2019年11月8日(金)
各地で期待の2歳馬が続々
ダート血統種牡馬が充実
3歳重賞戦線で活躍が目立った昨年の勝ち馬
まずは昨年(2018年)の未来優駿各レース勝ち馬のその後をたどってみる(成績は10月26日現在)。
昨年の勝ち馬は3歳になってからの活躍が目立ち、7頭のうち4頭が3歳になってからも重賞を制した。
圧巻だったのはゴールドウィング賞(名古屋)を制したエムエスクイーンで、無敗のまま11連勝で東海ダービーを制した。その後、古馬との対戦では敗れているが、秋の鞍(名古屋)も制し、同世代同士の対戦では一度も先着を許していない。
鎌倉記念(川崎)のミューチャリーは、羽田盃(大井)を制し、東京ダービー(大井)で2着、そしてJpnⅠのジャパンダートダービー(大井)では地方最先着の3着と、世代を代表する活躍を見せている。
若駒賞(盛岡)のニューホープは、その後笠松を経由して金沢で北日本新聞杯2着、石川ダービー3着と善戦し、笠松に遠征して岐阜金賞を制した。
兵庫若駒賞のテンマダイウェーヴは、年末の園田ジュニアカップを制して兵庫の2歳チャンピオンとなった。3歳になって菊水賞、兵庫ダービーはともに2着だったが、秋になって園田オータムトロフィーを制した。
兼六園ジュニアカプのアイオブザタイガーは、続く金沢ヤングチャンピオンも勝利。3歳からは兵庫に移籍し、重賞勝ちこそないものの高知優駿で2着と好走した。
地元無敗の連勝馬が5頭
九州ジュニアチャンピオン(佐賀)
ここまで地元佐賀では負けなしのミスカゴシマが、単勝元返しの人気にこたえ大差の圧勝。中央芝のフェニックス賞挑戦では、着順こそ6着だったが勝ち馬からはコンマ9秒差、芝1200メートルで1分9秒9というタイムをマークしたスピードを地元に戻って見せた。九州ジュニアチャンピオンは佐賀デビュー馬限定ゆえ、例年このレースの勝ち馬はその後の重賞戦線では他地区からの転入馬を相手に苦戦することも少なくないが、ミスカゴシマは地元生え抜きとして3歳三冠路線でも期待となりそうだ。
若駒賞(盛岡)
岩手の2歳戦線では、地理的に近いこともあって北海道からの遠征馬や転入馬の活躍が毎年目立っているが、ここは7頭立てで地元生え抜きは2頭というメンバーながら、デビューから3連勝で断然人気に支持されたグランコージーがその期待にこたえて見せた。前3頭で競り合った中から直線で後続を突き放した。競り合った2頭は5、6着に沈み、3馬身差で2着に入ったエイシンハルニレは縦長の6番手を追走していたということからも、グランコージーの力が抜けていた。生産は青森県三戸郡五戸町のマルシチ牧場。五戸はかつて盛岡藩(南部藩)の領地であり、地元生え抜きというだけでなく、生まれも地元といえる。
兼六園ジュニアカップ(金沢)
昨年は未来優駿でもっとも遅い11月20日に行われていたが、今年は10月15日の実施となった。昨年まで兼六園ジュニアカップの前に、牝馬限定の金沢プリンセスカップ、金沢シンデレラカップが行われていた一方で、牡馬はこの兼六園ジュニアカップまで待たされたが、今年から牡馬もこの時期から重賞タイトルを狙えるようになった。しかしながら勝ったのは牝馬のハイタッチガール。北海道からの転入馬が3頭いる中で、唯一JRA認定競走(アタックチャレンジ)勝ちがあり、1番人気にこたえての勝利だった。
ゴールドウィング賞(名古屋)
逃げたインザフューチャーに、直後でマークしていたエムエスオープンが4コーナーで並びかけ、直線は3番手以下を離して人気2頭の一騎打ち。首の上げ下げの決着は、インザフューチャーがハナ差先着し、デビューから3連勝とした。一昨年のサムライドライブ、昨年のエムエスクイーンに続いて3年連続で無敗馬がこのレースを制したが、川西毅調教師、戸部尚実騎手のコンビでは2013年のリーダーズボードに続いて、やはり無敗馬での勝利となった。
