今年の兼六園ジュニアカップは9頭立てで行われたが、そのうち5頭が金田一昌厩舎の管理馬で、2頭が中川雅之厩舎の管理馬。さながら団体戦のようなメンバー構成となったが、人気を集めたのは中川厩舎のヤマノカミとビューティ。なかでも北海道からの転入初戦となるヤマノカミが注目の的になっていた。
　対する金田厩舎はブライトエンプレスが3番人気に推されたが、上位2頭からはやや差がある数字。あとの6頭はいずれも単勝20倍以上で、順当ムードという雰囲気があった。
　しかし勝ったのは、3番人気のブライトエンプレス。1番人気のヤマノカミは2着で、ビューティは3着だった。
　この日の金沢競馬場は朝から重馬場の発表で、ところどころに水が浮いているコンディション。地元の専門紙の記者さんによると「普段よりさらに逃げ馬天国」とのことで、前半から多くのレースが逃げ切りで決まっていた。
　その状況ならば、先行力がある馬は主導権を取りたいところで、その筆頭となるのが過去に逃げて3勝以上を挙げていたブライトエンプレスとビューティ。ヤマノカミは門別競馬場で常に差し脚を見せていたという成績で、過去の3着内率は100％。その脚質を加味してか、大半の専門紙の本命印はヤマノカミに並んでいた。
　そして展開もそのとおり。勢いよくゲートを飛び出したブライトエンプレスが先頭に立ち、1コーナー手前でビューティがその外に並びかけていく。それでもブライトエンプレス鞍上の平瀬城久騎手はビューティに先頭を譲らず、まったく並んだ状態で向正面を進んだ。
　そうなると有利になるのは、5番手あたりから逆転を狙うヤマノカミ。しかしながら、向正面の中央付近から佐藤友則騎手が前に進めと促しても、なかなかその差が詰まっていかない。それを尻目に前の2頭の併走は変わらず続き、しかし最後の直線入口ではビューティが内外に蛇行して脱落。代わってようやく加速してきたヤマノカミが、勝利を狙える位置まで上昇してきた。
　ブライトエンプレスにしてみれば、道中で絡んできた敵を振り払ったところ、また新たな敵がやってきたという形。それでも水分を多く含むインコースを通って、最後まで粘り通してみせた。
　平瀬騎手は引き揚げてくるなり「なんとかもってくれました」と、ホッとした表情。対する佐藤騎手は「なんか、前の馬を交わしてくれないという感じなんですよね。そういう性格なのかなあ。それでも逆転できると思ったんですが……」とのこと。今後、ヤマノカミは11月29日に1700メートルで行われる、金沢ヤングチャンピオンを目指していく様子だ。
　一方、勝ったブライトエンプレスは「水沢のプリンセスカップに申し込んでありますよ」と、金田調教師。同じレースに出走していたジュエリーハンターなども申し込んであるそうで、やや入れこむ面があるだけに、1頭で遠征するのは避けたいところだろう。
　しかし厳しい展開を克服してつかんだ勝利には、高い価値がありそう。昨年は同じ厩舎、同じ騎手で制したアロマベールがこのレースを飛躍の礎にしたが、ブライトエンプレスにもまた、将来への期待がかかっている。