2010年に始まったグランダム・ジャパン。最初の年から、シリーズに組み込まれていたノースクイーンカップは、10年のみ9月に行われた。その時の勝ち馬は、当時大井から参戦したショウリダバンザイ。後にホッカイドウ競馬へ戻り、3連覇を成し遂げている。この年は、ショウリダバンザイに加え、笠松から3頭が遠征してきたが、3着にはトウホクビジンが食い込んでいる。
しかし、11年から7月に移行すると、他地区からの遠征が一気に減る。12年に兵庫のマンボビーン、17年は岩手のユッコが遠征したのみ。古馬シーズンは現在9戦あるが、1800メートル以上のレースは4つ。ダートグレードのブリーダーズゴールドカップJpnⅢが、最も長い2000メートルで行われる。その前哨戦に位置づけられているノースクイーンカップと、シリーズ最終戦のレディスプレリュードJpnⅡが1800メートルで実施。そして、水沢1900メートルのビューチフルドリーマーカップとなる。シリーズの中距離路線は、東日本でのレースばかり。どの地区にいても、必ず海を渡らなければならない。しかも、2つがダートグレードで、ポイントを獲得する上で過酷な選択となる。ノースクイーンカップだけでなく、ブリーダーズゴールドカップJpnⅢも遠征する馬が少ないのは、このような点に因るところが大きい。
今年は、9年ぶりに大井から2頭が参戦してきた。クレイジーアクセルで挑む渡邉和雄調教師は、「シリーズの距離を見た時にマイル前後のレースが多い中、広い(コースの)門別で1800メートルで行われるノースクイーンカップは魅力を感じました」と話していた。東京湾カップを逃げ切り、その後は関東オークスJpnⅡ・3着、戸塚記念3着、ロジータ記念2着など、南関東の中距離重賞で活躍しているクレイジーアクセルにとって、長距離輸送のハンデはあっても、迷いのない選択だった。
門別1800メートルは、1コーナーまでの距離が短く、先行争いは激しくなる傾向にあるが、コーナーに入るとペースは緩む。昨年のノースクイーンカップで2着に逃げ粘った地元のアップトゥユーの存在は、逃げたいクレイジーアクセル陣営にとって脅威の存在だった。しかも、枠を見ればクレイジーアクセルは9番と外枠を引いたのに対し、相手は1番。行き切るには、相当脚を使わされる可能性は考えていたことだろう。
しかし、距離に対する不安を多少なりとも感じていたアップトゥユーの阿部龍騎手は、吉原寛人騎手のハナ主張に対し、競りかけるリスクを避けて2番手の外に切り替えた。序盤のポジション取りが、案外スンナリ決まったことで、前半3ハロン通過は37秒6と比較的遅かった。しかし、本来ペースが落ち着く向正面に入ると、アップトゥユーは前にいるクレイジーアクセルを突っつく戦法に出た。4ハロン目と5ハロン目は12秒2-11秒8と息が入らない。縦長の展開になったのは、この攻防があったからだ。
直線入口でアップトゥユーは、クレイジーアクセルに並びかけた。しかし、吉原騎手が追い出すと、クレイジーアクセルは二枚腰の粘りを見せ、最後は1馬身半差をつける完勝だった。後半3ハロンは、13秒0-13秒4-14秒0=40秒4のタフなレースとなったが、スタートからゴールまで、2頭のデッドヒートは見応えがあった。
クレイジーアクセルは、水沢のビューチフルドリーマーカップを次なる目標に置いている。
「長距離輸送を考慮して、多少重めに仕上げていたので、理想通りの馬体重で出走できました」とレース後に渡邉調教師は話す。海を渡る輸送を克服したとなれば、本州での移動で済む次走は、しっかり調教を積み、さらに高いパフォーマンスを見せてくれそうだ。
Comment
吉原寛人 騎手
先手を取った時とそうでない場合の結果が全く違うので、アップトゥユーが内にいましたが、ハナを主張していきました。道中は我慢が利き、直線もしっかり反応してくれました。初めて騎乗しましたが、今なら控える競馬もできそうな雰囲気もあり、気性面で大人になった印象はありました。
渡邉和雄 調教師
長距離輸送での馬体減を心配しましたが、4キロ増と発表され、まずはホッとしました。中距離を求めてこのレースを選択したので、最高の結果が出たのは嬉しいですね。この後は、水沢のビューチフルドリーマーカップを予定し、グランダム・ジャパンのシリーズ優勝を目指したいと思います。