スーパースプリントシリーズ特集

 競走距離1,000メートル以下のレースのみで構成されるシリーズ競走、『スーパースプリントシリーズ(略称:SSS)』。7年目を迎える本年は、昨年同様5戦のトライアルおよびファイナルの習志野きらっとスプリントが行われます。
 SSSは、超短距離戦で能力を発揮する異才の発掘と、各地方競馬場で実施可能な最短距離を極力活かすためワンターン(コーナー通過が3〜4コーナーのみ)のスプリント戦によるシリーズとして2011年に創設されたもので、各地区の超スピードホースが、トライアル、そしてファイナルで極限の速さを競い、初夏の地方競馬を大いに盛り上げます。

 創設からラブミーチャンが三連覇ののち、8歳のナイキマドリードや3歳のルックスザットキルがファイナルを制しているこのシリーズ。昨年は4歳のフラットライナーズがファイナルを制しました。今年は古豪が意地をみせるのか、それとも新星が誕生するのか。

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ゴール前鋭く伸びて差し切る
一昨年2着の経験を生かす勝利

 スーパースプリントシリーズ(SSS)のトライアルラウンドは、そのほとんどが梅雨の時期と重なっているため、例年雨や道悪の印象が強い。しかし今年の園田FCスプリントは梅雨の合間で時折晴れ間も覗き、馬場は稍重というまずまずのコンディションで行われた。
 820メートル、わずか50秒足らずという争いでも出入りの激しい競馬となった。
 フライング気味に好ダッシュを決めたのは、2番人気に支持された高知のカイロスだったが、すぐにマイアリエスがハナを奪った。これに競りかけていったのは、昨年2着だった高知のカッサイ。カイロスは3番手となり、地元期待の断然人気マルトクスパートは互角のスタートから3コーナー手前で4番手に押し上げた。
 3コーナー過ぎからは前2頭が3番手以下を離しての追い比べとなり、4コーナーを回るところで先頭に立ったカッサイがそのまま押し切るかに思えた。
 しかし最後の100メートル、いや50メートルくらいだろうか。マルトクスパートが猛然と追い込んでカッサイに並びかけたところがゴール。見た目にはかなり微妙だったが、鞍上の田中学騎手は勝利を確信。ゴールを過ぎて左手で小さくガッツポーズを見せた。
 マルトクスパートは重賞初挑戦だった一昨年、高知のサクラシャイニーに半馬身差で2着に敗れていたが、7歳になって雪辱ともいえる勝利。一方のカッサイはわずかハナ差で、2年連続の2着。1馬身半離れた3着には逃げたマイアリエスが入り、カイロスはゴール前で盛り返したものの4着だった。
 勝ったマルトクスパートの田中範雄調教師は、一昨年悔しい思いをした経験から、今回はここを目標にレースを慎重に選択した。一昨年は4連勝でここに臨んだが、4連勝目となった前走、5月末の1230メートル戦は58キロを背負っての出走で、レース後にダメージが残っていたという。今年も3連勝のあと、直前にもう一戦すれば58キロでの出走となるところ、1カ月半の間隔をあけての本番。その修正が、今回の勝利につながった。
 マルトクスパートのこのあとについて田中調教師は、笠松のサマーカップ(7月13日)か、SSSファイナルの習志野きらっとスプリント(7月25日・船橋)いずれかという選択で、レース後の状態に問題がなければ笠松になるだろうとのことだった。
 そして昨年は7連勝でここに臨み1番人気に支持されるも3/4馬身差で2着だったカッサイだが、今年は近走の成績が冴えず7番人気という低評価。それでもゴール寸前までは勝ったかと思わせる走りを見せ、結果、ハナ差で涙をのむことになったが、あらためてこの超短距離戦への適性を示した。それだけに永森大智騎手は、「いいペースで行けたんですけど、最後は脚が上がりかけて、ぼくが勝たせきれませんでした」と悔しそうな表情を見せた。
 近畿・四国・九州地区交流として7回目となったこのレース。地元兵庫勢が4勝目となり、高知2勝、佐賀1勝。1年に1度しか行われない古馬による超短距離レースは、地区ごとの争いも激しいものとなっている。
田中学騎手
ゲートはそれなりに出たと思ったのですが、二の脚が他の馬のほうが速かったので、道中の位置取りではイメージ通りには乗れていませんでした。最後に伸びてくれたのは、正直びっくりしました。完全に交わしたと思ったので、嬉しくてガッツポーズが出ました。
田中範雄調教師
悪くても3番手あたりと思っていたのがスタート後は5番手でしたから、直線を向いたあたりでは、終わったかなと思いました。それでも直線ではよく伸びて、ゴールに入ったときは勝ったかなと思ってほっとしました。さすがに7歳で馬の力は落ちてきていますから、その分レースは選んで使っています。


取材・文:斎藤修
写真:桂伸也(いちかんぽ)