兵庫県競馬にサラブレッドが導入されたのが1999年。今年で20年が経過したが、この間、ダートグレード競走ではロードバクシン(01年兵庫チャンピオンシップGⅢ)、チャンストウライ(08年佐賀記念JpnⅢ)、タガノジンガロ(14年かきつばた記念JpnⅢ)、トウケイタイガー(17年かきつばた記念JpnⅢ)、エインシンヴァラー(18年黒船賞JpnⅢ)、エイシンバランサー(18年サマーチャンピオンJpnⅢ)の6頭が勝った。
しかし、JRAの重賞ではサラブレッド1期生であるマッキーローレルの00年セントライト記念GⅡ・4着が最高。JRAの重賞制覇は兵庫県競馬の悲願であり、大きな目標だが、いまだに達成されていない。
サラブレッド導入から21年目となる今年、その悲願に手が届くかもしれない2歳馬が現れた。これまで5戦4勝、園田では4戦無敗で兵庫若駒賞に駒を進めてきたエキサイターだ。
18年北海道サマーセールで430万円(税抜)で落札され、500キロを大きく超える雄大な馬体の素質馬だが、これまでの勝ち方も次元が違う。ここまでの4勝で2着馬につけた差が3馬身、大差(2秒0)、8馬身、大差(3秒1)。唯一の敗戦もJRA阪神で芝に挑戦した野路菊ステークス。それでも3着と健闘している。現時点の兵庫2歳勢の中では敵なしと言えた。
単勝オッズは最終的には1.1倍だったが、出走馬がパドック周回中には、掲示板には1.0倍が表示されていた。2番人気は大きく離れてディアタイザンで8.5倍。3番人気以下は10倍以上で、興味はエキサイターの2着争だった。
その一方、長南和宏調教師は「ゲートの出がもっさりしているので、道悪で前が止まらなくなって、届かなくなることが心配」と慎重だった。レース前にはどんよりとした雲が上空を覆い、同調教師を心配させたが、雨は降ることなく、良馬場のままレースを迎えた。
エキサイターはスタートで右によれ、出ムチ2発でなんとか中団の5番手を追走と、想定通りの内容だった。向正面を過ぎると、早くも吉村智洋騎手が上半身と腕を激しく動かしてムチを連打し、上昇を開始。3コーナーでは3番手。4コーナーでは逃げていたディアタイザンをとらえ、先頭に躍り出る。直線は外から迫ってきたピスハンドを3馬身差で振り切った。粗削りだが、力でねじ伏せたという言葉がふさわしい内容だった。
一昨年のトゥリパ以来、このレース2年ぶりの勝利となった吉村騎手は「プレッシャーや緊張はなかったし、いつも通りにやることをやれば勝てると思っていた」と自信満々で臨んでいた胸の内を披露した。対照的に大嶋晃一オーナーの代理で表彰台に立った容子夫人は「単勝1.1倍のプレッシャーに押しつぶされそうだった」とホッとした表情で涙をぬぐった。
次走は11月9日、JRA京都のデイリー杯2歳ステークスGⅡ(芝1600メートル)で再度、JRAの芝に挑戦する。大嶋オーナーは前述チャンストウライの共有馬主で、同馬で08年阪神大賞典GⅡに挑戦したが10着に敗れており、11年ぶりのJRA重賞挑戦となる。「跳びの大きな馬だし、エンジンのかかりが遅いので、距離延長も広いコースになるのもいい」と長南調教師。
兵庫県競馬のサラブレッドとして、悲願のJRA重賞制覇へ。金字塔を打ち立てるため、エキサイターが京都へ攻めのぼる。
Comment
吉村智洋 騎手
スロースターターで差し遅れないかが心配だった。先行馬の後ろは理想的なポジション。スタミナがあってバテないのが強みなので、あえて早めにスパートをかけた。園田の狭い馬場は走りづらい。大きい広いコースのほうが合っている。底を見せていないので、今後が楽しみ。
長南和宏 調教師
攻め馬はしっかりしていたが、馬体重が7キロ増と調整が難しい。切れ味はないが、バテないので、早めに動くように指示していた。コーナーで減速するので広いコースじゃないとダメ。デイリー杯の後は、結果次第で京都2歳ステークスへ。兵庫ジュニアグランプリは登録のみになりそうです。