羽田盃が行われた2日後の5月1日、佐藤賢二調教師ご逝去の報せには驚くしかなかった。4月28日の東京プリンセス賞をアクアリーブルで制した際には笑顔で口取り写真に収まり、羽田盃でも管理するブラヴールが直線追い込み惜しくも2着に敗れたものの、東京ダービーへの期待を抱かせる好走を見せていた。
佐藤賢二調教師の管理馬は、暫定的に米谷康秀厩舎へと移籍となったが、その後ブラヴールは正式に佐藤裕太厩舎の所属となった。
ブラヴールは、父セレンが南関東の重賞4勝、母チャームアスリープは南関東牝馬三冠を制した。佐藤賢二調教師は、その父・母も管理。セレンは3歳春以降長期休養でクラシック戦線に乗ることができず、ブラヴールにとっては、出走が叶わなかった父の期待と、佐藤賢二調教師の無念も抱いての東京ダービーとなるはずだった。ところが、右後肢挫石のため競走除外。出走していれば、羽田盃を制したゴールドホイヤーと人気を二分したと思われる。
そして二冠の期待がかかるゴールドホイヤーが単勝1.4倍の断然人気に。しかしそのゴールドホイヤーは直線伸びきれず、波乱の結果となった。
本馬場入場後に1番枠のリヴェールブリスも馬体故障で競走除外。ファルコンウィングの逃げが予想されたが、2番枠でも最内枠となったエメリミットが引かずに競り合い、しかしファルコンウィングがハナを取りきった。大外からウタマロが進出して2番手、ボンモマンがそのうしろに続き、控えたエメリミットはラチ沿い3番手。人気のゴールドホイヤーは中団、東京ダービー38回目の騎乗となった的場文男騎手のモンゲートラオは行き脚がつかず後方からとなった。
直線を向いてもファルコンウィングが先頭だったが、中団につけていたティーズダンクがラチ沿いを伸びて一旦は先頭へ。そこに4コーナーで一瞬のタイミングを見計らって外に持ち出したエメリミットに、中団から進出したマンガンが馬体を併せ、馬場の三分どころを一気に伸びた。
その2頭の追い比べはゴールまで続き、エメリミットがマンガンをクビ差で振り切っての勝利。ともに一冠目の羽田盃には出走しておらず、東京湾カップで1、2着だった2頭が順序を入れ替えての決着となった。
ティーズダンクは2馬身差3着。東京ダービートライアルを制して臨んだブリッグオドーンが後方から伸びて4着。直線伸びきれず5着だったゴールドホイヤーの山崎誠士騎手は「スタートから終始もたついて、反応も鈍かった。羽田盃とは走りが違った」とのこと。注目の的場騎手は8着だった。
エメリミット以外の先行3頭がいずれも二桁着順に沈み、2~5着馬はいずれも中団よりうしろから伸びてきた馬たち。その展開で勝ちきったエメリミットは、2000メートルという距離でそのスタミナが際立っていた。
管理する林正人調教師は2013年のインサイドザパーク以来の東京ダービー2勝目。17年目の山口達弥騎手は、重賞初制覇が“ダービー”のタイトルとなった。検量室前、山口騎手は厩舎関係者や船橋所属騎手に握手を求められると笑顔が弾けた。
Comment
山口達弥 騎手
スタートからあまりペースを落とされたくなかったので、(ファルコンウィングに)ちょっと競りかけて、そのあと引いて、あとは自分のペースで回ってこれました。揉まれ弱いところがあったんですが、クラウンカップあたりから克服してしっかり伸びるようになってきたので、今後も楽しみです。
林正人 調教師
ダービーは毎年出したいと思っても、なかなか出せないこともあるレース。それを2度勝てたのはうれしい。直線は早くゴールがこないかと思いました。次走は馬の状態を見て、オーナーと相談します。