兵庫若駒賞(園田)
単勝1.1倍という断然人気にこたえて勝ったエキサイターだが、なんとも破天荒なレースだった。ゲートの出がイマイチで内によれ、ムチを入れても前には行けず、縦長の5番手を追走。馬券を買っているファンからすればハラハラさせられるレースぶり。3コーナーから一気にまくって直線で先頭に立ったが、吉村智洋騎手は懸命にムチを入れていた。ハミもとっていないし、おそらくレースを教えるために追っていたのだろう。中央芝に挑戦した野路菊ステークスでも3着と好走しており、能力の高さは未知数といえるだろう。全国区での活躍が楽しみになる存在だ。
鎌倉記念(川崎)
メンバー中、唯一の無敗馬インペリシャブルが単勝1.4倍という断然の支持にこたえて逃げ切った。ただ前半からかなり行きたがるタイプで、今後は距離延長が課題となりそう。ゴールでは北海道のアベニンドリームがクビ差まで詰め寄った。ウィナーズチャレンジを勝ったまでで門別では重賞に出走しておらず、あらためて北海道2歳馬の層の厚さを感じさせられた。もう1頭北海道のイッキカセイはスタートで後手を踏み、外の馬に寄られてラチとの間に挟まれるような格好で最後方まで位置取りを下げてしまった。3コーナーからロングスパートで4着ということでは、普通にスタートを切っていればどうだっただろう。
ダートで活躍した種牡馬の産駒が活躍
今年は実力的に抜けている馬が多く、全7戦で1番人気馬が6勝。サッポロクラシックカップを勝ったヘイセイメジャーは2番人気だったが、1番人気アザワクが2着に入った。そして地元無敗の佐賀・ミスカゴシマ、兵庫・エキサイターも含めると、デビューから負けなしの連勝で制した馬が5頭もいた。それらがどこまで連勝を続けるのか、さらに全国区での活躍にまで至るのかどうか、楽しみな馬が多い。
血統的には、昨年以上に日本のダートで活躍した種牡馬の産駒が目立ち、ベルシャザール(グランコージー、エキサイター)、フリオーソ(ハイタッチガール)、エスポワールシチー(インペリシャブル)はそれぞれ自身がダートGⅠ/JpnⅠ勝ちの実績馬。トーセンブライト(ミスカゴシマ)は9歳まで走って地方のダートJpnⅢを3勝、ノーザンリバー(インザフューチャー)は中央・地方でダートグレード5勝。日本で競走経歴がないのはヘイセイメジャーの父マジェスティックウォリアーだけ。日本に輸入されてこの世代が初年度産駒だが、いわゆるマル外としてベストウォーリアがマイルチャンピオンシップ南部杯JpnⅠ(2勝)を含めダートグレード5勝という実績があった。
未来優駿で2頭の勝ち馬を出したベルシャザールは、これが2世代目の産駒で、レースの日程が先だったエキサイターが産駒の重賞初勝利となった。現役時はジャパンカップダートGⅠを含めダートで重賞2勝という実績を残したが、2歳時にはホープフルステークス(当時はオープン特別)を制するなど3歳までは芝のみを走り、脚部不安からダートを使われるようになっただけで、芝にも適性があった。つまりエキサイターには芝での活躍の期待もできそう。
ノーザンリバーはこの世代が初年度産駒で、血統登録された17頭の中から重賞勝ち馬が出た。またトーセンブライトはこれが6世代目となるが、これまで血統登録された産駒がもっとも多かった年でも18頭で、この世代は14頭。ハイランドピーク(エルムステークスGⅢ)、アペリラルビー(のじぎく賞)に続く3頭目の重賞勝ち馬となった。
前述、現役時にGⅠ/JpnⅠを制した種牡馬はもちろんのこと、ビッグタイトルがないダートの種牡馬からも重賞勝ち馬が出てくるようになったということでは、生産界も含めてダート競馬がしっかり根付いたということだろう。