勝ち馬には楽しみな無敗馬も
内国産ダート種牡馬が活躍
2018年12月19日
昨年の勝ち馬には地方競馬指定強化馬も
まずは昨年(2017年)の未来優駿各レース勝ち馬のその後をたどってみる(成績は12月5日現在)。
3歳になって活躍が目立ったのは、なんと言ってもゴールドウィング賞(名古屋)の勝ち馬サムライドライブだろう。5月の駿蹄賞(名古屋)までデビューから負けなしの10連勝で、重賞は7連勝。東海ダービーで初の敗戦(2着)を喫したが、秋には秋の鞍(名古屋)で重賞8勝目とした。
サッポロクラシックカップ(門別)を制したソイカウボーイも期待に違わぬ活躍だ。続く兵庫ジュニアグランプリJpnⅡ(園田)で3着と好走し、この年度から始まった『地方競馬強化指定馬』に選ばれた。3歳になって一時船橋に移籍したが、北海道に戻ったあと園田に遠征して楠賞を制している。
デビュー7戦目での初勝利が兵庫若駒賞(園田)だったトゥリパは、まさに穴馬というべき活躍を見せていて、10番人気でのじぎく賞(園田)を制した。それが3歳になっての初勝利で、ここまで通算2勝はいずれも重賞というめずらしい成績を残している。
鎌倉記念(川崎)を勝ったリコーワルサーは、その後勝ち星こそないものの羽田盃(大井)2着、10月30日の3歳馬による準重賞スターバーストカップ(大井)でも2着と、世代のトップクラスで活躍。古馬初対戦となった勝島王冠(大井)でも3着と好走を見せた。
若駒賞(盛岡)を勝ったニッポンダエモンは、3歳になって水沢で2戦したあと北海道に移って北斗盃5着。ホッカイドウ競馬のシーズン終了後には再び岩手に戻っている。
そのほか、兼六園ジュニアカップ(金沢)のフウジンは、3歳から大井に移籍して3歳特別戦で2着が最高という成績。九州ジュニアチャンピオン(佐賀)のキングランシーンはその後勝ち星がなく、6月を最後に出走していない。
デビューから無敗の連勝馬も
九州ジュニアチャンピオン
九州ジュニアチャンピオン(佐賀)は6番人気の牝馬ローズカラーが逃げ切った。ただその後の2戦は苦戦している。地元デビュー馬限定戦のため、2歳馬のレベルが高いホッカイドウ競馬やJRAからの移籍馬は出走できず、一昨年の勝ち馬スーパーマックスこそ、その後に佐賀と高知の“ダービーを”制するなど活躍したが、昨年のキングランシーンがそうだったように、勝ち馬がその後につながらないことも少なくない。
若駒賞
同日に行われた若駒賞(盛岡)は、中団から徐々に位置取りを上げたニューホープが直線で抜け出した。3番人気ではあったものの、出走8頭中3頭いた北海道からの転入馬で、そのうち唯一JRA認定を勝っているのがニューホープだった。ただその後出走を希望していた南部駒賞が開催取止があって実施されなかったのは残念だった。
鎌倉記念
鎌倉記念(川崎)は、ミューチャリーが2着に6馬身差、レースレコードを更新する圧巻のレースを見せた。2着のリンゾウチャネルがその後、兵庫ジュニアグランプリJpnⅡで直線まで逃げ粘って5着、4着のヒカリオーソが平和賞を勝っているだけに、ミューチャリーには全国区での活躍がおおいに期待できそうだ。
兵庫若駒賞
兵庫若駒賞(園田)は、7番人気のテンマダイウェーヴが好位の内からゴール前で差し切った。レースハイライトにもあるとおり、このレース3年連続で未勝利馬の勝利。それ以前のこのレースの勝ち馬を2015年から遡ると、マイタイザン、トーコーヴィーナス、トーコーポセイドン、エーシンクリアー、メイレディ、オオエライジンと、世代のトップを争うどころか全国区での活躍馬もいる。そういう意味では近年、兵庫の2歳戦線の流れが変わって来ているのかもしれない。とはいえ一昨年のナチュラリー、昨年のトゥリパも、その後に重賞勝ちがあるように、未勝利馬がたまたま重賞を勝ってしまった、ということではなさそうだ。
