みずからレースを作って完勝
目指すは頂点のダービー

　ダービーウイーク2011のラストを飾るのは、盛岡競馬場で行われた、岩手ダービーダイヤモンドカップ。震災の影響により、当初は競馬開催自体が危ぶまれたものの、多くの関係者の熱意と努力によって開幕が決定。無事にダービー当日を迎えられたことは、とても感慨深い。
　この日の主役は、なんといってもベストマイヒーローだろう。ここまでの成績は7戦6勝。唯一負けたのは2歳時の芝のジュニアグランプリだけで、先着を許したのは北海道のスクランブルエッグ（現在は船橋所属）。地元同世代相手には負けなしで来ている。すでに勝負付けが済んでいるメンバーばかりで、単勝1.0倍という圧倒的な人気に支持されたのも当然と言える。
　大外枠から飛び出したベストマイヒーローは、馬なりで先頭へと躍り出た。1馬身差でヤマトスバルが続き、淡々としたペースで進んだ。3コーナー手前からヤマトスバルがジリジリと差を詰めて来るも、ベストマイヒーローの菅原勲騎手の手は、手綱を押さえたまま動かない。直線を向いて初めて追い出されると、すかさず反応して後続を突き放し、ゴール前は流す余裕を見せて5馬身差の圧勝劇。道中ベストマイヒーローをマークし続けたヤマトスバルだが、最後の最後でスパルタンがこれを競り落として2着に入った。
　レース後のベストマイヒーローは、菅原騎手が鞍を外すとすぐに息が入り、まるで戦いの疲れを見せなかった。圧倒的な強さを見せつけ、陣営もさぞや喜んでいるだろうと思いきや、菅原騎手は開口一番「いつもの走りじゃない」と言って首を捻った。返し馬でテンションが上がってしまったことをしきりに気にしている様子だ。確かに、馬場入場と同時に目つきが変わり、スタンド前でＵターンする時には暴れるそぶりも見せていた。「気持ちが入り過ぎた。今のままでは、全国では戦えない。まだまだ課題があるのでいろいろ教えていきたい。この馬なら、乗り越えてくれるんじゃないかと思っている」。すでに目線は、この先のジャパンダートダービーJpnIを見据えているのだ。
　ベストマイヒーローは、昨年の覇者ロックハンドスターと同じ、馬主・千葉浩氏、菅原勲騎手、瀬戸幸一調教師というチームが育て上げている。瀬戸調教師は、「昨年のジャパンダートダービーは惨敗だった。戦うというより、勝負することさえできなかった。今年はもっと上位を目指したい。こんな時だからこそ、岩手から明るい話題を提供したい」と語った。
　あと1カ月。ジャパンダートダービーへと続く、厳しい道のり。ベストマイヒーローは、どんな成長を遂げるのか。新たな夢の始まりと共に、ダービーウイーク2011は幕を降ろした。