競走距離1,000メートル以下のレースのみで構成されるシリーズ競走、『スーパースプリントシリーズ(略称:SSS)』。7年目を迎える本年は、昨年同様5戦のトライアルおよびファイナルの習志野きらっとスプリントが行われます。
SSSは、超短距離戦で能力を発揮する異才の発掘と、各地方競馬場で実施可能な最短距離を極力活かすためワンターン(コーナー通過が3〜4コーナーのみ)のスプリント戦によるシリーズとして2011年に創設されたもので、各地区の超スピードホースが、トライアル、そしてファイナルで極限の速さを競い、初夏の地方競馬を大いに盛り上げます。
創設からラブミーチャンが三連覇ののち、8歳のナイキマドリードや3歳のルックスザットキルがファイナルを制しているこのシリーズ。昨年は4歳のフラットライナーズがファイナルを制しました。今年は古豪が意地をみせるのか、それとも新星が誕生するのか。
激戦必至の究極のスプリント戦をぜひお見逃しなく!
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好スタートから逃げ切り6馬身差
短距離路線に転向して素質開花
スーパースプリントシリーズ・ファイナルの習志野きらっとスプリント。トライアルラウンドからは、昨年のファイナルの覇者で川崎スパーキングスプリントを制したフラットライナーズ、グランシャリオ門別スプリント優勝のタイセイバンデット、名古屋でら馬スプリントのハイジャ、園田FCスプリントのマルトクスパートと4頭が参戦。中央からの移籍馬も目立ち、北海道スプリントカップJpnⅢ優勝馬シゲルカガや、かきつばた記念JpnⅢとクラスターカップJpnⅢで2着だったブルドッグボス(1番人気)など5頭が転入初戦となった。
そんな豪華メンバーが集結したなか、牝馬スアデラの、他馬を子ども扱いするかのようなスピードあふれる走りには、圧倒された人も多かっただろう。
スアデラは地元船橋の佐藤裕太厩舎からデビューした生え抜き。素質の高さに定評がありながら、2、3歳時は惜しくも重賞タイトルを手にすることができなかった。昨年秋には膝の骨片除去手術から約半年の休養があり、今年4歳になっての復帰以降は、短距離路線に転向。地元のトライアル・閃光スプリントと東京スポーツ賞(大井)を圧勝し、ここはメンバーがグッと上がったが楽しみな挑戦だった。
スアデラには、先日のジャパンダートダービーJpnⅠをヒガシウィルウィンで制したばかりの本田正重騎手が騎乗。1000メートル戦は新馬戦と2戦目を連勝して以来だったが、好スタートを切ると楽な手応えで先頭に立った。2番手には北海道のタイセイバンデットがピタリとつけていたが、特に気にすることもなくマイペースで進めていったという。
4コーナーを回る時には後続勢の手が激しく動いていたが、スアデラの本田騎手の手はまったく動かず、後ろを振り返って後続との差を確認する余裕もあったほど。残り200メートル付近でステッキが入ると、その差をさらに広げていき、2着のタイセイバンデットに6馬身差をつけての勝利。勝ちタイムは59秒0(良)で、念願の重賞初制覇となった。
そして管理する佐藤調教師は、騎手時代には故・川島正行調教師の右腕として、アジュディミツオーやフリオーソなど数々の名馬たちの調教パートナーとして携わってきたことはあまりにも有名だ。縁の下の力持ちとして地道に黙々と厩舎を支え続けてきた苦労人。騎手から調教師となりホースマン生活通算25年目での、悲願の重賞初制覇となった。
「重賞を勝つことは騎手デビューしてからの夢だったので胸がいっぱいです。悔しさもありましたが、その我慢が肥やしになっていると思います。調教師になってみて川島先生の気持ちもわかるようになったし、川島先生に『ありがとうございます』という意味も込めて、勝ったことを報告したいです。南関東生え抜きで勝つことができたこともうれしいですし、これから短距離界のスターホースとして育てていきたいです」(佐藤調教師)。
短距離路線に突如として出現したニューヒロイン、スアデラ。佐藤調教師の手腕で、今後どんな競走生活を送っていくことになるのだろうか。夢が広がる一戦になった。
本田正重騎手
自分の中では2、3番手と考えていましたが、あまりにも速かったので、後続がくるのを待つくらいなら逃げようと切り替えました。道中もずっと手応えがよくて、追ったのは最後のひとハロンだけです。スタートも出遅れたことがないし、スピードもあって乗りやすい。頭もいいですし、欠点のない馬です。
佐藤裕太調教師
最後はスアデラが抜け出ていましたが、それでもゴール板を過ぎるまで、「正重っ!」と叫んでいました。夢だった重賞を勝つことができて、スアデラをはじめ、これまで関わってきた全ての皆さんに感謝しています。この馬は西村栄喜騎手が調教に乗ってくれていて、西村君にも何かの形でお礼をしたいです。