ゴールドウィング賞は2年連続で無敗での優勝馬が誕生している。今年は2戦2勝のインザフューチャーがその継続に挑むことになった。
だが、心配なのはそのキャリア。一昨年の優勝馬サムライドライブは3戦、昨年のエムエスクイーンは5戦していた。さらに発表された馬体重は前走との比較でプラス10キロ。実際の馬体も、もともとが丸みを帯びた体型とはいえ、腹回りに余裕がある印象を受けた。
それでも今回の出走馬のなかで、JRA認定競走を制しているのはインザフューチャーだけ。当然、地元専門紙には本命の印が並び、単勝人気は1.4倍にまで上昇した。
しかし結果はハナ差での辛勝。しかも判定写真を見ると、1センチもしくは2センチあるかどうかという僅差だった。
ゲートが開くとインザフューチャーは少し後手を踏んだがすぐに加速がついて、コーナーワークも利して先頭に。好スタートを切ったビックバレリーナは2番手におさまった。3.9倍の2番人気だったエムエスオープンは、メタリフェルと並んで3番手。1コーナーに入ったあたりから全体の馬群は長く伸びていった。
向正面でもインザフューチャーは余裕ある手応えで単騎先頭。対照的にビックバレリーナは3コーナー手前で鞍上の手が動き始めた。その後ろからエムエスオープンとフクダイトウリョウが上昇していったが、最後の直線ではインザフューチャーとエムエスオープンの伸び脚が際立つかたちになった。
その2頭の差は、直線の入口あたりでおよそ1馬身。それが少しずつ縮まって、残り100メートルからはマッチレースになった。そしてゴールの通過は同時。その瞬間は、インザフューチャーの頭が上がり、エムエスオープンの頭は下がっているという態勢だった。
戻ってきたエムエスオープンに検量室の前で曳き手をつけた担当厩務員は帰り道に向かおうとしたが「まだわからないぞ」と、別の厩務員から声がかかるほど。しかし、しばらくして発表された結果はインザフューチャーが1着で、エムエスオープンは2着。3着にはフクダイトウリョウが入ったが、その差は8馬身もあった。
検量室から発せられた「1着2番」の声を聞いて、インザフューチャーの手綱を取った戸部尚実騎手は「よく差し返してくれました」と話して、ホッとした表情。惜敗となったエムエスオープンの今井貴大騎手は「馬の状態があまり良くなくて、レース前は着外になるかもと思っていたくらい。それでこれだけ走れたのですから、これから先が楽しみですよ。惜しかったですけど……」と振り返った。
無敗でのゴールドウィング賞馬となったインザフューチャー。この日の専門紙には『ここでしっかり結果を出して、兵庫ジュニアグランプリに向かいたい』という川西毅調教師のコメントが掲載されていた。レース後、そのことに水を向けられると「今日の結果と(このレースの直前に行われた兵庫若駒賞の)エキサイターの勝ちかたを見るとちょっとね……」と言葉を濁した。それでも「勝ててよかったです。今はうれしいというよりも、腰が抜けたような感覚ですよ」と笑った。
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戸部尚実 騎手
内枠でしたし、前に行こうと考えていました。でも道中は馬の気持ちが乗っていない感じで、大丈夫かと心配になりましたね。最後の直線では並ばれて、一度は向こうが前に出たんですが、ゴール前では勝負根性を見せてくれました。次は今回以上にしっかりと仕上げて臨みたいと思います。
川西毅 調教師
台風の影響で追い切りの日を早めたのが影響したのか、正直ちょっと重いかなという気はしていました。でもこれで勝てないくらいなら、という気持ちもありました。でも最後はヒヤッとしましたね。追い切りを併せ馬にしたのは正解だったと思いますし、実際に攻め馬でも並ばれると強いという面があります。