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特集

スーパースプリントシリーズ 2018

SUPER SPRINT SERIES 2018

 今年で8年目を迎える、競走距離1000メートル以下のレースのみで構成されるシリーズ競走、『スーパースプリントシリーズ(略称:SSS)』。トライアル5戦、ファイナルの習志野きらっとスプリントという構図は変わりませんが、今年は金沢の日本海スプリントがトライアルの対象レースとなっております。
 SSSは、超短距離戦で能力を発揮する異才の発掘と、各地方競馬場で実施可能な最短距離を極力活かすためワンターン(コーナー通過が3〜4コーナーのみ)のスプリント戦によるシリーズとして2011年に創設されたもので、各地区の超スピードホースが、トライアル、そしてファイナルで極限の速さを競い、初夏の地方競馬を大いに盛り上げます。

 創設からラブミーチャンが三連覇ののち、8歳のナイキマドリードや3歳のルックスザットキルがファイナルを制しているこのシリーズ。昨年は4歳のスアデラがファイナルを制しました。今年は古豪が意地をみせるのか、それとも新星が誕生するのか。

 激戦必至の究極のスプリント戦をぜひお見逃しなく!


2018年ダービーシリーズの総括はこちらです

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6.21(木)
園田FCスプリント
日本海スプリント
7/1(日)金沢競馬場 900mジッテ
7.5(木)
グランシャリオ門別
スプリント

先行争いを制して押し切る 新設重賞は地元馬に凱歌

 金沢競馬場における古馬の重賞戦線は、2600メートルの北國王冠を筆頭に中長距離路線が充実。そのため、他地区からそういった指向をもつ馬が転入してくることが多い。そういう事情もあってか、今年からスタートした日本海スプリントには地元所属馬は4頭だけ。900メートルのレコードタイムは昭和50年(1975年)に記録された55秒0で、その後平成11年(1999年6月22日、シュウタイセイ)にタイレコードがあったものの、それは2歳戦。金沢競馬場では長らく古馬の900メートル戦は実施されておらず、今回のレースに向けて行われたトライアル戦はB級以下で、勝ち時計は55秒2だった。
 それが今回は重賞で、笠松から5頭、愛知から1頭の遠征馬がいるという条件では、地元の常連ファンが「どんな展開になるのかまったく予想ができないですよ」と話したのは当然のことだろう。となるとJRAのオープンから転入し、金沢競馬場では2戦とも圧勝していたナガラオリオンが断然人気になるのもまた、当然のことといえた。
 ただ、ナガラオリオンは前走が浦和のさきたま杯JpnⅡで、今回の馬体重はプラス11キロ。JRA時の脚質が追い込みだったことも含めて地元の専門紙記者が懸念していたとおり、スタートで1馬身ほど遅れてしまった。
 同じく出遅れたメイショウウララカ以外は横一線の飛び出しで、そのなかからハイジャ、グランパルファン、ジッテが先手を主張していったが、3コーナー手前で先頭に立ったのはジッテ。そのあたりで失速したグランパルファンに代わってハドウホウが先頭集団に加わって、4コーナー手前では前の3頭と後方グループがすこし離れる形になった。
 そうなると前にいる馬のほうが有利。直線を向いて残り200メートル付近からはジッテとハドウホウの一騎討ちになったが、ジッテがそのままの勢いで押し切った。ハドウホウは最後まで食い下がったが3/4馬身差で2着。ハイジャは直線半ばから伸びを欠いたが3馬身差で3着に粘った。
 「勝てたのは枠順がよかったおかげですよ」とは、第1回の優勝騎手になった藤田弘治騎手。「でも、ここで勝つことができてよかったです」と続けた。ジッテは前走の百万石賞が勝ち馬から9秒4差での最下位で、同厩舎のノブイチでは、石川ダービーで断然人気に応えられず3着に敗れていた。それだけに「本当にホッとしました」というのは心からの思いだろう。
 2着のハドウホウは単勝9番人気。笹野博司調教師が「気を抜くところがあるので短距離が合うと思っていました」と話し、藤原幹生騎手も「いつもより集中してくれました」とのこと。3着のハイジャは「休み明け2走目でも本調子にはまだまだ。だから返し馬で気合を入れたんですが」と、佐藤友則騎手は仕方ないという表情だった。
 単勝1.7倍の支持を受けたナガラオリオンは最後方から猛然と追い込んできたが、3着馬に半馬身差で4着。「外を回って直線だけというイチかバチかの競馬になってしまいましたが、やはり力はありますね」と、吉原寛人騎手は振り返った。
 さて、ジッテの勝ちタイムは、従来のコースレコードを0秒7も短縮する54秒3。来年以降はこの数字がひとつの目安になっていくことだろう。
取材・文:浅野靖典
写真:早川範雄(いちかんぽ)

コメント

藤田弘治騎手

スタート前はどれだけ競られることになるのかと心配していましたが、3コーナーの手前で外からの2頭がすこし失速したので、そこで脚を溜めることができました。前走は大敗してしまいましたが、本来はスピードで勝負できるタイプ。今回はその地力の高さで勝つことができました。

鈴木長次調教師

この距離が合っているわけではないですが、それでもスピードはありますね。スタートが速いのがこの馬の長所で、馬自身がレースを分かっているように感じます。ただ、ここまで使い詰めでしたから、夏になってどうなのかという点は心配。習志野きらっとスプリントについてはオーナーと相談します。