ホッカイドウ競馬では開幕から逆算し、ほぼ1カ月前から能力検査が始まる。今年は3月14日が初日だったが、一番時計をマークしたのはアザワクで新種牡馬のカレンブラックヒル産駒だった。そして、3月28日の能力検査は、ヘイセイメジャーが49秒1(800メートル)と、50秒を大幅に切るタイムでその日の一番時計を叩き出した。ヘイセイメジャーの父であるマジェスティックウォリアーも、新種牡馬だ。
ちょうどこの頃、中央競馬も含め、馬産地では2歳馬の取材をする。種牡馬の傾向を掴む上で、育成牧場の方々もホッカイドウ競馬の能力検査が気になるようだ。新種牡馬の産駒が好時計をマークすると、自分たちの牧場で育成している産駒と照らし合わせている。その中で、新種牡馬たちの評価が非常に高いことを知る。中央競馬では、キズナとゴールドシップという人気種牡馬の産駒が、北海道シリーズの重賞を制した。一方、産駒頭数が10頭台のニホンピロアワーズ(ミステリーベルン)とノーザンリバー(インザフューチャー)も、地方重賞の勝ち馬を送り出した。
今年のサッポロクラシックカップは、マジェスティックウォリアー、トゥザワールド、カレンブラックヒルと、新種牡馬の産駒が3頭出走した。上述したように、3月の能力検査で一番時計をマークした馬を含め、能力検査で1位となった馬が6頭もいる。能力検査の結果は、将来性を見抜く上でも重要なファクターであることを物語っている。
3月14日の能力検査で、コーラルツッキーを抑えて1位でゴールしたエンジェルパイロが、内から先手を奪う。ヘイセイメジャーが2番手でマークし、リンノカーニバルを挟んでアザワクが好位を進む。エンジェルパイロは、前半3ハロンは34秒4と平均より速い流れを刻み、残り200メートルを通過したところで苦しくなり、直線入口から宮崎光行騎手が激しく追っていたヘイセイメジャーが鋭く追い抜き、外から追い込むアザワクに影をも踏ませず、重賞連勝を飾った。
「デビュー当初は、生ズルさがあって、本気で走ってくれませんでした。それでも、プリモジョーカーとハナ差の競馬をしたり、栄冠賞で2着にくるなど、能力の高さを見せてくれていたので、なんとか真剣に走る方向へと導こうと努力してきました」と、松本隆宏調教師。出遅れた上にダッシュもつかない状況が続いていたことから、イノセントカップから“尾上げ”を行うことにした。序盤の位置が悪いと、前にいる馬との差をなんとか詰めようとすることに手一杯になってしまう。
「とにかく真面目に走らせることが、ヘイセイメジャーの大きな課題」と、宮崎騎手は常にコメントしてきたが、スタートを五分に切ることで、鞍上がヘイセイメジャーの走る気持ちを出すことに全力投球できるようになる。
松本調教師と宮崎騎手は口を揃えて、「現状は、コーナーが多くなると集中力が続かなくなる可能性が高いので、ワンターンの競馬が合っています」と話す。今後の動向は未定だが、将来的には中央への移籍も検討されているという。ハイレベルのホッカイドウ競馬で揉まれた経験を、中央の舞台でも生かして欲しい。
Comment
宮崎光行 騎手
通算2100勝を重賞で達成できたことは、自分でも出来過ぎですね。ズルい面があったデビュー当初から、徐々に真剣味が出て、重賞連勝につながってきました。ワンターンの競馬が合っているので、1周競馬になっての課題をクリアできれば、今後も楽しみだと思います。
松本隆宏 調教師
直線は伸びてくれるんですが、ゲートの出が悪かった馬なので、前走のイノセントカップから尾上げをするようにしました。その効果でスタートを決め、前半に良い位置でレースを進めることができるようになったのが、重賞連勝につながっていると思います。