メインレースの時間は気温17度と冷え込んだ金沢競馬場。前週末と比べて最高気温が8度も下がり、「一気に冷え込んだのよ」と飲食店の従業員も肩をすくめた。対照的にホットな話題は地元の吉原寛人騎手が前日、盛岡競馬場で行われたマイルチャンピオンシップ南部杯でGⅠ/JpnⅠ初制覇を遂げたこと。台風19号の被害で北陸新幹線が一部不通のため、京都経由でこの日の朝、金沢まで帰ってきた。多くの関係者から祝福の声をかけられると、「昨夜は興奮してなかなか眠れませんでした」と満面の笑み。全国各地の重賞にスポット参戦して名前を広め、実績も積み重ねてきた。「ここまで長かったです」という陰には幾度も唇を噛んだ出来事があっただろう。
冷え込んだ空気と毎週のように続く大レースからは秋の深まりを感じる。それとともに2歳戦も活発になっていく。兼六園ジュニアカップは昨年より約1カ月前倒しの日程となったものの、9頭が揃った。
1番人気は単勝1.8倍で北海道から移籍3戦目を迎えるハイタッチガール。門別ではJRA認定レース勝ちがあり、移籍初戦こそ早めに先頭に立たされ2着に敗れたものの、前走は2着に8馬身(1秒6)差をつけての圧勝だった。2番人気はデビュー戦を勝ったばかりながら、地元関係者から「将来性が高い」と評判のカガノホマレ。3番人気に2勝馬ストロングフーヴス、4番人気に金沢でこの世代最初の新馬戦を勝ったフジヤマブシと続いた。
人気馬はいずれも好スタート。内からストロングフーヴス、ハイタッチガール、カガノホマレが並び、「できれば2番手がよかったですが、(馬が)唸っちゃって」と吉原騎手とカガノホマレが押し出されるようなかたちで先頭に立った。その内にハイタッチガール、ひと呼吸早く控えたストロングフーヴスがその後ろに続いた。
向正面に入ると、ストロングフーヴスが外から進出を開始。一方、ハイタッチガールは3コーナー手前で早くもムチが入った。4コーナーでも鞍上・青柳正義騎手の手は激しく動いていたが、外に切り替えると一歩一歩伸びて1馬身半差で勝利。2着は中団から泥んこになって差してきたフジヤマブシ。鞍上の平瀬城久騎手は「直線は手応えが良かったです。これからもっとレースを覚えてくれればと思います」と話した。クビ差の3着はストロングフーヴスで、「併せた方がいい馬なので」と畑中信司騎手は直線で勝ち馬に馬体を寄せに行ったが、すでに脚いろが違った。
勝ったハイタッチガールを管理する中川雅之調教師は2017年フウジン、18年アイオブザタイガーに続き同レース3連覇。このレースは『中日スポーツ杯』だが、「騎手時代の重賞初制覇も中日杯ですし、父(一男・元調教師)の代から“中日”とは相性がいいんですよ」とほほ笑んだ。
今後については「レース後の状態を見てからにはなりますが」と前置きをした上で、「過去に2歳牝馬は詰めて使って良くなかったので、金沢シンデレラカップよりも翌週の金沢ヤングチャンピオンかな、などと考えています。これからオーナーと相談したいです」とのこと。重賞連勝を果たした少女の今後に注目が集まる。
Comment
青柳正義 騎手
折り合いには苦労しない馬ですが、勝負どころでの動きが渋いので早めに動き出しました。手応えはあって、外に出した時にはハミをしっかり取ったので自信を持って追いました。前走より格段に成長していますし、今回のような厳しいレースでも勝てました。さらに成長してくれば楽しみです。
中川雅之 調教師
調教には私が乗って、牝馬特有の気乗りしている面があったので気がかりでしたが、状態は引き続き良かったです。青柳騎手は最後まで諦めないで乗りますし、調教でも直線で手前を替えるとグッと伸びるので、直線を向いた時には「勝てるだろう」と思いました。将来性のある相手に勝てたことも嬉しいです。