昨年に続き不良馬場での世代頂上決戦となった高知優駿。今年は大井、兵庫、佐賀から各1頭に地元馬9頭の12頭立てとなった。レースの時間帯は雨こそ止んだものの、直前の4つのレースはすべて逃げ切り勝ちで、ベテランの西川敏弘騎手は「前有利ですね。馬場が軽いので、遠征馬を含めてどの馬にもチャンスがありそうです」と分析した。
単勝人気は3頭が拮抗し、1番人気は大井で2勝を挙げるアンダーザスター(大井)で3.0倍。続いて、高知一冠目の黒潮皐月賞を制覇したレインズパワーが3.2倍、前走の準重賞・山桃特別では向正面で一気に動いて押し切り勝ちを決めたマイネルヘルツアスが3.8倍。さらに九州ダービー栄城賞2着のエアーポケット(佐賀)の8.1倍までが単勝10倍以下となった。
向正面入口からのスタートは外枠のリワードアヴァロンが好ダッシュを決めると、一気に先手を奪った。前有利の馬場を意識してか、2番手にはレインズパワー、その後ろにアンダーザスター、外にフルゴリラ、そしてゼットシェーン(兵庫)と有力どころが続いた。
2周目向正面半ばでアンダーザスターにムチが入り始め、リワードアヴァロンは後続を引き離しにかかった。レインズパワーが2番手で食い下がったが、その差はなかなか縮まらず、1馬身半差をつけてリワードアヴァロンが2分3秒4のレースレコードで勝利となった。
ハナ差3着のアンダーザスターは「持ち味を生かすため、できれば逃げたかったですが、向こうが速かったです」と佐原騎手は唇を噛んだが、4着以下には大差をつけた。
リワードアヴァロンの父グランシュヴァリエは高知時代に重賞4勝のほか、2010年マイルチャンピオンシップ南部杯JpnⅠ・3着や2011年JBCクラシックJpnⅠ(大井)4着などダートグレードレースでも上位争いを繰り広げた。主戦の一人だったのが永森大智騎手で、管理したのは雑賀正光調教師。騎手・調教師ともに父と同じコンビでの大一番制覇となった。また、母デイトナも雑賀厩舎に在籍していたとあって、「自分の子みたいです」と雑賀調教師は何度も顔をほころばせた。
さらに、リワードアヴァロンがこの世に生を受けたのには雑賀調教師の采配があったと教えてくれたのは、高知競馬実況の橋口浩二アナウンサー。「リワードアヴァロンの配合は雑賀調教師がオーナーに勧めたんですよ」とのこと。改めて雑賀師に伺うと、グランシュヴァリエになるべく多くの交配相手を探していたオーナーから相談を受け、脚元に不安があり高知では1走しかできなかった母デイトナが非サンデーサイレンス系ということもあり、提案したという。
前走は乗替ったが、再び手綱が戻ってきた永森騎手は「2走前の黒潮皐月賞で失敗(3着)してしまいましたが、また乗せてくださった馬主と調教師、そして普段、調教でちょっと乗りづらいんですけど、一生懸命調教をつけてくれた岡村くん(卓弥騎手)に感謝しています」と話した。内枠だと怯んだり、自分のペースで運べないと脆さを残す若馬との苦悩は様々あっただろうが、再び巡ってきたチャンスで一冠目の悔しさを晴らすことができた。
いくつものドラマを生んだ高知優駿。そこには、人と馬と高知競馬が歩んだ歴史が織り重なっていた。
Comment
永森大智 騎手
内枠でスタートの速い馬がいると怯んでしまいますが、今日くらい速いスタートを切れる馬。今日は外枠も良く、馬が我慢して真面目に走ってくれました。3~4コーナーでリードがありましたが、油断せずゴールまで一生懸命追いました。馬もですが、自分自身の成長ももっと必要だと思うので、頑張ります。
雑賀正光 調教師
枠も馬場も味方しました。(永森)大智とグランシュヴァリエはやっぱり運命があったんですね。父よりまだ少し細いですが、秋以降、幅が出れば体重も増えると思います。高知優駿を勝ったので「グランシュヴァリエの仔」ではなく、「リワードアヴァロン」と呼んでもらえますね。この後は3歳路線を歩みます。