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特集

ダービーシリーズ 2018

DERBY SERIES 2018

 各地のダービー競走をシリーズ化したダービーシリーズが本年も昨年同様8競走で5月27日(日)の九州ダービー栄城賞から6月20日(水)北海優駿(ダービー)まで行われます。
 昨年は、ジャパンダートダービーを制したヒガシウィルウィン他、JRAの重賞でも活躍したスーパーマックス、西日本ダービーを制したフリビオンなど、多数の活躍馬を輩出しました。
 3歳ダートクラシック路線の頂点であるジャパンダートダービー(JpnⅠ)(7/11大井)に向けて、全国の3歳馬たちが鎬を削る「ダービーシリーズ2018」にご期待ください。


2018年ダービーシリーズの総括はこちらです

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5.29(火)
石川ダービー
第48回 東海ダービー
6.5(火) 名古屋競馬場 1,900mビップレイジング
6.6(水)
東京ダービー

並ぶ間もなく断然人気馬を差し切る 笠松所属馬が8年ぶりダービー制覇

 「やはりダービーは魔物が棲んでいる」。レース後、そんな言葉が聞こえてきた。ダービーは何が起こるか分からない、競馬に絶対はない、ということを改めて実感させられる東海ダービーだった。
 今年最大の注目は、デビューから10連勝のサムライドライブが無傷でダービー制覇なるかということ。この大舞台でも単勝1.0倍、支持率73.2%という評価を集めた。そんなサムライドライブとの対戦を前に他陣営からは「強すぎる」という声もあれば、「何とかひと泡吹かせたい」という意気込みも聞かれた。
 ゲートが開くと、好スタートをきったサムライドライブが予想通り先手を取った。しかし「そう楽には行かせない」とばかりに大外枠からキンショーウィークが2番手、ユーセイスラッガーも外の3番手で先頭をぴったりマークしていた。好位のインに3番人気のウォーターループ、その直後に2番人気のドリームスイーブルがつけ、クラリテディーオ、ビップレイジングなどが続いた。
 向正面に入ってもマークの手は緩まなかったが、4コーナーでついにサムライドライブが後続を引き離し3馬身ほどのリードで直線へ。2番手に上がったウォーターループも伸びていたが、サムライドライブも止まってはおらず逃げ切り態勢。しかしそこに大外から矢のように飛んできたのがビップレイジングだった。「いい気持ちでした」という藤原幹生騎手を背にあっという間に差し切り、スタンドからはどよめきも混じった歓声と拍手が沸き起こった。サムライドライブは1馬身半差の2着、さらに1馬身半差の3着にウォーターループが入った。
 レース直後、「とにかくびっくりしました」と驚きの表情を隠せなかったビップレイジングを管理する笹野博司調教師。「実況から名前が聞こえてきたので、まさかうちの馬が?!という感じでした」。勝因を尋ねると「イレ込みがきつい馬ですが今日はいつもより落ち着いていたことが良かったです」と。実はこの馬、笹野調教師自身が牧場で選びオーナーが購入したという経緯があるそうだ。「もともと気性のうるさいところがあって、それが良い方向に向けば走る馬なのではないかと思い選びました」(笹野調教師)。北海道でデビューし、昨年夏に笠松へ転入。JRAへの移籍を経験し再び笠松へ。そして一生に一度の大舞台で、まさに出会った時に感じた通りの結果となった。
 また笠松所属馬の東海ダービー優勝は2010年のエレーヌ以来。いまや東海のトップトレーナーの一人である笹野調教師だが、名古屋競馬での重賞制覇は初めてとのこと。「笠松の馬はなかなか勝てないので、そういう意味でも嬉しいです。ダービーを勝てたことですし、これからは全国的にファンに愛されるような馬を作っていきたいです」と今後の抱負も語った。
 一方、サムライドライブ陣営は茫然とした様子だった。角田輝也調教師は「徹底マークで全く息が入りませんでした。これが競馬……。強いだけではなかなか勝利の女神は振り向いてくれないのかなと思います」とダービーを勝つことの難しさを口にした。それでも下を向いてはいられない。「応援してくれた皆さまには本当に感謝しています。これからどうやってサムライドライブを強くしていくかが大切です。悔やんでいる暇があるなら、明日への道をしっかり歩んでいきたいです」。この敗戦の経験を経て、サムライドライブがこれからどんな競走馬へと成長していくのか、さらに注目していきたい。

サムライドライブは1馬身半差の2着
取材・文:秋田奈津子
写真:早川範雄(いちかんぽ)

コメント

藤原幹生騎手

サムライドライブは強いですが、以前遠征した時より落ち着いていたので一矢報いることができるのではと。前を見ながらレースを進め、3~4コーナーでは動けなかったので直線で外に出してどこまで末脚を伸ばせるかと考えていました。今日の落ち着きなら他場に行っても力を出してくれると思います。

笹野博司調教師

今まで並ぶこともできなかった馬に勝てるなんて。ただこれで負けたら仕方ないと思うくらいの調教をしました。神経質な部分があるので気を付けて育ててきましたが、心肺機能が高く距離も長い方が良いと思っていました。自厩舎の騎手で勝てたことも嬉しいです。ジャパンダートダービーを視野に調整します。