ゴールドウィング賞
ゴールドウィング賞(名古屋)は、エムエスクイーンが大差圧勝で、デビューから6連勝。レース後は兵庫ジュニアグランプリJpnⅡという話もあったが、結局は同じ日の地元戦を使って連勝を7に伸ばした。2着との着差がもっとも少差でも7馬身だから、まさに底を見せていない。あとはダートグレードにどのタイミングで挑戦するのか、ということが注目だろう。
サッポロクラシックカップ
地震の影響で1週繰り下げて行われたサッポロクラシックカップ(門別)は、エムオータイショウが2番手から直線で前をとらえて5馬身差の圧勝。デビューが7月26日と、門別デビュー馬としてはやや遅く、ここに来て頭角を現した。デビュー2戦目で2着に負けただけと底を見せていない。さらにその後、地震の影響で2カ月先送りとなって実施されたイノセントカップも制して重賞2連勝。デビューから1200メートルのみを使われているだけに、今後は距離延長がどうか。
兼六園ジュニアカップ
兼六園ジュニアカップ(金沢)は、逃げて他馬の厳しいマークを受けたものの、それらを振り切ってアイオブザタイガーが6馬身差の圧勝。デビューした門別では未勝利戦を勝ったのみだが、JRA認定のフレッシュ/アタックチャレンジは6戦して2着4回、3着2回。しかもいずれも勝ち馬との着差はコンマ2秒以内と、運がなかったとしか言いようのない成績。しかし金沢ではその後に金沢ヤングチャンピオンも制し、3連勝はいずれも2着に1秒以上の差をつける圧勝。ここでも北海道デビュー馬の層の厚さを見せつけられた。
内国産ダート血統の充実
血統面では、今年の勝ち馬はかなり特徴的なので、レース順に勝ち馬と、その「父×母の父」を一覧にしてみた。
ローズカラー:ローズキングダム×ダンスインザダーク
ニューホープ:フリオーソ×ディープスカイ
ミューチャリー:パイロ×ブライアンズタイム
テンマダイウェーヴ:カネヒキリ×キンググローリアス
エムエスクイーン:バトルプラン×タイキシャトル
エムオータイショウ:スウェプトオーヴァーボード×タヤスツヨシ
アイオブザタイガー:スマートファルコン×キングカメハメハ
ローズカラーのローズキングダムだけは、これが2世代目の産駒でまだ評価が定まっていないが、それ以外は父も母の父も、いかにもダートでこそという組み合わせだ。アイオブザタイガーの母の父キングカメハメハは芝の一流馬を多数輩出しているが、ダートでもGⅠ/JpnⅠ・10勝のホッコータルマエを出した。
父で特徴的なのは、フリオーソ、カネヒキリ、スマートファルコンが、日本のダートでチャンピオン級の活躍をして種牡馬になったということ。一方で母の父のディープスカイ、タイキシャトル、タヤスツヨシなどは、自身は芝GⅠの勝ち馬だが、産駒にはダートの活躍馬が多いということ。
つまり、これら母の父の時代は、まだダート馬は種牡馬として活躍できるような環境にはなっていなかったが、フリオーソ、カネヒキリ、スマートファルコンの世代になってようやくダートの一流馬が種牡馬としても活躍できるような時代になったということだろう。
そういう意味では、地方と中央の交流が盛んになってから20年以上が経過し、ようやく日本のダート競馬が血統面まで含めて充実してきたといえそうだ。
ちなみに12月5日現在の地方2歳種牡馬ランキングでは、エーデルワイス賞JpnⅢを制したアークヴィグラスを出したサウスヴィグラスが1位。2位フリオーソ、3位パイロとなっている。
文:斎藤修
写真:いちかんぽ