兵庫三冠の二冠目・兵庫チャンピオンシップJpnⅡに出走するか否かが兵庫ダービーでの勝敗を分けたかもしれない。
兵庫三冠は菊水賞、兵庫チャンピオンシップJpnⅡ、兵庫ダービー。真ん中にダートグレードレースが入り、今年は一冠目と二冠目の間隔が中2週だった。「間隔が詰まるので」と兵庫チャンピオンシップJpnⅡを見送ったのは菊水賞馬ジンギ。5戦4勝、うち重賞2勝と断然の実績を誇り、管理する橋本忠明調教師は過去3度のダービー挑戦でいずれも2着とダービーへ並々ならぬ思いを持っていた。
一方、兵庫チャンピオンシップJpnⅡに参戦したバンローズキングスは、インコースを上手く立ち回って3着。菊水賞6着からの巻き返しに向けて陣営の士気は一気に高まった。
汗ばむ陽気の中、好スタートからハナを切ったのはアヴニールレーヴ。その外から2歳重賞2勝のテンマダイウェーヴが2番手につけた。レースが数十メートル進んだところで、やや立ち遅れていた2番人気のエナキョウが「行き脚がついていたので」(吉原寛人騎手)と一気に3番手まで押し上げてきた。その後ろのインコースに3番人気のバンローズキングス、1列後ろの外にジンギと続いた。
淡々とした流れでレースは進んだが、向正面でテンマダイウェーヴが先頭に立つと、3コーナーでバンローズキングスが迫っていった。その後ろのジンギはじわじわとしか伸びず、エナキョウは「1周回ったところで馬の集中力が切れてしまって」と、少しずつ後退していった。
直線に入ってバンローズキングスが先頭に立つと3馬身半差で優勝。昨年の地方競馬全国リーディングながら兵庫ダービーは念願の初制覇となった吉村智洋騎手の左手が大きく上がった。2着にはテンマダイウェーヴが粘り、1馬身差の3着は最後方グループからインコースを通って追い上げたオオエフォーチュン。
テンマダイウェーヴの杉浦健太騎手は「大外枠で思い切って乗らないと、と思っていました。正攻法で自分から動いてしっかり走ってくれました」。オオエフォーチュンの山田雄大騎手は今回がダービー初騎乗。「向正面で迷いましたが、インコースを通って正解でした。でも、ここまできたら2着がほしかったですね」と複雑な表情だった。
1番人気ジンギは4着。橋本調教師は「勝負どころでの行きっぷりが……」と首を傾げ、田中学騎手は「間隔も開いていたからかな?1~2コーナーから反応がなくて……」と語った。
勝ったバンローズキングスは門別でデビューし、昨秋に兵庫へ移籍してきた。園田ユースカップ7着、菊水賞6着だったのが前走兵庫チャンピオンシップJpnⅡで3着に大健闘。好走の影にはチークピーシズの効果があった。「転入当初から気を抜く面があって気にしていたんですが、結果が出ていたので変わったことをせずにいようと、そのままいっていたんです。でも、菊水賞で負けた時に吉村騎手が『1度思い切ったことをやりましょうか』ということで着けると、いきなり兵庫チャンピオンシップで3着。かなり効果がありました」と管理する松平幸秀調教師。兵庫チャンピオンシップJpnⅡへの出走が兵庫ダービーに生きた。厩舎の重賞初制覇が兵庫ダービーになっただけでなく、松平調教師にとっては騎手時代も含めて兵庫ダービー初制覇。2009年、キヨミラクルに跨り半馬身差で2着に敗れた雪辱を調教師となって果たした。吉村騎手も3年前の兵庫ダービー、エイシンニシパでクビ差2着に負けた時は顔面蒼白だったが、念願の戴冠。新たなダービー馬、そしてダービージョッキー・トレーナーが誕生した。
Comment
吉村智洋 騎手
6番枠でしたがインを取りたいと思っていました。勝負どころで後ろの人気馬が多少気になりましたが、長くいい脚を使う馬なので前が動いたのについていきました。以前は道中でフワッとする面がありましたが、チークピーシズを着けて走りがガラッと変わりました。勝てて「よっしゃぁ!」という気持ちです。
松平幸秀 調教師
ホンマなんかなぁ?とまだ実感が沸きません。前走後は少し疲れがあり立て直すのに時間がかかりましたが、朝が涼しくなった分、ここ10日ほどで一気に体調が戻り前走時の状態に持ってこられました。当初はこの後、金沢のMRO金賞を予定していましたが、今日勝つことができたのでオーナーと改めて相談します。