特集
3歳秋のチャンピオンシップ 2018
3YO AUTUMN CHAMPIONSHIP
本シリーズは、各地の3歳主要重賞競走を戦った有力馬が11月に実施されるダービーグランプリへと集結し、地方競馬の秋の3歳王者の座を争うもので、以下のカテゴリーに応じてボーナス賞金(馬主)が設けられています。
今年は新たに「園田オータムトロフィー」が対象競走に加わり、またカテゴリーDとしてJBC競走への出走もボーナス賞金の対象となりました。
なお、昨年は複数のカテゴリーの競走とダービーグランプリに優勝した場合は、高い方のボーナス賞金が適用され優勝回数は考慮されませんでしたが、今年は1,000万円を上限に、条件を満たすごとに200万円加算されることとなり、ボーナス賞金の面でも充実化が図られております。
充実の秋、成長の秋、飛躍の秋など競走馬にとって大きな意味合いを持つ「3歳秋」を舞台に繰り広げられる熱戦にご期待ください。
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ダービー馬を相手に粘り腰発揮 無敗のままダービーグランプリへ
不来方賞は第50回を数えた。今年度行われる岩手競馬の重賞では、岩鷲賞と並んでもっとも伝統があり、第38回の岩手ダービーダイヤモンドカップや、11月に第31回目を迎えるダービーグランプリと並んで3歳三冠路線を形成する中でも、断然“格の重み”を感じさせるレースである。
岩手ダービーダイヤモンドカップを勝ったチャイヤプーンは、その後船橋へ移動。今年から南関東格付がS1に昇格した戸塚記念に挑戦。南関東の重賞路線を戦ってきた強豪を相手に、見事勝利を収めた。そして再び水沢へ帰厩、今度は岩手3歳三冠を目指し、単勝1.3倍の1番人気としてここに登場した。
2010年に現在の3歳三冠が確立してからは、8年間で4頭が岩手ダービーダイヤモンドカップと不来方賞の二冠を達成。特にここ2年はエンパイアペガサスとキングジャガーが強い勝ち方を見せており、チャイヤプーンも岩手ダービーダイヤモンドカップ同様の強さを見せてくれると考えるのが自然だろう。
岩手ダービーダイヤモンドカップと不来方賞には約4カ月の間隔があり、その間岩手にはJRAや各地から多くの転入馬が加わる。そのため今年、岩手ダービーダイヤモンドカップを走って、不来方賞にも出走した馬は4頭だけ。2歳時から岩手で走り続けてきた馬たちには一定の力関係が成り立っており、この力関係を覆すことはほとんど見られないのだが、今年はチャイヤプーンと未対決でキャリア4戦4勝の馬が2番人気に推されていた、サンエイキャピタルである。
サンエイキャピタルに初騎乗となった山本聡哉騎手は「スローペースに落とされるよりは、自分で前へ行った」と逃げの手を選択。最後の直線まで緩みのない、ほとんどが200メートル12秒台のラップは、自分のペースとはいえ2000メートル戦としては速い流れ。一方チャイヤプーンは向正面半ばで3番手、4コーナーでサンエイキャピタルの直後にとりつき、最後の直線はマッチレース。一時はチャイヤプーンが抜け出すかに見えたが、サンエイキャピタルがゴール寸前で粘り腰を見せクビ差の差し返し。5戦全勝で不来方賞優勝という偉業を達成した。
サンエイキャピタルは1歳時の北海道サマーセールで高額取引され、デビュー前から大きな注目を集めた馬。新馬戦は期待通りに快勝したが、その後骨折が判明し、長期の戦線離脱を余儀なくされた。
今季も実戦への復帰は遅れたが、約11カ月ぶりのウイナーカップで出遅れながらも大まくりを決めて優勝。その後2走はまったくの楽勝となり、不来方賞を迎えていた。ウイナーカップ(1400メートル)優勝時に瀬戸幸一調教師は「これから秋に向けて、距離を延ばしていかねば」と、経験不足を懸念していたが、初の2000メートル戦をまったく問題にしなかった。
2着のチャイヤプーンは不完全燃焼の部分があったのかもしれないが、良馬場の2000メートル戦で2分6秒0の決着なら、負けてなお強しと見るべきだろう。ダービーグランプリはここ5年連続して遠征勢の優勝が続いているが、今年は岩手所属馬にもチャンスがあるという期待の持てる不来方賞になった。
取材・文:深田桂一
写真:佐藤到(いちかんぽ)
コメント
出脚が良かったので、スローペースに落とされるより、自分で前へ行きました。チャイヤプーンがどこにいるのかは分かりませんでしたが、4コーナーでは近くにいるだろうと想定して、早めのスパート。直線では一旦前に出られましたが、経験がないくらいの根性で鳥肌が立ちました。
ビックリしました。逃げにこだわらず、マークされても自分の競馬に徹してくれればと思っていました。直線は一瞬ダメかと思いましたが、差し返してきて力が入りました。初めて競り合った競馬となり、力があることが証明された。次走ダービーグランプリも狙いたいですね。