好スタートからマイペースの逃げ
人気馬を完封しさらなる飛躍期待

　晩秋の雰囲気漂う金沢競馬場。午前中に降っていた雨はお昼を過ぎた頃に止み、メインレースの時間帯は太陽も顔を覗かせた。しかし、馬場コンディションは水の浮いた不良馬場。もともと先行有利な金沢コースではあるが、1レースからほとんどが逃げ切り勝ちという極端な馬場状態となっていた。
　未来優駿2017の最終戦は、兼六園ジュニアカップ。1番人気は北海道から転入2戦目のノブイチだ。北海道時代は5戦1勝、2着3回と堅実な成績を残し、金沢への転入初戦ではきっちりと勝利を飾った。そんな実績が評価されてか単勝2.7倍という支持を受けた。対戦比較からも実績上位は、金沢プリンセスカップの勝ち馬シオジスター。今年は4頭出しで、このレース4連覇を狙う金田一昌厩舎の筆頭格だ。前走は牡馬相手に逃げ切り勝ちを決めていて、単勝3.6倍。そのシオジスターが勝ったレースで2着だったフウジンは今回1番枠を引いた。先行脚質とこの日の馬場状態を考えると注目を集めるのは当然で、単勝3.8倍と、この3頭が人気の中心となった。
　ゲートが開き、注目の先行争い。外枠のカイジンファルコンやシオジスターが押しながら行きたい構えを見せたが、好スタートを切ったフウジンが最内から楽に先手を取った。2番手にカイジンファルコン、3番手にノブイチがつけ、その後ろにシオジスター、カトリーヌエミューが続いた。
　3コーナーあたりでフウジンがリードを広げにかかった。ノブイチが2番手に上がり、向正面では中団の内を追走していたエムザックヒーローが3番手に上がっていた。そのまま押し切りを図るフウジンに、最後はノブイチとエムザックヒーローも伸びてはきたが並びかけるまでには至らず、フウジンが1馬身差で逃げ切り勝ちを決めた。
　「これまでのレース映像を見て、逃げ馬の後ろにつけてレースを進めようと考えていたのですが、スタートが良かったので逃げました」と初コンビの佐藤友則騎手。これまではゲートの中で動いてしまい後手を踏んでしまうことがあったようだが、今回は最内枠で抜群のスタートを切れたことが勝利に大きく繋がったようだ。「2コーナーでリラックスしてくれたので、勝てるなと思いました」と佐藤騎手が語ったように、着差以上に強い勝ち方だったといえるだろう。
　注目を集めていたノブイチは2着に敗れたが、最後は持ち味の末脚を見せた。「勝ち馬とは3～4コーナーの手応えが全然違いました。でもこの馬はもまれても大丈夫ですし、他の馬たちと違って注文のつかないタイプ。距離が伸びてもいいですし、次はチャンスがあると思います」と中島龍也騎手は振り返った。
　2着とはクビ差の3着だったエムザックヒーローも見せ場十分だった。主戦の吉原寛人騎手は、「万全な状態で使えなかったのは残念でしたが、馬群の中でも我慢してくれたのは成長の証ですね。今後につながる競馬ができました。次は逆転を狙います」と前向きに語った。
　この後、金沢競馬の2歳重賞は、11月26日の金沢ヤングチャンピオンを残すのみ。今回の多くのメンバーが再び激突することになりそうだ。1700メートルへの距離延長がどう影響するのか、そしてこの日の経験がどう活かされるのか、来年の石川ダービーを見据える上でも注目の一戦だ。