特集
未来優駿 2018
MIRAI YUSHUN 2018
毎年秋に行われる各地の2歳主要競走(計7レース)を短期集中施行するシリーズ(2008年創設)。2018年は10月14日から、11月20日まで、未来を期待される優駿たちの戦いが繰り広げられます。
3歳馬によるダービーシリーズ同様、各地の主要競走が短期間で楽しめる贅沢感や、先々への期待感を醸成できることが、このシリーズ最大の魅力。また、11月以降のダートグレード競走(11/1・門別競馬場・北海道2歳優駿、11/28・園田競馬場・兵庫ジュニアグランプリ、 12/19・川崎競馬場・全日本2歳優駿)への期待感を高めることも期待されます。
また、当ページでは、6月末から各地で行われる2歳重賞をピックアップしてリポート。2歳馬たちの戦いにどうぞご期待ください。
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単勝元返しの支持に応えて大差 昨年に続いて無敗の牝馬が勝利
ゴールドウィング賞では、2013年にリーダーズボードが、2017年にはサムライドライブが圧倒的な力を見せ無敗のまま制していたが、今年もエムエスクイーンがその未来に大きな期待を抱かせる圧勝を飾った。
エムエスクイーンはここまで5戦5勝。2着馬にはすべて1秒4以上の差をつけており、前走でも北海道から愛知に移って以降が5戦5連対だったリードメロディーに2秒1の大差で下していた。
となれば、現在の東海地区にはもはや敵なしとファンが考えるのは当然で、単勝オッズは1.0倍のまま不動。パドックに姿を現したエムエスクイーンは右の後ろ脚だけにバンテージを巻いている点が気にはなったが、それも終わってみればいわゆる“重箱の隅”だった。
エムエスクイーンは互角のスタートから最初のコーナーで先頭に立ち、主導権を取ってマイペースの逃げ。2番手にはアップショウ、ヤマノミリアン、リードメロディーと、前走で同じレースに出ていた馬が続いた。とはいえ、それらはエムエスクイーンに大差負けを喫している馬たち。そしてこの日もまた、3コーナーあたりから置き去りにされる形になった。
最後の直線はエムエスクイーンが独走。2秒2もの差がついた2着には、2番手を進んだアップショウがそのまま残り、外枠のスタートからうまくインコースにもぐりこんだリードメロディーが3着に入った。
レース後は2着の丸野勝虎騎手も4着の加藤誓二騎手(オイコイケ)も「強いよ」と言って苦笑い。3着の加藤聡一騎手は「2着は欲しかったですね」と悔しそうに話し、パトロールビデオで自分の位置取りを確認していた。
エムエスクイーンを管理する竹下直人調教師によると「ゲート試験のときに破格の時計が出てビックリ。今井騎手はその数字をトラックマンから聞いて、しばらく信用していなかった」とのこと。今後は同じオーナーが所有する2歳牝馬、トリマゴラッキと出走レースが重ならないようにしていく予定だ。
そのオーナー、森哲さんは、表彰式が終わってしばらく経っても興奮冷めやらぬという表情をしていた。「この馬は昨年のオータムセールで、自分で見て、いい馬だなと思って買いました。台付け価格が200万円のところ250万と声をかけたら競ってくる相手がいて、でもあきらめずに手を上げて落としたんです(税抜き310万円で落札)。だから本当にうれしいんです。自分が選んだ馬ですから」
エムエスクイーンの次走は兵庫ジュニアグランプリJpnⅡの予定。森さんとしては、そこで力試しをして冬場は休養に充て、来春の大舞台へという青写真を描いているそうだ。
それにしても勝ち時計の1分43秒6は、単純な比較はできないものの、昨年の優勝馬サムライドライブが記録したものより1秒3も速い。その時計は、この日の最終レースに行われた古馬B1クラスの勝ち時計と同一で、前回の開催との比較では、この時計より速かったのは古馬オープンの1レースだけだ。エムエスクイーンはこれからどんな走りを見せてくれるのだろうか。5年前の覇者リーダーズボードは兵庫ジュニアグランプリJpnⅡで3着だったが、この馬にはそれ以上を期待したいところだ。
取材・文:浅野靖典
写真:早川範雄(いちかんぽ)
コメント
デビュー戦を勝ったときから期待できる手応えがありましたし、今日もハミをしっかりと取ってくれて、あとは馬なりという感じでした。まだまだ伸びる余地があると思うので、これからは全国区に出て行きたいですね。今日は自分自身が久しぶりの重賞勝利だったので、とてもうれしく思っています。
9月にJRA認定戦を勝って、そこからこのレースまで間隔が空いてしまうので、前走を使って中1週になりましたが、問題なかったですね。体が柔らかくて気性が素直で、装鞍所でもパドックでもおとなしいところが長所です。このまま順調に進んで、来年のダービーを目指していければと思います。