スーパースプリントシリーズ・トライアルの最終戦は2回目を迎える日本海スプリント。今年は東海から5頭、地元金沢から5頭の10頭で争われた(笠松のブレヴェストは疾病のため出走取消)。
東海勢と金沢勢の能力比較も難しいうえに、出走経験の少ない超短距離戦。さらに、昨年は内の軽い馬場を活かした逃げ切り勝ちだったが、馬場改修を実施した今年度は全体的に内の砂が深く、外差しが決まりやすい傾向にある。このような馬場が枠順や展開にどう響いてくるのか。パドックのファンからも「これは難解やなぁ」という声が聞こえてきた。
しかし終わってみれば、実績や距離適性が評価され1番人気に推された愛知のエイシンテキサスのスピードが一枚抜けていたという結果だった。
7枠9番のエイシンテキサスは、最内枠のメモリートニックとの激しい先行争いを制し先手を取り切った。「外枠が当った時は少し不安だったけど、レースを見ていると、内が深いぶん、終いに影響しているのが分かったので外枠で良かったです」(加藤聡一騎手)。3番人気の実績馬ゴーインググレートが大外から押して3番手まで上がり、ハナ争いに加われなかったサノラブやカラカ、2番人気のストーミーワンダーなどが後に続いた。
直線に入ると後続を突き放しにかかったエイシンテキサス。「4コーナーでは外のゴーインググレートだけだなと思っていた」(加藤騎手)とのことだが、その勢いは止まらず、3馬身差で逃げ切り快勝だった。外から伸びきれなかったゴーインググレートが2着、さらにアタマ差の3着に内を突いた4番人気のサノラブが入った。
ゴーインググレートの中島龍也騎手は「とにかくペースが速かった。3コーナーでようやく追いついたけどフワッとしてしまいました」と苦笑い。サノラブの米倉知騎手は「行くのには自信があったんですけどね、前が速すぎました」と振り返った。
ライバル騎手たちの言葉からも、とにかく速くて強いレースを見せつけたエイシンテキサス。ゴール前では加藤騎手のガッツポーズも見られた。その時の気持ちを聞くと、「あれは嬉しさよりも、良かったぁと、ホッとしたガッツポーズでした(笑)」と安堵の表情。「今日、馬に跨った時、仕上がってると確信しました。あとは自分次第だと、緊張していたんです」。というのも今年、岩手からの転入当初から「去年、園田FCスプリントを勝ったスピードのある馬なので、このレースを狙いたい」と加藤騎手が陣営に提案してきたそうなのだ。ここを見据えて調教も工夫を重ねてきたとのこと。さらには、坂口義幸調教師の重賞初制覇もかかっていた。加藤騎手自身、このレースには並々ならぬ気持ちで臨んでいたのだ。
近年、愛知の調教師リーディング上位に名を連ね、通算800勝以上も挙げている坂口調教師だが、開業から19年目、意外にも古馬オープンも勝ったことがなかったそう。ようやく掴んだ大きなタイトルに「全く実感が湧いてきません。この後、じわじわくるのかな」と、まだ信じられないというような様子だった。
「坂口先生の重賞制覇も達成できたし、去年、超短距離戦を制したエイシンテキサスの面目を保てて良いところを見せてあげられました。9歳馬ですがまだまだ楽しみです」と加藤騎手。馬を囲み、皆が誇らしげで嬉しそうな口取りのひと時は、若きジョッキーの強い想いが実った瞬間でもあった。
Comment
加藤聡一 騎手
3~4コーナーで早めに行ってセーフティリードを保てました。内容もイメージ通りでしたし、今日はレースの時間も遅くて涼しかったのも良かったので、いろんな条件がかみ合ってくれました。地元で勝ったレースもここに向けての自信になっていました。勝ちに行って結果を残せた重賞は初めてです。
坂口義幸 調教師
暑くなってきて体に影響が出始めてきましたが、今日の涼しい天候も味方してくれました。内が深い馬場ですし、メモリートニックより外枠というのも良かったです。1番人気になってびっくりしましたが、加藤騎手が一生懸命乗ってくれました。次走は馬の状態を見ながらですが、短距離を中心に使います。