ダートグレード競走を中心としたレースハイライトや、シリーズ競走等の特集、各種連載など盛りだくさんの情報をお届けします。
font
標準

クローズアップ

当コーナーでは、地方競馬に関するイベントや注目レース等の気になる話題を写真と共にご紹介します。

第18回JBC総括

初めてJRAを舞台にしたJBC開催
地方馬はキタサンミカヅキが健闘

2018年11月4日 JRA京都競馬場

ヴァーミリアン展示、的場文男騎手参戦

 土日とも好天に恵まれた京都競馬場。京阪淀駅から直結するステーションゲート下の放牧馬房では、2007~09年にJBCクラシックを3連覇したヴァーミリアンの展示が行われていた。あとで詳しく触れるが、JRAのGⅠが行われる日と同じように多くのファンが来場したJBC当日、ヴァーミリアンの放牧馬房には人垣ができて長蛇の列。そんなファンの喧騒にも、16歳になったヴァーミリアンは我関せずという様子でおとなしかった。
 近年のJBCでは地元グルメの販売が定番となっているが、4コーナー側のイベントスペースでは『おあがりやす京都2018』が開催。和牛、京野菜、日本酒、ビールなど、京都産のグルメが堪能でき、また販売されるテントがズラリと並んだ。なかでも牛肉グルメのテントは長蛇の列ができていた。遠方から遠征するファンには、競馬場以外の観光をする時間がないという人も少なからずいるはずで、JBC開催では定番となった、競馬場での地元グルメ販売はうれしい。
 ステーションゲートから直結したビッグスワン2階テラスでは、JBC3競走の馬券購入者を対象に、JBCグッズ(いずれもJBCオリジナルのフリースジャケット、キャップ、キャップ、モバイルチャージャー、ネックウォーマーなど)が当たる抽選会が行われ、これにもかなりの行列ができていた。また抽選会場脇に設置されたモニターでは、過去のJBC競走のレース映像が流されていた。さすがに今年で18回という歴史を重ねると、立ち止まって過去のレースに見入っているファンも多かった。
 初めてJRAでの開催となったJBCで、ひとつ注目となったのは、的場文男騎手の参戦だ。JBCではクラシックのシュテルングランツへの騎乗だが、的場騎手は第5レースの新馬戦にも騎乗馬を得た。父が大井の調教師だった矢作芳人調教師の管理馬。的場騎手がパドックで騎乗すると、まるでウェーブのように声援やカメラのシャッター音も円形のパドックを1周した。この日、的場騎手は62歳と1カ月28日で、JRAの最年長騎乗記録を更新。佐々木竹見さんの記録をまたひとつ塗り替えた。
 その第5レース。的場騎手はスタートこそ互角だったが、ダッシュがつかず8頭立ての最後方から。それでも4コーナー手前で大外からまくって出ると、直線を向いて先頭をとらえようかという見せ場をつくった。ファンへのアピールだけでなく、3番人気馬で3着と役目は果たした。
 時間は前後するが、大井出身の戸崎圭太騎手が第3レースを勝ってJRA年間100勝を達成した際の表彰セレモニーでは、「年間100勝達成!」のプラカードを的場騎手が持つという場面もあった。
 最終12レースに組まれたJBCレディスクラシックの発走前には、TCK大井競馬のトゥインクルファンファーレ隊がウィナーズサークルに登場。JRA関西のGⅠファンファーレ演奏は新鮮だった。レース前のファンファーレでは、これが一番盛り上がった。

■地方の舞台とは違う厳しい流れ

 初めてJRAの京都競馬場が舞台となったJBC3競走は、いずれもフルゲート16頭。地方からの出走は、Road to JBCの1着馬およびJBC出走馬選定委員会に選定された馬で、合わせて7頭までが出走可能。さらに選定順位が8番目以降の馬でも賞金順で出走することも可能だったが、10月17日にJBC出走馬選定委員会から発表された選定馬は、7頭を超えることはなかった。
 JBCクラシックは選定された3頭、カツゲキキトキト(愛知)、シュテルングランツ(浦和)、タガノゴールド(兵庫)が出走。JBCスプリントは5頭が選定されたが、そのうちマイタイザン(兵庫)が回避、キタサンミカヅキ(船橋)、ノブワイルド(浦和)、ラブバレット(岩手)、アンサンブルライフ(浦和)の4頭。JBCレディスクラシックも5頭が選定され、そのうちアルティマウェポン(北海道)が回避、ブランシェクール(大井)、ラインハート(大井)、ディアマルコ(高知)、ジュエルクイーン(大井)の4頭が出走した。
 JBCはこれまで、レディスクラシック、スプリント、クラシックという順番で行われてきたが、第10レースにスプリント、第11レースにクラシック、第12レースにレディスクラシックが組まれた。地上波などでの中継でメインとなり、馬券の売り上げも期待できる第11レースに、JBC3競走の中でメインとなるクラシックが組まれたということだろう。
 地方で行われるJBCでは、JRA所属馬の出走枠の関係で、出走頭数は地方馬のほうが多いことがほどんどだが、今回地方からの出走は前述のとおりで、出走馬の多くがJRA所属馬。さらに馬場の状態も地方とは違って、レースの流れは厳しいものとなった。
 JBCスプリントでは、オーバルスプリントJpnⅢを逃げ切ったノブワイルドが、逃げたマテラスカイと差のない3番手を追走したが、直線失速して残念ながら最下位。ゴール前差し切ったのは8歳のグレイスフルリープで、JBC3競走の中で地方馬ではもっとも期待の高かったキタサンミカヅキが3着と健闘した。とはいえ“健闘”というのは我々外からの見方で、実績的にも勝つつもりで臨んでいた関係者にしてみれば健闘ではなく悔しい3着。それはレース後の森泰斗騎手の表情からもうかがえた。「軽いダートが堪えた感じで、いつもより進みが悪かった」ということでは、やはり地方の舞台とは勝手が違ったようだ。
 JBCクラシックでは、的場騎手のシュテルングランツが内目の3番手につけたが、その見せ場も向正面の半ばまで、結果的に最下位での入線となった。地方馬の最先着は9着のタガノゴールド。勝ったのは、ここまでの重賞8勝がすべて地方の舞台だったケイティブレイブで、JpnⅠ・3勝目となった。


