賞金額が一気に上がり、地方全国交流競走となってから3年目。今年の高知優駿には兵庫から2頭、佐賀から2頭が参戦し、九州ダービー栄城賞を圧勝して臨んできたスーパージンガが単勝1.8倍の支持を受けた。続く2番人気は地元のナンヨーオボロヅキ。兵庫所属のアイオブザタイガーが3番人気、同じく兵庫のリリコが4番人気でレースを迎えた。
この日の馬場は、前日までの雨の影響で「内ラチ沿いが使える」(倉兼育康騎手)という状況。各騎手も逃げ先行が有利と認識していたことだろう。そのなかでスタート直後に先手を取ったのは、大外枠のナンヨーオボロヅキ。内枠のコスモアニモーソ、アポロンが続き、スーパージンガとリリコはその直後を追走していった。
その隊列は縦長。向正面の馬場を1周したあたりでリリコとスーパージンガ、さらにスタートで後手を踏んでいたアイオブザタイガーが前を目指して動き始めた。それでもナンヨーオボロヅキは2番手以下に2馬身以上の差を保ったまま。スーパージンガはその流れに乗れず脱落し、4コーナーでは逃げ切りを図るナンヨーオボロヅキと2番手で粘るコスモアニモーソ、そして兵庫2頭の勝負になった。
逃げるナンヨーオボロヅキは直線で一杯になったものの最後まで先頭を譲らず、逃げ切り勝ちを果たした。アイオブザタイガーはゴール前で猛然と伸び、リリコを交わして2番手に上がったが、勝ち馬には半馬身、届かなかった。
ナンヨーオボロヅキは前走で赤岡修次騎手が手綱を取ったが、今回は大井の御神本訓史騎手が起用された。これは「赤岡騎手が乗れないということだったので、それならと」という、雑賀正光調教師のアイデア。御神本騎手は2010年に雑賀厩舎所属で期間限定騎乗をしたことがある。「依頼があったときはちょっと迷ったのですが、高知への感謝の意味を含めて受けさせていただきました」と、その年以来の高知となった御神本騎手。返事を受けた雑賀調教師は喜んで、実況の橋口浩二アナウンサーに報告したそうだ。
さらに調整過程にも工夫があった。「今回の追い切りは全休日の火曜日にやりました。そこから中4日。牝馬ですから、このほうがいいと考えまして」とのこと。さらに「本当は短距離向き」(雑賀調教師)というタイプ。2着に敗れたアイオブザタイガーの大山真吾騎手は「スタートの瞬間に馬が横を向いてしまって。あれがなければ……」と悔しがったが、後続の追い上げを封じることができたのは、雑賀調教師が積み上げてきた采配の賜物と言えるのかもしれない。
一方、スーパージンガは勝ち馬から2秒差での5着。渡辺博文調教師は「結果として攻めきれていなかったのかなあ」と検量室前で肩を落とした。鞍上の真島正徳騎手も「いつもの動きではなかったですね」と意気消沈。それでも今後はグランダム・ジャパン古馬シーズンを目指すとのことで、この経験が糧になることだろう。
高知優駿の表彰式は、ひとつレースをはさんだそのあとに行われた。それが終わり、雑賀調教師は検量室に戻って椅子に座り、しばらく息を整えた。その間も騎手や調教師などと話をしていたのだが、ふと見るとその目はうっすらと赤くにじんでいた。
Comment
御神本訓史 騎手
過去のレースは映像で見ていました。実際に乗ってみたらとても乗りやすくて素直。あとは自分のリズムを大切にして、ペース判断さえ間違えなければ大丈夫だと思っていました。溜めても持ち味が出ない感じでしたから、少しずつ出していきながらの逃げ。最後は止まりましたが、なんとか残してくれました。
雑賀正光 調教師
本来はスピードタイプで、1900メートルは長いんですよ。それをなんとかしようといろいろと工夫して、それが結果につながりましたから、感無量というところです。食欲がある馬なので、そういうところも強みになりましたね。そして御神本騎手が本当にうまく乗ってくれました。