毎年秋に行われる各地の2歳主要競走（計7レース）を短期集中施行するシリーズ（2008年創設）。2018年は10月14日から、11月20日まで、未来を期待される優駿たちの戦いが繰り広げられます。 　3歳馬によるダービーシリーズ同様、各地の主要競走が短期間で楽しめる贅沢感や、先々への期待感を醸成できることが、このシリーズ最大の魅力。また、11月以降のダートグレード競走（11/1・門別競馬場・北海道2歳優駿、11/28・園田競馬場・兵庫ジュニアグランプリ、 12/19・川崎競馬場・全日本2歳優駿）への期待感を高めることも期待されます。 　また、当ページでは、6月末から各地で行われる2歳重賞をピックアップしてリポート。2歳馬たちの戦いにどうぞご期待ください。

　南関東の2歳重賞レースも、いよいよ鎌倉記念からスタート。地方全国交流のこのレースには、北海道から3頭の出走もあったが、今年は船橋生え抜きで2戦2勝と負けなしのミューチャリーが主役だった。ここまでの勝ちっぷりもすばらしく、未知の魅力が買われて単勝1.9倍と断然人気に支持されていた。
　普段からテンションの高い馬で、初輸送や初コースなどをクリアできるのか、レース前から陣営も懸念しており、馬体重も10キロ減らし、デビュー以来最も軽い461キロ。「2歳馬だけにいろんなことがあるし、思っていたよりも体重を減らしていたので心配でしたが、信用しきれていなかった自分が恥ずかしいです。僕が心配するまでもなく、素直にこの馬の能力の高さには驚きました」とコンビを組んだ御神本訓史騎手も脱帽していた。
　ミューチャリーの新馬戦はスタートが今ひとつながら早めに2番手から。2戦目はスタートは五分に出るもダッシュがつかずに後方から追走。しかし、この鎌倉記念はまずまずのスタートを切り、道中は3番手内めを追走。
　大井のカンゲキが先頭で進めていたが、2番手につけていた北海道のリンゾウチャネルが3～4コーナーで先頭に代わると、すかさずミューチャリーも上がっていき、最後の直線では並びかける間もなく一気に先頭に立った。後続をグングングングン突き放していき、最後はほぼ馬なりだったが、2着のリンゾウチャネルに6馬身もの差をつける圧勝。
　勝ちタイムはレースレコードの1500メートル・1分33秒6（良）。快速馬として名をはせた川崎のエスプリフェザントの1分34秒0を0秒4も上回るタイムで、14年ぶりの更新。他陣営からも、「強すぎる」「時計が速すぎる」という言葉が口々に出ていたのも印象的だった。
　ミューチャリーは父がパイロ、母が中央未勝利から北海道で走っていたゴッドビラブドミー、母父はブライアンズタイムという血統の牡馬。これで無傷の3連勝を飾り、重賞ウイナーとなった。
　「能力試験の時からスピードのある馬でしたが、前回のような長くいい脚を使えるし、今日は弾けるくらいの瞬発力ある脚も出してくれたので、脚色に幅があるのもわかりました。適応能力がすごく高くて賢い馬ですね。今日勝てたことはミューチャリーにとっても僕にとってもいい財産になりました」（御神本騎手）。
　この後は馬体回復のためにひと息入れるそうだが、その回復次第によっては全日本2歳優駿JpnⅠも視野には入れていきたいそうで、現時点では未定とのことだ。「これからゆっくり使っていきながら、強い馬に育てていきたい」と矢野義幸調教師も言っていて、ミューチャリーにどんな未来が待っているのだろうか。重賞ウイナーを次々と輩出する船橋から、また可能性にあふれる楽しみな生え抜きが出現した。