 地方の舞台ともっとも違いを感じたのがJBCレディスクラシックだった。ディアマルコは2年連続で前哨戦のレディスプレリュードJpnⅡに出走していて、ともに8着。勝ち負けには至っていないものの、レースにはしっかり参加していた。それが今回、馬場の違いもあったのだろうが、向正面では縦長の最後方追走となって、流れにまったく乗れなかった。地方最先着は、ジュエルクイーンの9着。直線一騎打ちとなったのは、地方のダートグレードを勝っている2頭で、ダートグレード3勝という実績のアンジュデジールが、ラビットランをアタマ差で競り落とした。

■売上は昨年大井の4倍強

 JRAではかつてジャパンカップとジャパンカップダートを同日に開催したことが1度だけあった(2004年)が、1日にGⅠ級(JpnⅠ)3レースを実施するのは初めて。それで興味深かったのは、勝利騎手インタビューだ。
 JBCスプリントをグレイスフルリープで勝ったクリストフ・ルメール騎手は「JBCで乗る馬ぜんぶ、応援してください」とインタビューを締めた。
 続いてJBCクラシックをケイティブレイブで勝った福永祐一騎手は「スプリントをジョッキールームで見ていて『ルメール、ハンパねえ』ってみんなで騒いでいたので、これは誰かが止めるしかないと思っていて、自分がなんとかストップしたいという思いで乗りました」と話した。
 そしてJBCレディスクラシックをアンジュデジールで制した横山典弘騎手は「最初はルメール、で、関西の福永君、関東のジョッキーもここにいるぞー!って感じですか」と興奮気味に話した。
 大レースが複数続けて行われるということでは、ジョッキーたちも気分的に盛り上がっているということが伝わってくる、いいシーンだった。
 JBC当日の京都競馬場の総入場人員は38,865名。京都競馬場のGⅠ開催日の入場人員を見ると、昨年のマイルチャンピオンシップ=34,330名、今年の天皇賞・春=69,308名、秋華賞=44,590名、菊花賞=55,059名、そしてJBC翌週のエリザベス女王杯=48,775名。連休中(4月29日)の天皇賞・春や、菊花賞はさすがに多いが、マイルチャンピオンシップや秋華賞とあまり変わらない集客があった。
 そしてJBC3競走の売上は次のとおり。

  JBCスプリント:39億3487万4700円
  JBCクラシック:75億2690万4700円
  JBCレディスクラシック:42億6908万9200円
  JBC合計:157億3086万8600円

 これまでJBC1レースの売上最高額が、昨年大井のJBCクラシックの約18億1千万円で、昨年の3競走合計額は約36億5千万円。JBCクラシック、合計額ともに4倍強という数字は、さすがにJRAのファン層の規模の違いを思い知らされた。
 ちなみに2011年に震災の影響でマイルチャンピオンシップ南部杯が東京競馬場で行われたときの売上が約70億3千万円。南部杯が3連休の月曜日だったことなどを考えると単純な比較はできないものの、JpnⅠが3レースあってのメインが約75億2千万円はそこそこ売れたと考えるべきだろうか。
 ただこの10月に同じ京都で行われた秋華賞の約149億7千万円、菊花賞の約184億5千万円と比較すると、大レースを1日に複数実施では、やはり売上が分散するということはありそうだ。
 東京開催となった2011年の南部杯には震災復興という意味合いがあり、売上の一部が岩手競馬や被災地に拠出されたが、今回は地方競馬側にそうした見返りがないことは、【地方競馬ネット会議室(1)】の塚田理事長インタビュー・前編(https://news.netkeiba.com/?pid=column_view&cid=40955)にもあったとおり。そこには「今回1度JRAさんにお願いすることによって、JRAネット投票のお客様とか、他のお客様にJBCの存在が広まって、その結果、翌年からわれわれに返ってくるものがどれだけ大きいか、こういうところで判断するようになった」ともある。
 来年、第19回JBCの舞台は、初めての浦和競馬場。今回限りとされているJBCのJRAの開催を経て、今後のJBCがさらに盛り上がることを期待したい。


取材・文:斎藤修
写真:いちかんぽ

バックナンバー

2018年度の記事一覧