今年は全国的な例にもれず岩手県も猛暑に見舞われた。秋の盛岡開催がはじまったころはまだ夏日が続いていたが、先週の南部杯あたりを境に冷え込みが進み、この日は盛岡の山間部で今シーズン初の氷点下を記録。盛岡中心部でも5度台まで気温が下がり、秋らしい雰囲気の中で若駒賞が行われた。
　『未来優駿』シリーズに組み込まれた若駒賞は、南部駒賞、金杯（明け3歳1月）と続く、岩手の2歳ダート三冠路線の一冠目。JRA遠征を目指す芝路線組とメンバーが分散されて7頭立てとなり、ベストマイヒーローが単勝式1.5倍と断然の人気となった。
　ベストマイヒーローは前走、芝の重賞ジュニアグランプリでも人気を集めたが、馬場入りの時からイレこみが激しく、レースでも折り合いに苦しんで、フルに力を出し切れずに北海道の良血馬スクランブルエッグの差し切りを許し連勝ストップ。今年の岩手競馬は3歳や古馬の交流重賞でも遠征馬に多くのタイトルを奪われており、そのストッパーとして期待されていただけに、陣営のみならず周辺も大きなショックを受けていた。
　この日はその時ほどではなかったが、「レースになると気が入り過ぎ」（菅原勲騎手）と、やはり本馬場に入るとうるさい面を見せるようになり、菅原勲騎手は馬のスピードを無理に殺すことのないよう逃げの手を選択。速いペースでグイグイと飛ばしていった。ついて来るのは4戦4勝で2番人気のカミノヌヴォーだけだったが、ベストマイヒーローはこれを楽々と突き放して7馬身差でゴール。若駒賞が重賞になってからの歴代優勝馬のタイムを1秒以上上回り、昨年の同厩舎、同馬主であるロックハンドスターの勝ち時計も1秒8上回った。
　カミノヌヴォーも良く走っており、この走破時計も歴代のタイムを上回っている。こちらは8月の若鮎賞時にゲート内で暴れ、騎手負傷で競走除外。再度能力検査を課せられたあとの2走目で「まずはゲートを無事に出てから」と鈴木七郎調教師は慎重だったが、大きく出遅れることなくゲートを飛び出し、初めての距離でも2着を死守した。以下はバラバラの入線、7着まで全馬が単勝式の人気順にゴールへ入った。
　ベストマイヒーローは次走、水沢の南部駒賞へ向かう公算が高い。ここは地方全国交流重賞で、例年北海道や他地区からの遠征馬が参戦してくるレースだが、ここでの結果で岩手2歳馬は初めて評価を受ける。結果を出せば、さらに高いレベルの舞台へ……となる。今年は3歳馬ロックハンドスターで全国の強い相手と戦ってきた瀬戸幸一厩舎だけに、そのプランはすでに練られているものと思われる。