦しくなりましたが、振り切ってくれた。岩手の馬が勝てたことを喜びたいです。
佐藤祐司 調教師
2歳戦としては速いペースになると想定していましたが、これを凌がなければ交流重賞は勝てないと思って見ていました。結果で改めて感じましたが、今年の岩手の2歳はレベルが高い。知床賞を勝ったあと、南部駒賞をスキップしてここに臨みました。このあとは大井の東京2歳優駿牝馬へ申し込みます。