2歳馬たちの夢舞台『未来優駿』。10月22日の川崎競馬場では、南関東2歳最初の重賞、鎌倉記念が実施された。のちに羽田盃馬となるミューチャリーの末脚に酔いしれてから、ちょうど1年。
今年は、目下3戦3勝で負けなしの快速馬インペリシャブルが、単勝1.4倍の断然の人気を集めた。前哨戦の若武者賞は、2着馬に2秒2差をつける大差勝ち。今回は後続に迫られる場面もあったが、何が起こるかわからない2歳馬のレースで、自分の形に持ち込んでしっかり結果を出せたのも、この馬の強さだろう。
インペリシャブルは好スタートを決めると、想定通り一気に先頭を奪った。2番手にはレイワデジタル、3番手の内には北海道からの遠征馬アベニンドリーム、外に園田プリンセスカップの勝ち馬スティローザが続き、少し離された中団にはミナミンが追走。
そのままインペリシャブルが軽快に飛ばし、勝負どころ3コーナーから後続との差を広げていった。最後の直線ではアベニンドリームが詰め寄ってきたものの、インペリシャブルは渋太く粘り、クビ差での勝利。勝ちタイムは1分36秒1(不良)。3着には勝負どころから脚を伸ばしてきた牝馬のミナミンが入った。
インペリシャブルはここまで圧倒的なスピードで駆け抜けてきただけに、これほど僅差のレースは初めて。しかし矢野貴之騎手は、「前走は直線でササるところが気になったので、今回はハミを替えてもらったのですが、逆に道中掛かりすぎた分ですね。止まってはいなかったし、交わされる雰囲気ではなかったので大丈夫だろうなとは思っていました」と冷静に振り返った。
インペリシャブルにとっては初めて追われる厳しい競馬になったが、これも今後に向けてはいい経験になっただろう。12月18日の全日本2歳優駿JpnⅠの優先出走権をつかんだが、ローテーションに関してはこれから考えていくそうだ。
なおこの川崎開催の前には、台風19号が東日本を中心に広範囲で猛威を振るった。各地で大きな爪痕を残したが、川崎所属馬の厩舎がある小向トレーニングセンターも、隣接している多摩川河川敷の練習馬場が冠水する被害にあった。そのためしばらくは使用できなくなり、川崎競馬場へ馬を輸送しながら調教を行ってきた。
インペリシャブルも川崎の他の馬たち同様に、これまでとは違う調教メニューを余儀なくされたのだが、普段からおとなしい馬で目に見えた変化はなかったという。それでもレースで走ってみないことにはわからなく、関係者たちも胸をなでおろしていた。
「返し馬から調子の良さは伝わってきました。台風の影響で練習馬場が使えない中で調整しながら、こういう状態に仕上げてくださった厩舎関係者には感謝しかないです。インペリシャブルのメンタルも相当強いと思います」(矢野騎手)
いよいよ南関東競馬も2歳重賞戦線がにぎわっていく。4戦4勝で負けなしのインペリシャブルに、これからどんな未来が待っているのだろうか。
Comment
矢野貴之 騎手
前走があんなに強い勝ち方だったので緊張しました。現時点でのスピードは1枚上ですね。本来は短距離の差し馬というイメージでしたが、川崎コースの1500や1600メートルの小回りも向いているのかなと。距離も含めて未知です。体の緩いところもあるし、どんなふうに成長してくれるか楽しみです。
高月賢一 調教師
レース前から、逃げ馬が不利な馬場かなとも思ったので、矢野騎手には無理に行かなくてもいいんじゃないかということを話しましたが、スピードの違いで逃げる形になりました。川崎の直線は短いですが、500メートルくらいもあるように長く感じて、ゴールが早く来てくれと思いながら見ていました。