岩手競馬の2歳路線は昨年のロールボヌールのような傑出馬が1、2頭出てタイトルを独占、あるいは分け合うという形が多いのだが、今年はここまで波乱含み。1つめの重賞・若鮎賞は結果こそ1番人気のメジャーリーガーが優勝だが、直前まで人気を集めていたメーターがゲート内で暴れて負傷のため競走除外。ビギナーズカップはサプライズハッピーが優勝し、1番人気チャイヨーが3着。ジュニアグランプリは北海道勢が人気を集めたが、勝ったのは11頭立て10番人気のソロフライトで、サプライズハッピーは発走調教不十分のために再能力検査を課されていた。これら3重賞を経ての若駒賞は芝とダートの路線が合流、また遅れての上昇馬も加わって軸馬不在。単勝式10倍未満が5頭いる状況でゲートが開いた。
　ただ、前評判とは異なりレースは実質2頭の勝負。速い流れで飛ばす先行3頭の外へ砂を被らぬようにつけたメジャーリーガーと、これをマークする形になったサプライズハッピーの手応えが良く直線の争いに。サプライズハッピーの山本聡哉騎手が「パーフェクトな競馬はできたと思うが、突き放された」というように、メジャーリーガーの関本淳騎手は後ろを待っての仕掛け。サプライズハッピーが並びかけそうになると、またひと伸びふた伸びと脚を繰り出して、いつまでも差が詰まらないような1馬身差のゴール。
　よくよく思い返すと、コースは芝だった若鮎賞がやはり同じような2頭の争い。上山競馬出身でキャリア34年目という岩手最年長ジョッキー、関本騎手の面目躍如となる一戦となり、ダート7連勝でほとんどすべてのタイトルを持って行った2008年ワタリシンセイキ以来の若駒賞となった。
　メジャーリーガーは渋く岩手で活躍馬を出す血統。母ストロベリーフィルは岩手で20戦2勝ながらその2勝はともに芝で、うち1つはJRAの馬相手に逃げ切り勝ち。その仔4頭はすべて岩手デビュー。メジャーリーガーの姉レディージャスミンも6勝中4勝が芝で、認定競走を勝ってJRA遠征も果たした。また、オパールカップとサファイア賞ともに2着は関本騎手の騎乗だった。
　メジャーリーガー自身もすでに若鮎賞を勝ち、ジュニアグランプリも3着と芝適性を見せており、ここで早くも“芝・ダートの両重賞制覇”を達成した。地方競馬でもその地その地でゆかりの血統があると思うが、この血統は岩手ならではの“盛岡芝で走る血統”のひとつといえる。
　後続が来たら反応し、先頭に立てば遊んでしまう。「2歳にしては大人の部分と子供のところがある」と関本騎手は表現したが、それはまだ成長の余地があるということ。今回の勝利で（5戦）4勝目、2歳世代を一歩リードすることになったが、これまでにないマルチプルプレイヤーの2歳チャンピオンといえる。この先どういうローテーションを選んでくるかにも注目したい。