近畿地方は前日に梅雨入りが発表され、この日の園田競馬場も雨。兵庫ダービーの直前、その雨脚は強くなり、その後の最終レースでは不良馬場にまで悪化。そうした馬場状態と枠順は、少なからず結果に影響したと思われる。
注目は先行争い。菊水賞まで重賞4連勝がすべて逃げ切りだったステラモナークがどう出るか。果たして、ディアタイザンが好ダッシュを決めて先頭に立つと、ステラモナークは競りかけず2番手に控えた。前走のじぎく賞では先行争いがオーバーペースとなって5着に敗れていただけに、無理な先行争いは避けたのかもしれない。
最初の3コーナーまでに隊列はほぼ決まり、スタンド前に入るとディアタイザンの杉浦健太騎手は、直後のステラモナークの出方を確認しながらペースを落とした。結果的にこのあたりでほぼ勝負はついていたのかもしれない。
向正面半ばからペースアップ。ステラモナークもぴたりと追走し、3番手以下との差が徐々に広がった。
そして3コーナー過ぎ。ステラモナークがディアタイザンを外からとらえにかかっての一騎打ち。4コーナーでステラモナークがやや外に膨れたところでディアタイザンが再び差を広げた。しかしステラモナークも食い下がり、ゴール前で差を詰めたものの、ディアタイザンが半馬身差で振り切っての勝利となった。
離れてピスハンドとガミラスジャクソンが3着を争っていたところ、道中は後方から2番手だったイチライジンが向正面からのロングスパートで直線大外から一気に迫り、わずかにとらえて3着。2着からは5馬身差。ハナ差4着にピスハンド、半馬身差5着にガミラスジャクソン。
1~4番人気馬が順に2~5着に入線。それら人気上位馬を、7番人気のディアタイザンがまとめてしりぞけた。
先行有利な不良に近い重馬場だが、「馬場状態は関係なくこなしてくれるので、心配はしてなかったです」と杉浦騎手。「前走4コーナーで物見をするような感じがあったので、初めてチークピーシズをつけてみたんですが、それがうまくいきました」と碇清次郎調教師。たしかに4コーナーをスムーズに回れたところでステラモナークとの差を広げることができた。一方、ステラモナークの下原理騎手は、「理想でなくとも2番手は考えていた。距離は1400メートルのほうが合っている」と。枠順も含め、いくつかの要素がディアタイザンに有利だったことが、最後のわずか半馬身だった。
“ダービー”初勝利の杉浦健太騎手は、ゴール後、そして検量室前に戻ってくるまで、何度も手を高く挙げてガッツポーズ。2016年の兵庫ダービーでは1番人気に支持されたマイタイザンで7着と悔しい思いをしていた。しかしそのマイタイザンでは秋の西日本ダービーを勝ち、その後もずっと杉浦騎手が手綱をとり、逃げにこだわって古馬重賞でも5勝とタイトルを重ねている。マイタイザンによって磨いた“逃げ”の技を、ダービーの舞台で存分に発揮する勝利でもあった。
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杉浦健太 騎手
人気馬が全部外枠だったので、主張してハナに行こうと思っていました。前半からペースが落ち着いて、リズムよく走れていたので、最後もしっかり伸びてくれると思って乗っていました。ダービーには特別な思いがあって、何より“タイザン”の馬で勝てたのがうれしいです。
碇清次郎 調教師
逃げたほうが能力を発揮できる感じなので、思い通りハナを切ることができて、あとは息がどれだけもつかと思って見ていました。まだゆるいところや注文をつけるところはありますが、菊水賞のあとに一息つけたのが成長を促したと思います。馬の状態を見て、秋まで休ませるか、オーナーと相談します。