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佐々木竹見元騎手がダートグレード各競走を“鉄人”の目線で鋭く解説!

2020年2月5日(水)

第105回 クイーン賞~川崎記念

クイーン賞 JpnⅢ

クレイジーアクセルは、最内枠から好スタート切って、マイペースでの逃げに持ち込みました。逃げる可能性もあったラインカリーナが競りかけてこなったので、楽な逃げになりました。4コーナーでは後続が迫っていましたが、前半に楽をしていたぶん、追ってからも伸びて直線で後続を振り切りました。枠順もよかったし、楽に逃げられたのが最大の勝因でしょう。

プリンシアコメータは3番手の絶好位を追走しましたが、最後はあまり伸びませんでした。先行した2頭とのハンデ差ということはあったかもしれません。

ラインカリーナは、クレイジーアクセルが主張したのを見て競りかけては行きませんでした。たしかに枠順的にはあそこから主張しても共倒れになってしまうのでしかたないのですが、半馬身くらいの差で競りかけていってもよかったと思います。馬がやや行きたがっていたところを抑え込んでしまったところもあるので、最後は伸びを欠いてしまいました。この馬もハナをとってマイペースなら能力を発揮しますが、抑えたぶん、かえって伸びませんでした。

1番人気だったアンデスクイーンは、道中の行きっぷりが悪く、今回は案外な結果でした。

全日本2歳優駿 JpnⅠ

勝ったヴァケーションは、あまり人気がなかったことで吉原騎手は思い切った騎乗ができたと思います。アイオライトにインペリシャブルが競りかけての前半はハイペース。縦長の中団で、砂をかぶっても問題ありませんでした。そして向正面での行きっぷりもよかった。勝因は4コーナーです。外を回さず内に進路をとりました。先に仕掛けたゴールドビルダーが直線を向くまで勢いがありましたから、そのうしろに進路ができて、直線を向いてから外に持ち出してうまく抜けてくることができました。最後はアイオライトに逃げ切られたかと思いましたが、残り100メートルくらいからの脚が素晴らしかった。吉原騎手はこの秋、南部杯を勝って、船橋のクイーン賞も勝って、その勢いもありました。

逃げたのは枠順でアイオライトでしたが、インペリシャブルに行く気で来られたのでアイオライトは引っかかるような場面がありました。さらに外から3番手にテイエムサウスダンもかかり気味に来ていたので、それで先行勢は厳しいペースになりました。アイオライトは3コーナーから後続を離しましたが、4コーナー手前か、4コーナーを回るまで、もう少し追い出しを我慢してもよかったと思います。それでも最後までよく粘りました。

ティーズダンクもゴール前では外からよく伸びてきました。4コーナーで大外を回ってきたので、勝ち馬との差はそのぶんです。ただ3、4コーナーでまくってくるときに馬に勢いがついていますから、あの場面では大外を回すしかありません。

東京大賞典 JpnⅠ

中央勢は前で5頭が固まって、オメガパフュームとノンコノユメはやや離れて中団。モジアナフレイバーはそのうしろからの追走で、結果的に前半は前を追いかけず中団を追走していた3頭、直線で脚を使える馬たちの決着になりました。先行勢は競り合って息が入るところがなく、厳しい流れだったかもしれません。

オメガパフュームのデムーロ騎手は、昨年も勝っていたこともあって自信を持って乗っています。浦和のJBCクラシックでもほとんど勝ったような内容で2着でしたが、やはり直線の長いコースが合っています。

ノンコノユメは惜しかった。4コーナー手前までぴったりラチ沿いを走ってきて、直線でもそのまま内、ロードゴラッソとゴールドドリームの間の狭いところをよく抜けてきました。もともと中央時代に実績のあった馬ですが、今回の2着はコース取りが大きかった。真島騎手の好騎乗でした。

モジアナフレイバーは、4コーナーを回るあたりでは、勝てるような手応えでした。確実に力をつけて、大井の生え抜きということでもたいしたものです。この馬も長い直線で終いの脚を生かせるコースが向いています。

川崎記念 JpnⅠ

勝ったチュウワウィザードは力が抜けていました。外枠だったので、ほかの馬の出方を見ながら、どこからでもという感じだったと思います。好位につけての抜け出しですが、よほどの不利でもない限り、どんなレースをしても勝ったと思います。

2着は地元のヒカリオーソでした。ジャンプするような感じのスタートで中団からの追走になりましたが、スタート直後はミューチャリーと同じような位置にいたので、行こうと思えば前に行けたと思います。それでもあえて控えるレースをしたのは、そういうパターンも選択肢として考えていたのではないでしょうか。今までは先行していましたが、中団から終いの脚を生かす形での2着。これまではあまりなかった展開のレースを経験して、さらに強くなる可能性はあります。今回はレースの流れ的にも控えて正解でした。昨年戸塚記念のあとにひと息入れて、馬体もふっくらとして、よくなりました。

逆にこれまで直線で末脚を生かす競馬で結果を残していたミューチャリーは、今回は2番手から。それでこの相手に4着はよく粘りました。

ハナに行ったケイティブレイブは6着。川崎の2100メートルでは1周目のスタンド前で流れが遅くなることがありますが、今回はそれほどペースが緩まず、それゆえ折り合いを欠く馬もいませんでした。ただそのぶん、逃げたケイティブレイブには厳しい流れになりました。

佐々木竹見(ささきたけみ)

元川崎競馬所属騎手。地方競馬通算7,151勝という世界歴代6位(当時)の勝ち鞍を挙げ、2001年7月8日に騎手を引退。
引退後も2012年3月までNAR地方競馬全国協会参与として後進の指導にあたる等、地方競馬の発展に大きな役割を果たし続けている。