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  • 第70回
  • 全日本2歳優駿 JpnⅠ

12.18 (水) 川崎 1,600m

切れ味発揮し地元馬が2歳ダート王に
 ケンタッキーダービーへ夢ふくらむ

勢力図が判然としないこの時期の2歳ダート路線だけに、例年地方勢の奮闘も目立つ一戦だが、今年も核となる馬が不在。兵庫ジュニアグランプリJpnⅡ・1、2着のテイエムサウスダン、メイショウテンスイが人気を分け合い、これに続いたのが北海道2歳優駿JpnⅢを制したキメラヴェリテと、JRAで連勝中のアイオライト。他のダートグレードと同様にJRA勢が上位人気に推されたが、一筋縄ではいかないような空気が漂っていた。

そんな状況下で、4戦無敗のインペリシャブル、平和賞を完勝したヴァケーションの二枚看板を送り出してきたのが、地元・川崎の高月賢一調教師。ともに高い素質を見せつけているが、インペリシャブルはスピードを前面に押し出す快速馬で、ヴァケーションはレース運びのうまさが持ち味。タイプの異なる2頭の布陣で、地元JpnⅠ制覇へ並々ならぬ意欲をもって臨んでいた。

最内枠に入ったアイオライトが逃げ、インペリシャブルが2番手に控える展開。やや離れた3、4番手をテイエムサウスダン、メイショウテンスイが追走し、ハイセイコー記念を制した船橋のゴールドビルダーもこの一角につけた。前半3ハロンは35秒6で、隊列は縦長。8番手を追走していたヴァケーションは、向正面の半ばを過ぎたあたりで動き、4コーナーで先頭を射程に入れた。

直線に向き、粘り込みを図るアイオライト。ゴールドビルダーがこれをとらえるべく懸命に脚を伸ばすが、もうひと伸びがない。そこへ急追したのがヴァケーションだった。4コーナーで内に切れ込み、直線でゴールドビルダーの外に持ち出すと、残り100メートルから抜群の切れを発揮。アイオライトをゴール寸前でとらえ、アタマ差で勝利した。

鞍上の吉原寛人騎手は、今年のマイルチャンピオンシップ南部杯JpnⅠ(サンライズノヴァ)に続くJpnⅠタイトル。前週のクイーン賞JpnⅢもクレイジーアクセルで制しているように絶好調だ。「どうかしていますね」と自身の好調ぶりに笑顔を見せ、「もまれてどうかと思っていたけど、気にすることなく走ってくれた。ドシッとしていて、『任せてくれ』と言っているような雰囲気がある」と、ヴァケーションのレースセンスの高さを褒めたたえた。

高月調教師はこれまでスパロービートやドラゴンエアルなどでタイトルを手にしてきたが、ダートグレードは初制覇。川崎勢の全日本2歳優駿JpnⅠ制覇は、中央との交流になる以前の1995年ホウシュウサルーン以来となる。高月調教師は「吉原騎手もうまく乗ってくれたし、控えていく競馬もはまった」と冷静にコメントしたが、伝統ある地元のJpnⅠを制した喜びは十分に推察できる。

2着のアイオライトはしぶとく粘ったが、ゴール寸前で力を使い果たした。「自分のペースで行けたが、勝ち馬にうまく乗られてしまった」と武藤雅騎手は唇をかんだが、初めてのマイル戦でこれだけ粘ることができたのは収穫だろう。最内枠と持ち前のスピードを生かし、同型ぞろいでも迷いなく逃げた鞍上の思い切りの良さも光った。

北海道から浦和への転入2戦目だったティーズダンクが3着。10番手を追走から息の長い末脚を発揮し、勝ち馬から0秒1差に迫った。門別のサンライズカップを勝利しているように、本質的には広いコースで、ゆったり運べる中距離以上がベストの印象。若干忙しいこの舞台、しかもJpnⅠでの結果だけに、今後が楽しみになる内容だった。

一方で、1番人気のメイショウテンスイは4着に敗れたが、10月20日のデビューから2カ月に満たないなかでのJpnⅠ参戦だけに仕方のない面もあるか。ただ、それでも大崩れしなかったのは地力の高さの証明。今後の成長次第で、巻き返しも十分にある。

2017年からケンタッキーダービーの出走馬選定ポイントシリーズの対象レースとなっているだけに、高月調教師も「ケンタッキーに行きたい、かな」と、海外遠征に含みを持たせた。もちろん今後の状態次第となるが、もし地元の川崎勢が出走にこぎ着けたとなれば、選定ポイントレースまで昇華させた主催者としても大きな意味を持つ。70回目の全日本2歳優駿JpnⅠは、日本の競馬史に名を残す可能性を十分に秘めている。


  • 3着には9番人気のティーズダンク(浦和)が入った
  • 取材・文
  • 大貫師男
  • 写真
  • 築田純(いちかんぽ)

Comment

吉原寛人 騎手

返し馬からすごく感触が良く、堂々としていました。レースでは無理に追走することにはこだわらず、馬のリズムを重視しました。前との距離もあったから2着かなと思いましたが、最後にひと伸びしてくれました。物怖じしないから乗っていて安心ですし、今回のような競馬ができるのも強みだと思います。

高月賢一 調教師

前走のあとも順調に調教が積めたので、いい結果が出てくれたと思います。前に行く中央馬が多かったので、抑えていこうという話をしていましたが、それがはまったと思うし、吉原騎手の好騎乗もあったと思います。今後はケンタッキーに行きたいかな、と思っていますが、状態を見て決めるつもりです。