競り合う場面がないままの楽勝
距離経験も積んでさらなる高みへ

　12頭揃った九州ダービー栄城賞に続く、ダービーウイーク第2弾の岩手ダービーダイヤモンドカップは6頭でゲートが開いた。単勝1.0倍と断然の人気を集めたのはロールボヌール。デビューからここまで5戦5勝、2歳時の若駒賞と南部駒賞圧勝で、グレードレース出走経験がないまま、全国レベルで高い評価を受けるまでになった。留守杯日高賞を名古屋所属で勝ち、そのまま古巣水沢へ戻っていたホレミンサイヤは関東オークスJpnⅡへ。また2日前に芝2400メートルの3歳重賞サファイア賞が組まれたこともメンバー分散の要因となり、岩手ダービーには当初からエントリー馬が少なかった。2歳路線から常にナンバー2の存在であり、トライアルのやまびこ賞を大差勝ち、唯一のライバルと目されていたスペクトルまでもが直前回避。さらに1頭が出走取消となっての少頭数のレースは、それがすでにロールボヌールの強さの証明であった。
　距離2000メートルは全馬が初距離。過去においてもこのレースや不来方賞で少なからず波乱の起きているコースだけに慎重なレース運びだが、ロールボヌールは自分のペースで先頭に立ち、一列棒状。3コーナーの坂の下りから若干ペースを上げて、最後の直線は馬なりで後続を突き放した。千葉幸喜調教師も「無事に来ましたから、派手なパフォーマンスはいらない」と。着差は大差にこそならなかったが、2歳時の重賞より楽と思えるメンバーで、競り合うシーンがまったくないままゴールを駆け抜けた。
　岩手競馬には地方交流競走の『ダービーグランプリ』があるが、地元3歳馬の“ダービー”といえば従来は『不来方賞』がその役割を負っていた。ダイヤモンドカップが距離2000メートルとなったのは、“岩手ダービー”のサブタイトルがついての2年目、2007年から。よってあまり時計比較などは参考にならないが、千葉幸喜調教師は「距離は懸念材料だった」と気にしていたし、今後強い相手と戦うにあたっても「距離は一番の課題」としている。ひとまず距離の経験を積んだことは、収穫となったのではないだろうか。
　ロールボヌールは2歳時に全日本2歳優駿JpnＩ出走を目指したが、態勢整わず回避。また冬期間には南関東地区へ所属しての重賞挑戦も計画されたが、これも出走するまでに至らなかった。いずれも出走することが目的ではなく、好勝負を演じるために相当高いレベルでの仕上がりが求められたからこそと推測する。早期の交流競走出走への期待も高まるが、陣営はそれに向け確実なステップをと考えており、次走にはみちのく大賞典（6月21日）を目指すとのこと。この時期の3歳馬が古馬のビッグタイトルを制すれば、それだけでも十分に快挙なのだが、今からその先も、その先もと期待したくなるのがロールボヌールである。