ホッカイドウ競馬は、全国で最も多くの2歳馬がデビューする。頭数が多いこともあり、中央競馬と同じ、勝ち上がりシステムを設けているので、しっかりしたピラミッドが作られる。この仕組みが、ハイレベルな戦いを演出し、中央馬と対等以上に戦える2歳馬を輩出している。しかし、シーズンオフを迎える競馬の宿命だが、中央や南関東を始め、続々と有力馬たちは移籍してしまう。
その流れを食い止めるのは難しい。しかし、ホッカイドウ競馬は2016年、“3歳三冠賞”を創設した。北斗盃、北海優駿、王冠賞をすべて勝利すると、馬主に2000万円のボーナスが与えられるというもの。二冠でも250万円が支給される。16年はスティールキング、17年は岩手のベンテンコゾウが二冠で圧倒的な強さを見せたが、三冠最後の王冠賞で苦杯をなめた。しかし、“3歳三冠賞”の存在は、2歳重賞を戦い抜いた有力馬がそのまま残り、他地区の有力馬も参加する状況になるなど、大いに意義はある。
今年の三冠は、ジュニアグランプリ(盛岡)を制した他、鎌倉記念(川崎)2着など、遠征実績があるリンゾウチャネルが、どこにも移籍をせず、春に備えて門別競馬場で調整していた。そして、中央2勝の実績があるジョウランが、南関東を経て北海道に移籍。中央実績のある馬が、ホッカイドウ競馬の三冠を狙ってきたケースは初めてだ。一冠目の北斗盃は、トリッキーな内回り1600メートルで行われる。先行有利のコース形態で、ジョウランはペースを落とさず逃げたが、4コーナーで射程圏内に入れたリンゾウチャネルが、直線は独壇場。何とかジョウランは2着を死守したが、2戦2勝の新興勢力であるシベリアンプラウドが3着に健闘し、素質の片鱗を見せた。
外回り2000メートルに舞台を移し、スローペースは確実。しかも直線が約100メートル長くなる。近年の門別は、良馬場だとかなりタフなレースとなり、その距離以上のスタミナが必要となる。スピード優先の北斗盃から一転、北海優駿はスタミナ勝負となる。
各馬が牽制し合い、スタート後のスタンド前を通過した時から淡々とした流れ。2番手につけたジョウラン、その直後にいたリンゾウチャネルも引っかかっていた。2コーナーに入る手前からさらにペースダウンし、5ハロン63秒8とかなり遅い流れで展開された。4コーナー手前で、抵抗するジョウランを馬なりで交わすリンゾウチャネルは、直線でもしっかり伸びた。上がり3ハロンは40秒2をマークしたが、これはメンバー中最速。これでは、2着以下の馬たちは影を踏むことすら許されない。3馬身離れての2着にリンノレジェンドが入った。
リンゾウチャネルは、今季無敗で二冠制覇を飾った。堂山芳則調教師は7年ぶり7度目、五十嵐冬樹騎手は14年ぶり3度目の北海優駿Vとなった。
ホッカイドウ競馬の三冠馬は、トヨクラダイオー(1981年)、モミジイレブン(1999年)、ミヤマエンデバー(2001年)、クラキンコ(2010年)の4頭。最後の関門、王冠賞は8月1日に行われる。“3歳三冠賞”創設後、リンゾウチャネルは、3頭目の三冠挑戦となる。21世紀の三冠馬2頭は、いずれも堂山厩舎の馬だ。当時とローテーション、距離は異なる。さらに、クラキンコの時は、相当プレッシャーを感じた中で三冠馬に育てた。三冠の勝ち方を最も知る名伯楽が、史上5頭目の偉業を目指す。
Comment
五十嵐冬樹 騎手
マイル戦を使った後の影響もあり、道中はかかり通しでした。それでも、他の先行勢が一杯になる中、最後までしっかり伸びてくれました。僕自身、三冠に挑戦するのは初めてなので、気を引き締めて王冠賞に挑みたいと思います。応援よろしくお願いします。
堂山芳則 調教師
外回りの方が能力を発揮しやすい点を考えると、内回りで行われる北斗盃をクリアしたことで、三冠を意識しました。シーズンが始まり、ここまで4戦しましたから、疲れをしっかり取り、三冠最後の王冠賞へ直行する予定です。