羽田盃では驚異的な末脚を発揮して他馬を圧倒したミューチャリーが、単勝1.3倍という断然人気で迎えた二冠目の東京ダービー。ただ主戦の御神本訓史騎手は羽田盃のあと、「馬場状態や展開次第などで前回(雲取賞)のような結果になることもあるので……」とも話していたが、その不安のほうが的中する結果となった。
出ムチを入れてハナを取りに行ったのがイグナシオドーロで、外枠から好ダッシュを見せたヒカリオーソが2番手、京浜盃、羽田盃ともに2着だったウィンターフェルが3番手につけた。注目のミューチャリーは中団で、有力馬の位置取りはほぼ予想されたとおり。しかし想定外だったのはペース。見るからに遅い流れは、道中で13秒台後半から14秒台もあり、前半1000メートル通過が65秒6というもの。
イグナシオドーロが3~4コーナー中間で後退すると、ヒカリオーソは自然な形で先頭に立った。ウィンターフェルはこれをマークしてピタリと2番手。前半スローペースなら当然前は止まらない。直線を向いて、この実績馬2頭の追い比べとなったが、ヒカリオーソがあっさり突き放しての快勝となった。
期待されたミューチャリーは4コーナーで5、6番手まで位置取りを上げていたが、ゴール前でようやくウィンターフェルをとらえたまで。ヒカリオーソとは2馬身差があった。4着にも早めに好位にとりついたグリードパルフェが入り、たしかにスローペースの前残り。ミューチャリーの御神本騎手は「自分の競馬はできたけど、前回(羽田盃)ほど弾けなかった」。最後は伸びていたものの、勝ち馬と脚色が同じになってしまった。
スローに流れたわりには後半がそれほど速くなったわけでもなく、レースの上りと1、2着馬の上り3ハロンはいずれも同じ38秒0。勝ちタイムの2分9秒4は、東京ダービーが2000メートルで実施されるようになった1999年以降でもっとも遅い勝ちタイムだった。
アタマ差で3着だったウィンターフェルは、2歳時から高い素質を認められながら、これで重賞は2着5回に3着1回。「うまく流れに乗れたと思ったんだけど、手応えほど伸びがなかった。精神的にもっと大人にならないと」と森泰斗騎手。
勝ったヒカリオーソは、2走前の雲取賞同様、1番人気のミューチャリーを負かしての重賞3勝目。京浜盃での大差しんがり負けは鼻出血が原因で、羽田盃には出走できず。東京ダービーに間に合ったとはいえ、鞍上も山崎誠士騎手に替わり、陣営も手探り状態での出走だったようだ。
ヒカリオーソの父はNARグランプリ年度代表馬に4度輝いたフリオーソ。現役時、ジャパンダートダービーJpnⅠは制していたが、東京ダービーはクビ差の2着。父がわずかに届かなかった東京ダービーのタイトルを制して見せた。またオーナーの西森鶴氏は2年前、フリビオンで高知優駿、西日本ダービーを制しており、フリオーソ産駒として2頭目の“ダービー制覇”となった。
ヒカリオーソの次走について、「目標はジャパンダートダービーですが(鼻出血の影響を)獣医さんとも相談して、馬の様子を見ながらになります」と岩本調教師。殊勲の山崎騎手ともども“ダービー制覇”の喜びを語る一方、前日に起こった複数頭がからむ落馬事故に巻き込まれ、意識が戻らないままの柏木健宏騎手を気遣う様子もあった。
Comment
山崎誠士 騎手
かなり遅いペースでも折り合いがついて、最後まで脚をつかってくれました。4コーナーでも抜群の手応えだったので、あとはうしろから来なければ勝てると思いました。調教試験からテン乗りで、大仕事を任せてくれた先生、馬主さんをはじめ、懸命に仕上げてくれたスタッフのみなさんに感謝しています。
岩本洋 調教師
行く馬がいるので2、3番手につけて早め先頭という、思ったとおりの展開になりました。鼻出血のあとでも心配するようなところもなく、すぐに調教もできて、次はダービーと思っていたので、結果が出てよかったです。ただアクシデント(前日の落馬事故)のあとなので、実感はこれからだと思います。