強気に動いて人気馬を競り落とす
前年の雪辱を果たすダービー制覇

　ダービーウイークの2戦目は、岩手ダービーダイヤモンドカップ。有力候補だったロックハンドパワーの直前回避は残念だったが、菅原勲調教師の話では、「体調が整わなかったため、大事をとった」とのこと。将来が期待されている馬だけにじっくり立て直してほしい。そうなると当然注目を集めるのは、2走前のやまびこ賞でロックハンドパワーを破り、前走のはまなす賞も制したハカタドンタクだ。途中、単勝オッズが1.0倍の時間帯もあったほどで、最終的には1.3倍という断然の支持を集めた。そのほか今年は転入して間もない馬が多く、比較が難しいメンバー構成。名古屋から再転入し、2歳時にはロックハンドパワーに先着した実績もあるヴェルシュナイダーが単勝5.0倍で2番人気。3番人気は、やまびこ賞2着のハワイアンリゾートで単勝6.9倍と続いた。
　レースは、リュウノタケシツウが果敢に先手を奪い、後続を離してペースを作った。ハワイアンリゾート、ハカタドンタクは中団から、その後ろにヴェルシュナイダーが構え、人気馬は揃って中団から後方に控えての競馬となった。
　向正面に入って動きはじめたのはハカタドンタク。「このペースだと、前が残りそうだと思ったので」という山本政聡騎手は徐々に位置取りを上げていった。前では、2番手集団にいたコウギョウデジタルが先頭に立ち、ヴイゼロワンも続いて3～4コーナーに差し掛かった。
　直線入口ではヴイゼロワンが先頭に立ち、ハカタドンタクが外から迫って2頭の追い比べに。残り100メートルあたりで一瞬ハカタドンタクが前に出たが、ヴイゼロワンがもうひと伸びし、最後は1馬身半の差をつけて2000メートルの激戦を制した。
　ゴールの瞬間、「よっしゃー！」と大きなガッツポースで雄叫びをあげた高松亮騎手。「やった！やった！」と興奮しながら検量室前に戻ってくると、走り寄ってきた担当厩務員と共に拳を突き上げた。実は高松騎手、パドックで馬に跨った時に久しぶりに緊張していたという。ヴイゼロワンの状態の良さに「期待している自分がいた」からだ。そしてその勘は見事に的中した。
　一方、ハカタドンタクの山本政聡騎手は静かな表情で一番後ろから戻ってきた。「今までよりいきっぷりが悪く、最後は止まってしまいました。このハードスケジュールでよくがんばっているし、今日は相手を褒めるしかないです」と冷静にコメントした。
　ヴイゼロワンは北海道でデビューし、JRA認定新馬戦では現在南関東で活躍しているカイカヨソウ（東京プリンセス賞など重賞5勝）の2着という実績がある。2歳時には4戦（1勝）したのみで岩手に移籍。8カ月の休み明けだった前走を快勝したことで、陣営はこの馬の能力の高さを実感した。今回さらに状態がよくなり、自信を持って送りだしたという。
　そして、千葉幸喜調教師と馬主の大久保和夫さんといえば、昨年の岩手ダービーダイヤモンドカップ2着馬ロッソコルサの陣営だ。昨年はアスペクトとの一騎打ちに敗れ、悔しい思いをしている。それゆえ、ヴイゼロワンの今回の勝利には喜びもひとしおのようだった。まだデビューから6戦というキャリアからも、今後の成長が一層楽しみと関係者は語る。「この馬の最高の状態はまだ分からないんです。まだまだ未知な可能性を秘めていますよ」と千葉調教師。岩手ダービー馬として、これからどんな活躍を見せてくれるのか期待が膨らむばかりだ。