特集
2018ヤングジョッキーズシリーズ
2018 YOUNG JOCKEYS SERIES
本年12月27日(木)に大井競馬場、28日(金)にJRA中山競馬場で実施される『2018ヤングジョッキーズシリーズ ファイナルラウンド』への出場権をかけて、地方競馬およびJRAの若手ジョッキーが争う代表騎手選定競走が『2018ヤングジョッキーズシリーズ トライアルラウンド』です。このトライアルラウンドでの着順に応じて得た点数により、地方競馬およびJRAそれぞれの代表騎手が選ばれます。
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Trial Round
- 8月15日(水)
- 盛岡競馬場
- ヤングジョッキーズシリーズTR 盛岡
- ポイント表
南関東の2名が2戦とも勝利 地元騎手も上位に食い込む
盛岡競馬場でのヤングジョッキーズシリーズトライアルラウンドは、JRA所属の出場騎手6名がすべて、昨年のこのシリーズにも出場していた。地方所属騎手は吉井章騎手(大井)と岩本怜騎手(岩手)が今年デビューの新人騎手。その姿を横目で見ていた岩手の小林凌騎手(昨年10月に通算100勝を達成)は「僕も出場したかったですね。昨年はファイナルに行けませんでしたし、今年は昨年の経験を踏まえて、ということもできないので」と、さみしそうな顔をしていた。
今年も今回が最後になるという騎手が複数。その騎手はとくに、ファイナルラウンドに向けてポイントを重ねておきたいところだ。
そのなかのひとりが、岩手の鈴木祐騎手。昨年のトライアルラウンド盛岡では勝利を挙げて、ファイナルへの大きな足掛かりにしていた。今年もほかの出場騎手よりもコース経験が多いというアドバンテージをいかしたいところだが、第1戦は8着。「下手ですね……」と意気消沈のコメントを残したが、出走馬の力量が結果につながりやすい1200メートル戦だけに致し方ない面はあるだろう。
第1戦では岩本騎手の騎乗馬が単勝1番人気で、吉井騎手が2番人気。その2頭は前走が同じレースで、前者が3着、後者が2着。その差はクビだった。そうなると、盛岡での騎乗が初めての吉井騎手より地元の岩本騎手のほうが優位というところ。2番ゲートからスタートを決めた岩本騎手が先手を取り、そのまま逃げ切りを決めにかかった。
そこに待ったをかけたのが、好位追走からインコースを狙って上昇してきた櫻井光輔騎手(川崎)。この日の前半戦で2鞍に騎乗した経験をすぐにいかして第1戦の勝利につなげた。
クビ差で勝利を逃した岩本騎手は「うまくいったと思ったんですが」と悔しそう。それでも岩本騎手にとってはこれがシリーズでの初騎乗。20ポイント獲得で、まずは上々の滑り出しといったところだろう。
3着には横山武史騎手(JRA)が入線。4着と5着は木幡三兄弟の次男、巧也騎手(JRA)がハナ差で長男の初也騎手(JRA)に競り勝った。レース後はその二人が洗面台で顔を洗いながら笑い合って大盛り上がり。その表情からは、若手騎手同士の戦いで気持ち的にリラックスしている様子が窺えた。
第2戦はダート1600メートル。藤田凌騎手(大井)はこの日の前半戦でも騎乗していたが「最後の坂はきついですね」と馬場の感想を話していた。そのほかの騎手にとっても、スタートから900メートル以上もあるバックストレッチにどう対応するかが課題になる舞台だ。
しかし単勝2.3倍の馬に騎乗した吉井騎手は、第1戦の経験をすぐにいかした。スタート直後は先手を取ったが、競りかけてきた藤田騎手に前を譲り、3コーナーで再び先頭に。そこからは危なげのない走りでシリーズの初勝利を手にした。
レース終了後に複雑な表情をしていたのが、2着に入った木村直輝騎手(岩手)。「勝った馬は僕が普段の調教をつけているんですよ。1勝損した気分です」とポツリ。それでも4番人気馬を2着に食い込ませたあたりは、地の利をいかした結果といえるだろう。そして続く3着にも地元の岩本騎手が9番人気馬で入線。岩本騎手はこの日に出場した地方所属騎手では唯一、翌週のトライアルラウンド門別に参戦する予定で(その後、騎乗変更によって藤田凌騎手も出場予定)、そこでも好結果を残したいところだ。
一方、第1戦を制した櫻井騎手は、パドックで騎乗馬が転倒するアクシデントがあった影響か「スタートしてから押しても進んでくれませんでした」という不運で最下位。第2戦を制した吉井騎手は第1戦でも上位人気馬に騎乗していたが、スタートで後手を踏んだこともあって6着という結果だった。それでも今年は『上位の得点を得た4競走分』の合計で順位が決定されるので、2戦とも善戦した横山騎手と岩本騎手を含めて、ファイナルラウンド進出に向けて有利になったといえそうだ。
逆に、これまでの4戦がすべて9着だった井上敏樹騎手(JRA)は、残り4戦の予定となったことでまさに後がなくなった。「どうもダメですね」と苦笑いしていたが、まだチャンスが残っていることは間違いない。今回は8着、11着とふるわなかった鈴木騎手も川崎と浦和に出場予定だから、逆転できる可能性はある。
トライアルラウンドは、全体のスケジュールから見るとまだ序盤。しかし「今年はJRAで乗りたいです」と櫻井騎手が話したように、とりわけ地方所属の各騎手にとってはポイント争いの行方が気になっていることだろう。各騎手とも、翌週の木曜日に行われる門別競馬場でのトライアルラウンドでの結果に一喜一憂することになるはずだ。
取材・文:浅野靖典
写真:いちかんぽ(佐藤到・国分智)
コメント
(川崎)
3コーナーでの手応えは少しあやしかったのですが、直線の半ばあたりからは勝てるかなと思いました。盛岡競馬場は起伏があるので、前半のレースに乗せていただいた経験が結果につながりました。2戦目は残念でしたが、このシリーズは勝つことが重要だと思うので、勝利を挙げられてよかったです。
(大井)
2回とも上位人気馬でしたから、最低でもどちらかは結果を出したいと思っていたのでホッとしました。スタート後は藤田さんと競る形にはなりましたが、最後まで馬の力を信じて乗りました。でも、今日いちばんうれしかったのは、同期の岩本騎手に会えたこと。たくさん話をしてしまいました(笑)。